『暗幕のゲルニカ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑶子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑶子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒涛のアートサスペンス!
「BOOK」データベースより
『異邦人(いりびと)』に続いて二作目の原田マハ作品になります。
前作でこの作者は自分に合うなと思っていましたが、本書でそれは確信に変わりました。
本書はパブロ・ピカソの描いた『ゲルニカ』を軸に話が進んでいきます。
過去と現在のパートに分かれ、ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが見てきたピカソという芸術家とゲルニカの在り方を示す過去パート、そしてゲルニカを巡った陰謀に巻き込まれた八神瑤子(ようこ)が真実にたどり着く現在パートから構成されています。
物語は当然フィクションですが、過去パートは数人を除いて実在の人物を描いていて、まるで当時の光景を直接目の当たりにしているような熱量を感じました。
それは喜びであり、悲しみであり、怒りであり。
原田さんの作品には本当に心を動かされます。
暫定ですが、今年読んだ本の中でダントツでお気に入りです。年内中にもう一度ゆっくり読みたいと思っています。
以下は刊行記念インタビューです。
原田マハ・インタビュー 「暗幕のゲルニカ事件」が伝えたもの『暗幕のゲルニカ』刊行記念
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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はじめに
本書では過去と現在を行き来する構成になっていますが、分かりやすくするためにこの記事では過去、現在それぞれまとめてご説明します。
あらすじ
過去パート
パリ万博
一九三七年のパリ。
写真家のドラ・マールは『創造主』とも呼ぶべき天才、パブロ・ピカソに出会い、彼に魅了され、妻のオルガ・コクローヴァ、愛人のマリー=テレーズを差しおいてピカソからの愛情を受けていました。
それは彼の描く肖像画にも表れ、ドラと付き合ってからはマリー=テレーズの姿が消え、代わりにドラが描かれるようになっています。
彼女は創造主の手によって自分が芸術に変えられることに喜びを覚えていました。
そんなある日、ピカソの元にとある依頼が舞い込みます。
それは、五月に開催されるパリ万博のスペイン館のパビリオンに飾る絵を書いてほしいというものでした。
しかし、ただの絵ではありません。
縦七メートル五十、横八メートルの壁画とも言うべき巨大な絵。
彼らはスペイン出身のピカソに成功をかけていました。
それに対して、ピカソは内戦に苦しむ母国を支援したい気持ちはあると、明言はしませんが依頼を受けます。
こうして、未だかつてない大作に挑戦するのでした。
ゲルニカの誕生
ところがピカソは、母国を支援するためにどんな絵を描けばよいのか迷い、真っ白なカンヴァスと向き合う日々が続きました。
そんな時、事件が起きます。
スペイン、バスク地方最古の町、文化と伝統の中心であるゲルニカが反乱軍によって空襲されたのです。
町は廃墟となり、多くの死体が新聞の紙面に掲載され、全世界が人類史上類を見ない暴挙に怒りと悲しみを覚えました。
古くからバスク地方は強い自治権を主張してきた歴史があり、彼らは自分たちをスペイン人ではなくバスク人だと主張して、それが今回の空襲の対象に選ばれた理由かもしれません。
