『ぼくらの七日間戦争』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
明日から夏休みという暑いある日のこと。東京下町にある中学校の1年2組の男子生徒が全員、姿を消した。彼らは河川敷にある工場跡に立てこもり、そこを解放区として、体面ばかりを気にする教師や親、大人たちへの“叛乱”を起こした!女子生徒たちとの奇想天外な大作戦に、本物の誘拐事件がからまって、大人たちは大混乱に陥るが―。何世代にもわたって読み継がれてきた、不朽のエンターテインメントシリーズ最高傑作。
「BOOK」データベースより
三十年以上前に出版されたにもかかわらず根強い人気を誇るシリーズの第一作目。
2019年12月にアニメ映画化されました。
中学生という思春期真っ只中で、大人に何でも反抗したくなる年頃の少年、少女たちが大人に対して反旗を翻すその様は読んでいてもう痛快です。
今の僕では、彼らのような瑞々しい感性は残念ながらもうありませんが、同じ時間を過ごせたらさぞ楽しかっただろうと、思わずにはいられませんでした。
しかし一方で、彼らは彼らなりに真面目に考えていて、それを子どもだからという理由で押さえつける大人はやはり間違っていると、大人になった今でも感じます。
年齢関係なく、一人一人と対等に向き合うことが必要なのだと、自分に言い聞かすことの出来た作品でもあります。
以下は本書に関する宗田さんへのインタビューです。
悪い大人をやっつけたい 宗田理「ぼくらの七日間戦争」|好書好日
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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登場人物の紹介
本書にはたくさんの人物が登場します。
特に『解放区』と呼ばれる子どもたちだけの居場所に集まったのは、事情によってやむを得ず入らなかった人を除くクラスの男子全員です。
それぞれ強烈なキャラクターを持っていますが、それでもつい誰が誰だと混乱してしまうので、ここで一度主要な人物をご紹介したいと思います。
本書を読む際の参加にしてもらえればと思います。
菊池英治
徹と同じサッカークラブに所属し、解放区を作らないかと持ち掛けられる。純子と付き合っている。
相原徹
両親が学生運動を経験していて、解放区を作ると言い出した張本人。
天野司郎
アナウンサー志望で、特にプロレスの実況中継がうまい。
柿沼直樹
産婦人科医院の息子。
安永宏
長身で、ケンカが強い。
宇野秀明
小さくて臆病で、『シマリス』と呼ばれている。
日比野朗
体格が良く、料理が得意で、将来の夢はコック。
立石剛
花火師の息子。
中尾和人
英治と同じ。サッカー部。運動神経は悪いが頭がずば抜けて良く、塾に通っていないにもかかわらず成績は常にトップ。
谷本聡
酒井にしごかれ、腰椎を痛めている。エレクトロニクスの天才。解放区放送を実現させた張本人。あだ名は『エレキング』。
佐竹哲郎
ケンカの達人。
佐竹俊朗
哲郎の弟で、小学五年生。アメリカン・ピット・ブル・テリアのタローに唯一言うことをきかせることができる。
秋元尚也
視力が二・〇。
吉村賢一
女みたいに声が甲高い。
小黒健二
勉強ばかりして、内心みんなのことを見下していたが、解放区に誘われたことで勉強以外の大切なことを知った。
橋口純子
家は来々軒という中華料理屋を経営していて、七人目の兄弟が出来たばかり。英治と付き合っている。
堀場久美子
スケ番。
中山ひとみ
料亭『玉すだれ』の娘。長身で水泳が得意。
瀬川卓蔵
戦争に行った経験を持つ。解放区にあった会社に二十年前まで勤めていた。
榎本勝也
校長
丹羽満
教頭
野沢拓
生活指導主任。
八代謙一
英治たち一年二組の担任。
酒井敦
体育教師。言うことをきかせるためにことあるごとに生徒に体罰を与え、恐れられている。
西脇由布子
養護教諭。薬師丸ひろ子に似ていて、人気がある。
あらすじ
一日 宣戦布告
中学校の一学期の終業式の日、親たちは子どもたちが家に帰ってこないことを不審に思い、連絡を取り合います。
すると、谷本を除いて一年二組の男子全員が家に帰っていないことが判明。
必死に探しますが、行方は分からず。
すると、各家庭に午後七時からFM放送を聞くよう謎の電話があり、周波数を合わせます。
時間になると、解放区放送という聞いたこともない放送、そして相原によるアナウンスが聞こえてきます。
親たちはまだ知りませんが、子どもたちには壮大な企みがありました。
