『罪の余白』あらすじとネタバレ感想!娘を死に追いやられた父親の向かう先とは
どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう―。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたい、という思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生達の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!
「BOOK」データベースより
芹沢央さんのデビュー作である本書。
娘が自殺するまで追いやられていることに気づけなかった父親をはじめ、様々な負の感情を抱く登場人物の心情がこれでもかと掘り下げられていて、熱量を感じられる一冊です。
デビュー作ゆえの粗さも目立ちますが、それでも一読の価値ありです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルの意味について。
調べてもそのことについて言及しているものが見つけられなかったので、あくまで僕の推測を書きます。
余白とは字や絵など何かが書かれている紙面で何も記されていない白く残った部分のことをいいます。
本書でいう罪とは、自殺に追いやった原因を作った二人の女子高校生が犯したものを指します。
ここで罪を絵のキャンバスと捉えると、彼女たちの罪にはまだ余白があることになります。
余白とは何か。
それは自殺に追いやってしまったのが偶然なのか、それとも故意なのか。
あるいは死なせてしまったことを自覚し、反省しているのか。
このあたりを指すのではと考えています。
本書では自殺した少女の父親が罪を犯した少女たちの心情をはかり、罪にまだ余白が残されているのか、それとも悪意で真っ黒になってしまっているのかを判断します。
あらすじ
自殺
安藤聡は高校生の娘・加奈を亡くしてしまいます。
学校の四階から落下したことが原因で、状況から事故と自殺の両方が考えられました。
安藤の妻は加奈を生んだことで治療が間に合わず、がんで亡くなっています。
安藤にとって加奈は妻の遺伝子を受け継ぐ唯一の存在であり生きがいでしたが、それが失われてしまったのです。
もっと話を聞いてあげれば良かった。
自殺だとして、加奈は何を苦にして飛び降りたのだろう。
安藤の後悔は止まりません。
無気力な日々
加奈が亡くなって生きる気力を失った安藤ですが、彼が生き続けることが出来たのは同僚の小沢早苗の助けがあったからでした。
早苗は人の感情の機微が読めず、自分と他者の考えのギャップにずっと悩んできましたが、安藤はそんな彼女を受け止めてくれました。
安藤の妻が生きている頃から安藤家と関係を持っていて、早苗にとって安藤は恋愛感情かどうか別として、特別な存在でした。
だから早苗は当たり前のように安藤の身の回りの世話をして、安藤も少しずつ人間らしい生活を取り戻していきます。
復讐
加奈の死が影響を与えたのは安藤だけではありません。
彼女と学校で共に行動していた木場咲と新海真帆は追い込まれていました。
二人は加奈をいじめていたことを自覚していて、それが彼女を死に追いやった原因ではないかと疑われることを恐れていました。
学校関係者は誰もそんなことを思っていませんが、匿名で加奈の死はいじめが原因だったのではとの問い合わせがあり、いつか誰かがいじめの事実に気が付いてしまうかもしれません。
もし加奈の遺書や日記が見つかり、二人のしたことがそこに書かれていたらもうアウトです。
そこで咲は安藤のもとを訪れると、クラスメイトの笹川七緒になりすまして線香をあげ、さりげなく遺書や日記がないか確認します。
しかし、これが咲自身を追い込むことになります。
感想
圧倒的な心理描写
本書の最もすごいところは安藤だけでなく、視点となる四人の心情が細部にいたるまでしっかり掘り下げられている点です。
安藤は妻を犠牲にしてまで生まれてきた加奈が亡くなって悲しいのは当然ですが、その悲しみの深さを表す描写には読者の胸を突き刺すほどの威力がありました。
恵まれた容姿をもちながら、思い通りにならない咲。
コンプレックスを抱え、今ある環境をなんとしてでも守ろうとする真帆。
自分に足りないものを自覚し、表面上取り繕いながらも必死に足りないものを探す早苗。
どれも切実な問題として描かれ、まるで自分が彼らの立場にいるかのような錯覚をしてしまうほどでした。
この部分だけでも、本書は読む価値が大いにあります。
違和感の残る展開
僕がおや?と思ったのは安藤の咲に対する言動です。
かなりのネタバレになるので詳しい言及は避けますが、違和感を覚えずにはいれませんでした。
この違和感にはちゃんとした理由があることが後で分かるのですが、それでも納得できない部分もあり、どうも消化不良です。
これはこれで正しかったのか。
それとももっとアイディアを練ることができたのか。
僕もいまだに判断に迷っているところです。
不完全燃焼
もったいないと感じたのは、魅力的な設定や人物が数多く存在する中で、その魅力をすべて出し切らないまま物語が終わってしまったことです。
例えば早苗。
彼女は他人とのコミュニケーションがうまくいかないことに悩み、自分の生き方を受け入れてくれる安藤に特別な感情を抱いています。
物語において重要な役割を担っているのは確かですが、その割には物語に占める割合が低く、早苗の複雑な背景は本当に必要だったのかと疑問に感じました。
それからベタ。
加奈がベタを見つめる印象的なシーンをはじめ、随所に登場して存在感を出します。
終盤でも重要なアイテムとして出てくるのですが、それが味気なく、ここまで盛り上げてきたのにもったいないと思わずにはいられませんでした。
物語の長さとしては適切だったと思いますが、これらのアイディアの魅力を最大限に発揮させるためにはもっとボリュームがあっても良かったかもしれません。
おわりに
引っかかる部分が多少ありましたが、それを上回る情熱が込められていて、芹沢さんの良さが詰まった一冊になっています。
ぜひ本書がはじめての芹沢作品になったという人は、他の作品にも挑戦してみてください。
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