ピカソはその光景を目の当たりにし、すさまじい負の感情が爆発し、ただならぬ雰囲気で絵を描き上げます。
そしてピカソは、カメラを構えるドラに対してカンヴァスにかかった暗幕を引きはがします。
そこに描かれていた絵こそが、ゲルニカでした。
画面を支配する阿鼻叫喚する人間や動物たち。
ドラは撮影しながらこの絵のタイトルは『ゲルニカ』以外にありえないと感じ、ピカソもそれを受け入れました。
こうして現代にも語り継がれる名作『ゲルニカ』は誕生しました。
パルド・イグナシオ
ゲルニカの完成を控え、ドラがカフェで作業をしていると、とある青年の存在に気が付きます。
身なりからしてとても裕福で、何か思いつめたような表情。
ドラが声を掛けると、青年はパルド・イグナシオと名乗り、スペインから亡命してフランスに逃げてきたのだといいます。
彼はスペイン屈指の名門、イグナシオ侯爵家の長男であり、許嫁とは別の女性と恋仲になり、そして祖国に置いてきてしまいました。
ドラはなぜか彼を気に入り、彼をピカソに会わせ、ゲルニカを見る最初の人物として選びました。
そして、ピカソは紙で作られた牝牛の赤い涙のコラージュを剥がすと、パルドに渡すのでした。
ゲルニカの亡命
すでに始まっていたパリ万博ですが、そこでようやくゲルニカが公開されます。
しかし、ドラの予想に反して、ゲルニカの評判はあまり良くありませんでした。
それはレセプションに日、ピカソがドイツの駐在武官にゲルニカの作者はおまえかと聞かれ、この絵の作者はあんたたち、つまり戦争を起こしたあんたたちだと言ってのけたことが原因でした。
彼らはそれを根に持ち、各方面に働きかけて報道させず、また誹謗中傷を流したのです。
もちろん、それでも人々の心にゲルニカは響いているはずですが、ドラは納得いきませんでした。
そしてパリ万博終了後、ゲルニカをどこに保管するかで頭を悩ませます。
これほどまでに巨大な作品を保管できる場所はスペインにないし、フランス国内に倉庫を借りて保管するだけの金銭的余裕もありません。
そこでパルドは、ゲルニカをスペイン、フランス以外の国々に巡回させるために手を尽くします。
イグナシオ家の力、そして何よりパルドの情熱によってそれは成功し、ヨーロッパ各国、そしてアメリカに巡回することが決まりました。
ピカソはゲルニカを誰の手も及ばないところに逃がしたいと願い、パルドもそれに応えます。
こうしてゲルニカは、ナチスから逃げるために亡命するしかありませんでした。
そしてMoMA(ニューヨーク近代美術館)館長のアルフレッド・バーJr.がピカソの元を訪れたことでゲルニカの運命が決まります。
彼はMoMA創設十周年、ピカソの画業が四十周年になるのを記念し、アメリカ初となるピカソの大回顧展を企画していました。
それに対してピカソはゲルニカを受け入れ、スペインが真の民主主義を取り戻すまで決してスペインに還さないでほしいと頼み、アルフレッドもそれを了承するのでした。
パリへの帰還
ピカソの願いも虚しく、世界を巻き込んだ戦争が足音もなく忍び寄り、パリに留まるのはどう考えても危険でした。
そこでピカソはドラを連れてロワイヤンに避難します。
穏やかな時間を過ごす一方で、パリに戻りたいという気持ちを見せるピカソを、複雑な気持ちでドラは受け止めます。
しかし、悪いことばかりではなく、パルドがアメリカで行われたピカソの大回顧展は大成功だったと報告してくれます。
それでもピカソのパリへの思いは消えず、ついに彼はドラを連れてパリに帰還します。
しかし、パリはナチスの手に落ち、芸術も含めて様々な制限が課せられていました。