彼らは子どもたちだけの世界『解放区』を作ろうと何か月も前から計画していて、終業式の日がその決行日。
彼らは一ヶ月前に潰れた荒川工機という会社跡に立てこもり、食料など生活に必要な物を持ち込み、一週間にわたって籠城するつもりでした。
女子でこのことを知っているのは久美子、ひとみ、純子の三人だけ。
さらに谷本は怪我を理由に中には入りませんが、解放区放送をFM発信機を使って流す必要があり、大人たちの様子を伝える役目を担います。
一方、柿沼だけが現れませんでしたが、後に純子から連絡が入り、身代金目的で誘拐されたことが判明。
親たちは全員が一斉にいなくなったため、全員誘拐されているのだと勘違いしていました。
二日 説得工作
翌朝、建物の中を歩いた相原が内部に知らない人間がいるのを発見。
男は七十歳の老人で、息子とけんかして家を出てきてここに住んでいるのだといいます。
出口は他にないはずでしたが、老人はマンホールから下水道を通って出入りしているのだといいます。
二十年前までこの会社で働いていて、彼以外、この道の存在を知っている人はいません。
子どもたちは決をとり、老人・瀬川を迎え入れることを決めます。
彼は戦争に行ったこともあり、敵に勝つためには戦略と戦術が必要だと教えてくれます。
午前八時になると、純子と谷本から定期連絡が入ります。
誘拐された柿沼の暗号に期待して、手紙を出せば金を払うといって犯人を説得するようお願いします。
それから三十分後、解放区放送にて自分たちは誘拐されていないと表明。
柿沼だけが本当に誘拐されているのだと伝えます。
その後、解放区に佐竹の弟・俊郎と愛犬のタローが合流。
用心棒として優秀なタローですが、俊郎の言う事しか聞かないため、一人と一匹を迎え入れます。
この日、教師や親たちが解放区を訪れ、出てくるよう説得します。
しかし、子どもたちは彼らの説得に耳を貸すことはなく、挑発を繰り返します。
校長の榎本は対策を考えると、みんなを連れて退却。
その夜、彼らの話し合いのことは純子と久美子が教えてくれ、マスコミに嗅ぎ付けられる前に自分たちで対処しようと考えていることが分かりました。
三日 女スパイ
翌早朝、養護教諭の西脇が子どもたちを心配して来てくれ、この日以降、食べ物の差し入れをしてくれます。
その後の定期連絡で、テレビが取材に来ることが判明します。
その前に体育教師の酒井が来て事態の収拾を試みますが、子どもたちは問題を出題し、一定数以上答えられれば酒井を解放区に迎え入れ、答えられなければ罰ゲームをしてもらうと提案。
酒井はこの条件を飲み、指定の時間にまた来ると言って退散します。
テレビがやってくる前に柿沼から手紙が届きます。
中尾は彼と暗号を出す遊びをよくしていて、『ごみ、公園、からおけ』という言葉を手紙の中から見つけます。
このことから、柿沼はごみ処理場が見え、すぐ近くに公園があり、カラオケの音が聞こえてくる場所に監禁されていると判断。
外にいる谷本や女子たちに捜索は任せ、子どもたちはテレビ局と対峙します。
代表して芸能リポーターが矢場勇が交渉の窓口となりますが、子どもたちを説得することは出来ません。
そこに酒井が現れ、先ほどの賭けをしますが、結果は子どもたちの圧勝。
酒井は無様にも一人プロレスをやらされ、大人たちに一泡吹かせるのでした。
その夜、立石の家にある花火を盗むために何人かの子どもたちは解放区を抜け出します。
途中、久美子と純子に会って情報収集し、無事に花火を手に入れるのでした。
四日 救出作戦
柿沼誘拐事件について、警察を呼んでの捜査が始まります。
しかし、手がかりは何もつかめておらず、女子たちは自分たちの手で救い出そうと意欲的でした。
一方、解放区に西脇が訪れ、子どもたちは柿沼誘拐の件で事情を説明し、協力をあおぎます。
また榎本が、柿沼捜索でいない女子が解放区にいると勘違いして訪れますが、子どもたちはいないと断言。
さらに出迎える準備があるから明日で直してほしいと言い、榎本はその言葉に従って退散します。
その後、子どもたちの何人かは外に出ると、西脇と合流。
柿沼の匂いのする品物をいくつか持ってきてもらうと、彼女の車で柿沼が監禁されていると思われる場所に向かいます。
そこには久美子たちが待っていてくれて、目的の部屋にタローを突撃させます。
犯人を無力化して、柿沼を救出。
二人を解放区に連れて行きます。
その直前、犯人は身代金を指定の場所に持ってくるよう電話をしていて、柿沼の父親はその場所に向かいますが、犯人から連絡はありませんでした。
このことで柿沼の両親は、警察の存在に気が付かれたせいだと警察への不信感を募らせます。
