『スクラップ・アンド・ビルド』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…。閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!第153回芥川賞受賞作。
「BOOK」データベースより
文庫化を機に初めて手にした羽田さんの作品です。
テレビでお見かけした時に、歯に衣着せぬ言い方をする人だなと思っていたので、ずっと興味がありました。
そして読んでみると、羽田さんという人間がこの作品の中には詰まっていて、色々な意味で初めて目にするタイプの作品でした。
最初は先入観があったせいか内容が頭に入ってこず、大したことないなと思っていたのですが、気が付けばページをめくる手が止まらず、最後にようやくタイトルの意味を知ることができました。
以下は本書に関する羽田さんへのインタビューです。
芥川賞作家・羽田圭介さんが語る、ありのままの日常(前編)『スクラップ・アンド・ビルド』 (羽田圭介 著)|本の話
この記事では、そんな本作の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
スクラップな健斗
田中健斗は五年間勤めたカーディーラーを辞め、無職になって七か月。
今は単発のアルバイトでお金を稼ぎながら行政書士の勉強をし、たまに就職活動を行っています。
健斗は母親と、親戚をたらい回しにされてきた母方の祖父との三人暮らし。
祖父は常に卑屈で死ぬことを祈っていますが、ニヒリストである母親と健斗は醒めた目でその様子を見ています。
しかし、ある時思い至ります。
今まで聞き流していた祖父の言葉こそ、祖父の魂の叫びなのではと。
一度考えだすと、これまでの祖父への接し方が自己中心的に思えてきて、死にたいという言葉を言葉通りに真摯に受け止めるべきではと考えるようになります。
そこで健斗の目指したのもの。
それは、苦痛や恐怖心さえない穏やかな死。
究極の自発的な尊厳死でした。
祖父に尊厳死を
行政書士とは全く関係ない中小企業の面接を受けては、付き合っている四歳年下の亜美とデートをしてはセックスをする。
そんな日々の中で、健斗は友人で介護福祉業界で働く大輔にアドバイスを求めます。
すると、大輔が提案したのは『被介護者の動きを奪って、弱らせる』というものでした。
具体的には、身の回りのことは何でもやってあげて、生きる気力を失われるというもの。
中途半端にやれば介護する家族が余計に面倒になるが、それでもやるのかと大輔に忠告され、それでも健斗は決意します。
祖父に尊厳死を与えるために。
それからというもの、健斗は祖父が社会復帰するための訓練機会をしらみつぶしに奪い、体の機能が衰えていくのを待ちます。
その一方で、衰えていく祖父を見て自分がまだ若く、恵まれた体を持っていることに気が付き、筋トレやランニングを日課にし、己を高めていきます。
その甲斐あってか、亜美とのセックスでは時間をあまり置かずに二回目に挑戦することができ、彼女から褒められます。
さらに生活にメリハリがつき、資格の勉強も捗る。
仕事を辞めてからの無気力な日々が嘘のように生きる喜びを謳歌していきます。
ただ、祖父は体調が良いとあまり死にたいと口にせず、笑みさえ浮かべることに、健斗は自分がしていることへの罪悪感を覚えます。
しかし、ここで中途半端にやめるわけにはいかず、弱音を吐く祖父を思い出して健斗は足し算の介護を続けます。
そんなある日、予定が変更になって早く帰宅した健斗が見たもの。
それは俊敏に動き、いつもなら自分で出来ないと弱音を吐く動作を軽々とやってのける祖父の姿でした。
思い違い
死にたいと口にする一方で、生きる欲求を満たすために家族の目を盗んで好きなことをする祖父。
健斗には、もうどれが本当の祖父なのか分かりません。
祖父はこれまでに何度か倒れた病院に運ばれたこともあり、ある日、帰宅した健斗は祖父の様子がおかしいことに気が付き、病院に連れていきます。
診断の結果、急性心不全による急性肺水腫でした。
あのまま放置していれば祖父は死んだかもしれませんが、苦しんで死ぬことは祖父も健斗も望んでいません。
苦しむ祖父を見て、これ以上生きて苦しまないよう、尊厳死を与えようと改めて誓うのでした。
しかし、弱っていく祖父を目の当たりにして、苛立ちを感じ始める健斗。
そして、決定的な出来事が起きます。
自宅で祖父が風呂に入るのを手伝っていた健斗ですが、溺れるとしがみつく祖父を振り払ってトイレに行きます。
用を足して戻ってくると、祖父は本当に溺れていて、健斗は慌てて祖父を助け出します。
わざと殺そうと思われなかっただろうかと罪悪感に押しつぶされそうになる健斗ですが、祖父が発した言葉は『ありがとう』でした。
ここで健斗は、自分はとんでもない思い違いをしていて、祖父は本当は生きたいのではということに思い至るのでした。
結末~ビルドした新しい自分~
祖父と向き合い、筋トレをして生まれ変わった健斗は、医療機器メーカーに就職が決まり、自宅を離れて茨城に引っ越すことになりました。
てっきり祖父がすがりついてくると思っていましたが、その口から出てきたのは『気にせず頑張れ』でした。
茨城に向かう電車の車内で、健斗は自分より弱い祖父がいなくなって、急に自分が弱い存在だということを思い出します。
家に残した母親が祖父の面倒を見れるのかも心配です。
しかし、それでも健斗には筋トレして祖父と向き合ったことで培った闘う力があります。
どんなに辛い状況でも闘い続けるしかないのだと、心を強く持つのでした。
おわりに
一人の若者が祖父という死を目前にした人間を見て、己を文字通り『スクラップ・アンド・ビルド』していく姿がとても人間らしく、その内面の描き方には感服してしまいました。
またこれからの介護に関する問題も示唆され、この短い物語から色々なことが考えられそうです。
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