さらにパリがドイツ軍対連合軍の決戦の場になり、戦禍に巻き込まれる可能性が大きくなりますが、ピカソは頑としてパリを離れようとせず、ドラもそれに付き合います。
そして連合軍はほぼ無血でパリに入城し、ドイツ軍は正式に降伏、こうしてパリは解放されたのでした。
喜ぶべきことですが、一方でドラはもはやピカソの愛情は自分に向いていないことに気が付いていて、彼との関係をどうするのか考えていました。
別れと再生
結局、ドラは自ら別れを切り出しました。
これから先、あれほど愛する男などもう二度と現れないと分かった上で、芸術家としての自分を取り戻すことを選びました。
その後、パルドからゲルニカに対するピカソの言葉を聞かされます。
あの絵は少なくとも自分のものではないと。
これはパルドの推測ですが、ゲルニカはみんなのものなのではないかといいます。
だから守られ、伝えられ続ける限り、あの絵の輝きは失われず、いつまでも戦争の悲惨さ、愚かさを伝え続けるのです。
またドラがピカソと別れる際、どれでも好きな絵を一枚持っていっていいと言われ、ドラは鳩の絵を選びます。
これから飛び立とうとする鳩の絵を。
そして最後に、ドラはパルドに妊娠していることを打ち明けます。
相手はおそらくピカソですが、認知を求めるつもりはありません。
ただ生まれた子供をスペインに連れていき、子供のいない夫婦に育ててもらいたい。
この鳩の絵も一緒に。
それがドラの願いでした。
パルドはその願いを受け入れ、ドラは再生したパリの街で生きていこうと心に決めるのでした。
現代パート
同時多発テロ事件
幼少期、八神瑤子は家族でニューヨークに移り住み、そこでゲルニカに出会った瞬間、 その強い磁力に引き付けられ、忘れられませんでした。
その思いは大人になっても色あせず、瑤子は再びニューヨークに戻り、MoMAのキュレーターに転職を果たします。
また留学先のマドリッドで出会ったイーサン・ベネットと結婚し、彼からは婚約指輪代わりにピカソの描いた鳩の絵を送られ、夫婦の寝室に飾っています。
瑤子はイーサンの理解もあり、アートへの愛情をますます深めていました。
しかし、そんなある日、瑤子に悲劇が襲い掛かります。
通勤途中、突然の爆発音が鳴り響き、辺りが騒然とします。
それはワールドトレードセンターに航空機が突っ込む、同時多発テロ事件でした。
ピカソの戦争
同時多発テロ事件から二年後。
テロで最愛の夫・イーサンを亡くした瑤子ですが、アメリカはイラクへの軍事行動は避けることができないと、戦争を正当化しようとしていました。
イーサンを亡くした直後は悲しみに暮れていた瑤子ですが、イーサンの親友で新聞記者のカイル・アダムスの支えもあり、自分に今できることを考えます。
そして、瑤子が考え付いたのが『ピカソの戦争』というテーマの企画でした。
今こそ戦争の悲惨さ、残酷さを全世界に発信していかなければならない。
そして、アートにはそれが出来る。
瑤子はこの企画の目玉として『ゲルニカ』をなんとかニューヨークに引っ張りだそうと交渉しましたが、所蔵元のスペインにあるレイナ・ソフィア芸術センターからはよい返事は得られませんでした。
しかし、カイルはマドリッドがだめなら、国連のを借りてきたらいいと提案します。
それは、国連のロビーに飾られたオリジナルのゲルニカと寸分違わぬ構図とサイズのタペストリーのことでした。
オリジナルでなくとも十分すぎる価値があり、代用が効くはずです。
ところが、ニュースで報道された国連のロビーでの会見を見て、瑤子は驚愕します。
ゲルニカに暗幕が下がっていたのです。
暗幕をかぶせたのは誰か
翌日、敏感なメディアはこぞってこのことを報道します。
アメリカの武力行使はゲルニカの再現ではないと言いたかったのか、だとすれば誰が暗幕を下げるよう指示したのか?