一方、解放区。
誘拐犯の名前は田中康弘といい、サラ金からの借金を誘拐するために柿沼を誘拐したのでした。
田中は悪いことをしていたとすでに観念していて、警察に自首しようとしていました。
しかし、田中が悪い人間でないことは柿沼への扱いからも一目瞭然でした。
さらに柿沼の父親は望まれず出来てしまった赤ちゃんを堕胎することでお金を稼いでいて、柿沼はそんな父親のことを嫌っていました。
そこで柿沼が救出されたことは内緒にして、身代金を自分たちで奪い、田中に渡すことを決めます。
五日 迎撃
翌早朝、柿沼の家に柿沼の音声が吹き込まれたカセットが送られてきます。
そこには身代金の受け渡しまでの細かい指示が録音されていて、父親は警察に内緒でその通りに従います。
一方、榎本たちは再び解放区を訪れ、中に通されますが、そこは子どもたちの作った迷路でした。
教師たちは迷路に翻弄され、子どもたちまでたどり着くことが出来ず、退散していくのでした。
さらに場面は変わり、柿沼の父親は往診のふりをして出かけますが、警察はこっそり後を追います。
そして父親は川に向かって身代金の入ったアタッシュケースを投げ入れます。
さらに浮浪者がごみらしきものを捨てます。
するとそれは父親が投げたものと同じアタッシュケースで、犯人を待ち構えますが、現れる前に二つのアタッシュケースは爆発してしまうのでした。
その後、柿沼の両親や警察が解放区を訪れると、柿沼はすでに解放されているのを確認します。
柿沼は犯人像について嘘の証言をし、捜査を撹乱します。
また身代金はすでに解放区にあります。
というのも、瀬川が途中の隙をついて身代金と爆弾をすり替えていたのでした。
さらに浮浪者に金を渡して別のかばんを川に投げ込むよう指示し、捜査を撹乱させたのでした。
こうして田中は大金を手にしますが、帰る前に彼らが持ち込んだ花火がこのままではうまく打ちあがらないため、直させてほしいといいます。
田中は田舎にいた頃に、祭の手伝いで花火を扱ったことがあったのでした。
六日 総攻撃
翌朝、解放区放送で柿沼の無事を伝えます。
一方、昨日の迷路の一件で榎本たちはついに堪忍袋の緒が切れ、警察に依頼をする覚悟を決めます。
しかし、子どもたちにも考えがありました。
榎本や久美子の父親、市長などによる違法な会合が行われることを知り、久美子にお願いをして父親の上着に盗聴器を仕込みます。
また、緊急事態も発生します。
西脇が子どもたちに差し入れしていることが酒井にバレ、彼女は酒井から求婚されます。
西脇は断りますが、怒った酒井が何をしでかすか分かりません。
そこで子どもたちは、この二つを同時に解決する方法を考えます。
会合に使われるのは、ひとみの家が経営する料亭『玉すだれ』です。
西脇からの伝言で、彼女が玉すだれで待っていると嘘の情報を流し、酒井をおびき寄せます。
会合が始まると、その音声を解放区放送で垂れ流します。
その後、盗聴を行っている人物がすぐ近くにいると嘘の情報を流し、酒井に盗聴の罪をなすりつけます。
結果、酒井は無実の罪で袋叩きにされ、榎本や久美子の両親も対応に追われることとなります。
そしてその夜、夜空に解放区から花火が次々に打ち上がり、みんなで思い出を作るのでした。
七日 撤退
解放区籠城の最終日。
教師や親、警察が最終通告し、従わなければ攻撃に移ることが判明します。
しかし当然、子どもたちは言う事に従わず、大人たちは実力行使に移ります。
もちろん子どもたちも、警察とやり合って勝てるとは思っていません。
そこで一部の子どもを残して、事前に残りは下水道を通って脱出。
さらに隣のビルから解放区のスピーカーを通じて放送を流し、あたかも解放区にまだいるように錯覚させます。
そして警察の突入に合わせて最後の花火を打ち上げると、残った子どもたちも脱出。
当然、警察は子どもたちを発見できず、唖然とします。
大人たちは子どもたちが消えてしまったと勘違いし、自分たちが子どものためにしてきたことが間違っていたことを悔い、悲しむのでした。
一方、解放区から脱出した男子は女子と合流。
クラス全員で成し遂げたことを賞賛し合い、解放区に別れを告げるのでした。
おわりに
時代の違いもあり、今では考えられないようなことも多くありますが、子どもが大人をここまでコテンパンにやっつけるというのは、とても痛快で面白かったです。
本書はシリーズものですので、気に入った方はぜひその続きも読んでみてください。
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