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『夏の夜の夢』あらすじとネタバレ感想!妖精の惚れ薬が笑いを巻き起こす傑作喜劇

harutoautumn
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アテネ近くの森の中、妖精の王オーベロンと王妃ティターニアは喧嘩の真っ最中。そんな折、運悪く森を訪れた2組の男女はそそっかしい妖精パックに、惚れ薬を塗られてしまう。薬のせいで関係がこじれ、決闘をはじめかけた2人の男を止めようと、必死に駆け回るパックだが…。幻想的な月夜の晩を舞台に妖精と人間が織りなす、シェイクスピアの代表的喜劇。英語の押韻をすべて日本語で表現した、画期的な新訳で。 

「BOOK」データベースより

僕は本書の存在を、内村プロデュース企画の舞台『真夏の夜の夢』で知りました。

本書のタイトルが『夏の夜の夢』となっている理由については後述します。

訳者である河合祥一郎さんは翻訳にあたって英語の押韻(ライム)を全て日本語で表現されるよう意識されていて、まるで演劇を見ているようなテンポで楽しく読むことができました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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元の作品

本書の元はシェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』で、原題は『A Midsummer Night’s Dream』です。

何度もオペラ化、映画化などされているので、人によってイメージが違うかもしれません。

あらすじは後述するとして、タイトルだけ見れば夏の物語のように思えます。

しかし、実際は五月祭の前夜、4月30日のことなので、色々とややこしいタイトルになっています。

一説によるとミッドサマーが『狂気』を意味しているという考えがあり、今では『真夏の~』→『夏の~』とタイトルの訳が変わっています。

タイトルの違い

僕は『真夏の夜の夢』と認識していましたが、本書のタイトルは『夏の夜の夢』で、それにはちゃんと理由があります。

原題のミッドサマーは『盛夏』ではなく『夏至』を差し、六月下旬頃のことです。

当時のイギリスは日本の真夏のように暑くないため、誤解を生まないために『真夏の~』とは訳していません。

またミッドサマーが連想させるのは『暑さ』ではなく『狂気』だとして、それらを総合的に鑑みて『夏の夜の夢』と訳されています。

あらすじ

選択

貴族の若者・ハーミアとライサンダーは恋仲にありますが、ハーミアの父・イジーアスはディミートリアスという青年とハーミアを結婚させようとします。

これにハーミアは反対。

イジーアスは『娘は父親のもので好きにできる』というアテネの古い法律に則り、ディミートリアスとの結婚を拒めば死刑にすると言い出します。

ディミートリアスと結婚するか、死刑か。

猶予は、婚礼の式が行われる次の新月の日までしか残されていませんでした。

駆け落ち

ライサンダーとハーミアはアテネの法律の届かないライサンダーの叔母の住む田舎まで逃げることを決意。

ハーミアは、幼馴染のヘレナにだけこのことを伝え、待ち合わせ場所に向かいます。

ヘレナはこのことを愛するディミートリアスに教え、自分もまた後を追います。

媚薬

妖精の森では、妖精王のオーベロンと女王のティターニアがケンカをしていました。

原因は、ティターニアが可愛がっている子ども(インドの王様から盗んだ)のことで、オーベロンはどうしてもその子どもがほしいと思いました。

そこでオーベロンは妖精のパックに媚薬を塗らせることにします。

この媚薬をまぶたに塗ると、目を覚まして最初に見たものに恋してしまい、その隙に子どもを取ってしまおうと考えたのです。

オーベロンはディミートリアスとヘレナのことも見ていて、ディミートリアスのまぶたにも塗ることで、四人の恋仲を解消しようとしました。

オーベロンはパックに命じますが、パックは間違えてディミートリアスではなくライサンダーのまぶたに媚薬を塗ってしまいます。

その結果、ライサンダーは目を覚まして最初に見たヘレナに恋をしてしまい、こうして四人の関係は余計にこじれてしまいます。

ティターニアもまたオーベロンの思惑通り、別のものに恋をしますが、やがてオーベロンはティターニアのことを気の毒に思います。

物語は、このドタバタが収まるまでの様子を描いています。

感想

とにかくハチャメチャ

第一印象かつ読了後に真っ先に思ったのが、とにかくハチャメチャで飽きの来ない作品だということです。

娘が父親に従わないなら死刑だと言い渡される。

駆け落ちする男女と、それを追いかける男女。

媚薬を間違えて塗ってしまったことで起きた泥沼の関係。

短いお話の中であっという間にこれだけのことが展開され、読者はどう収集をつけるかとつい見入ってしまいます。

訳者の意向もあって文章のテンポが非常に良いので、流れるように読むことが出来ます。

個人的には一言一句追いながら読むというよりも、その場のノリを楽しみながらニュアンスを楽しむと良いと思います。

まさに喜劇にふさわしい、思わぬ展開の数々に驚き、つい笑ってしまいます。

登場人物が多い

一方で、登場人物がかなり多く、注意深く読んでいてもすぐにこんがらがってしまいます。

冒頭の登場人物紹介だけで十七人いて、その他にもちょい役が登場し、その全てを一回で把握するのは至難の業です。

物語の中心は四人の男女なので、最低限彼らの名前だけをごっちゃにならないよう覚えておけば十分だと思います。

後はオーベロン、妖精のパックあたりも覚えておけば、大体の流れは掴めます。

おわりに

演劇で見た時とは違った発見があり、これまで触れこなかった面白さを知ることが出来ました。

これは訳者による違いがけっこう出そうなので、余裕のある人は読み比べてみるのもいいかもしれません。

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