カイルは自分の記事を通じて、ゲルニカの悲劇を繰り返すことになる、それを隠してしまいたいと公言しているのではと批判的な見方をしました。
一方、アメリカにおいて一番のピカソ研究家といえば瑤子であり、今現在、ピカソに関する企画を進めているため、報道陣に囲まれるのも時間の問題でした。
なんとかMoMAの仮オフィスに出社した瑤子ですが、予想以上に事態は複雑になっていました。
あの状況において、暗幕を下ろすよう指示できるのはホワイトハウス以外にあり得ませんが、一部では瑤子が指示を出したのではないかという憶測も流れています。
瑤子は誰かのスケープゴートに選ばれたのです。
さらにゲルニカのタペストリーの所有者はロックフェラー家であり、 その許可なしに暗幕を下ろすことなど出来ません。
つまり、一部ではロックフェラー家の誰かが許可を出したのだと、瑤子と同じようにスケープゴートに仕立てあげようとしていました。
それがMoMA理事長であるルース・ロックフェラーです。
ルースは到着するなり怒りを露にし、それから瑤子の身を案じます。
一部の人間の中では瑤子は同時多発テロ事件で夫を亡くしている、だから戦争を支持する理由があり、暗幕を下ろすよう指示したのだと。
このままでは『ピカソの戦争』どころではありません。
この企画に人生を懸けている瑤子は戦慄しますが、ルースはそんな彼女を鼓舞します。
マドリッドに行き、本物のゲルニカをニューヨークに連れ帰るのだと。
交渉と狙われるゲルニカ
カイルと共に国連本部内の広報センターで今回の件の事情を聞く瑤子ですが、彼らはゲルニカに描かれた馬の肛門と性器が不適切だから隠したのだと見え透いた嘘を平気でつき、埒が明きません。
やはりルースの言う通り、本物のゲルニカにもう一度挑戦するほかありません。
瑤子はマドリッドに到着すると、宿泊先であるホテル・リッツに向かいますが、そこで思わぬ相手からのメッセージを受け取ります。
相手はスペイン屈指の名門、イグナシオ家の当主であるパルド・イグナシオ。
内容は、ゲルニカを所有するレイナ・ソフィア芸術センターの館長、アダ・コメリャスとの面談のまえに必ず立ち寄ってほしいというもの。
突然のことに事情が呑み込めず、アダに連絡するも繋がらず、瑤子は拉致のような形でパルドの元に連れていかれます。
すると、通された応接室にはアダがいて、彼女もまたパルドに呼ばれていました。
瑤子はますます意味が分かりませんが、そこにパルドが登場します。
パルドはすでにルースからゲルニカについて話しを聞いていて、瑤子はルースがアダからゲルニカを貸してもらえるようパルドに協力を依頼したのだと思いました。
しかし、パルドの口から出てきたのは『NO』でした。
ただし、パルドも瑤子の事情は十分理解しています。
それでも許可できない理由、それはゲルニカがテロリストによって狙われているからでした。
レイナ・ソフィアでは『保存の観点から輸送不可能』という論理でゲルニカを守っていますが、ここでニューヨークに移送してはこの論理が破綻し、付け入る隙を与えることになってしまいます。
またゲルニカをバスクへ奪還しようと画策している一部のバスク人がいるという話も聞いていました。
熱意だけではどうにもならず、ニューヨークに戻った瑤子はその足でルースに会いに行き、これまでにあったことを説明しますが、そんなことは不要でした。
ルースにはこの結果が分かっていたのです。
かつてゲルニカを戦禍から逃がすためにMoMAに持ち込んだのがパルドであり、『私たちの戦争』の象徴であることを誰よりも理解しているのが彼です。
だから『NO』としか答えられなかったのです。
結局、記者会見の日を迎え、瑤子はゲルニカを引き出せなかったことを公表するつもりでした。
ところが、会見中にルースから伝言が入り、そこには記者会見を放棄して一緒にパルドに会いに行きましょうと無茶苦茶なことが書いてありました。
パルドを動かすためにルースが動いたのであれば、そこに懸けるしかありません。
瑤子は記者会見を放棄し、ルースと共に再度パルドの元を訪れます。
パルドとルースは旧知の仲であり、ルースはニューヨークにゲルニカを展示する権利があると主張します。
大切なのは暗幕などでは決して隠せないピカソの真実の叫びを、四十年以上ゲルニカを守り続けてきたMoMAから世界に放つことなのだと。
これにはパルドも折れ、ついにゲルニカの移送が決定します。
ところが、緊急事態が発生したとレイナ・ソフィアの職員から瑤子に連絡が入り、瑤子は慌てて迎えの車に飛び乗ります。
ところが、これは罠でした。
何が起きたのか必死に考える瑤子でしたが、次第に意識が薄れていくのでした。
拉致
目を覚ますと、瑤子は見知らぬ場所で後ろ手に縛られていました。
彼女を拉致したのはテロ組織ーバスク祖国と自由(ETA)でした。
瑤子は人質であり、彼女の命と引き換えにゲルニカを要求しているのでした。
瑤子は死を覚悟した上で、この計画が失敗することをETAのリーダー、ウルに訴えますが、彼は説得に応じようとしません。
そんな時、瑤子を支えてくれたのはウルの妻であるマイテでした。
彼女は瑤子を人質以上に丁寧に扱ってくれ、瑤子はそんなマイテに改めてゲルニカが誰のものでもない、私たちのものであることを痛切に訴えます。
マイテも瑤子の気持ちを理解し、ピカソ研究家であることを見込んである絵の写った写真を見せ、それがピカソの作品なのかどうかと聞いてきます。
そこには、一羽の白い鳩が描かれていました。
白い鳩
マイテの見せた写真に写る鳩はイーサンのくれた絵と酷似しています。
かつてはマイテの母が所有し、今はマイテが誰にも分からない場所で保管しているのだといいます。
瑤子はマイテの質問に答える代わりに、この作品について話を聞きます。
マイテの故郷はゲルニカでした。
彼女は父親、続いて母親を亡くし、その際に譲り受けたのがその鳩の絵でした。
そこにははっきりとピカソのサインが書かれていましたが、マイテは母親の言う通り、その作品を守り続けたのでした。
年代を考えると、マイテの母親こそがドラの娘であり、パルドが鳩の絵と一緒に子供のいない夫婦に託したのだと思われます。
その後、マイテはウルと出会い、結婚。
彼女はゲルニカ奪還には反対でしたが、ウルはそれを聞き入れず、今日に至っています。
ウルたちは、ゲルニカをこの世界から消し去ろうと考えていました。
瑤子はマイテの話を聞き終え、彼女の持つ鳩の絵はおそらく本物だと自分の見解を明かします。
そして、この写真を撮影したのが、ドラ・マールだとも。
写真の下には床が写っていて、その場所はゲルニカが描かれたピカソのアトリエである可能性が高いのだといいます。
マイテはその言葉に泣いて喜び、瑤子は彼女のピカソの作品を、そしてゲルニカを守りたいという気持ちを感じます。
しかし、その時、ウルが入ってきて、スペイン政府と話がついたが、知り過ぎた瑤子を帰すことはできないと言います。
瑤子はというと、アート、そしてピカソへの思いを語り、ゲルニカが私たちのものであることを訴えます。
するとその時、爆発音が響き渡ります。
特殊部隊が瑤子救出のために突入してきたのです。
マイテはこの隙をついて瑤子を逃がそうと外に出ます。
しかし、人質にとられていると勘違いした特殊部隊はマイテに向かって発砲。
瑤子は叫びますが、特殊部隊によってマイテと引き離されるのでした。
結末~ゲルニカはどこに~
様々な困難を乗り越え、ついに明日『ピカソの戦争』が開催されようとしていました。
全米が注目する中、瑤子は記者会見を控えていました。
そんな時、パルドが訪れ、彼女に二つのものを渡します。
一つは、マイテの持っていた鳩の絵。
そしてもう一つは、かつてピカソからもらった赤い涙でした。
記者会見が始まり、瑤子は各方面への謝礼の言葉を述べ、ゲルニカについても言及します。
しかし、ゲルニカがここにあるのか、やはり来ていないのか、会場は瑤子の真意が読めずに混乱していました。
すると、会場にいたカイルがゲルニカの所在について質問します。
それに対し瑤子は、国連でゲルニカに暗幕が下ろされていたことを話し始めます。
あの日。
暗幕が下がり、そこになくてはならなかったゲルニカが隠されていた。
だから取り戻したのだ。
そこになくてはならないから。
そう言うと、会場のスクリーンに国連のロビーが写されます。
瑤子の言葉に応じて画面の中の暗幕が下ろされ、そこにはタペストリーでない、本物のゲルニカが飾られていました。
おわりに
ゲルニカは私たちのものだ。
繰り返し言われてきたその言葉の答えがラストにあり、強く心を揺さぶられました。
心の底から読んでほしい作品です。
絶対に後悔させませんので、まだ未読の方はぜひ手にとってください。
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