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『星降り山荘の殺人』あらすじとネタバレ感想!フェアな推理が楽しめる本格ミステリ

harutoautumn
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雪に閉ざされた山荘に、UFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女性作家、癖の強い面々が集められた。交通が遮断され電気も電話も通じなくなった隔絶した世界で突如発生する連続密室殺人事件!華麗な推理が繰り出され解決かと思った矢先に大どんでん返しが!?見事に騙される快感に身悶えする名作ミステリー。

「BOOK」データベースより

本書は本格ミステリとしての条件、風格を備えていて、多くのミステリファンを魅了してきました。

作中では著者である倉知淳さんから数々のヒントが提示されますので、推理の取っ掛かりを得ることができ、推理が苦手な人でも犯人当てを楽しめるよう構成されています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

異動

広告会社に勤める杉下和夫は理不尽な上司に手を出してしまいます。

幸い、クビにはなりませんでしたが、ほとぼりが冷めるまで別部門への異動を命じられます。

そこではお抱えのタレント文化人のマネージメントが仕事で、杉下はスターウォッチャーを肩書で知られる星園詩郎の付き人をすることになります。

星園は端正な顔立ちとまるで演劇のような振る舞いが女性たちに大人気で、星の持つロマンについて語ることを仕事にしていました。

杉下にとっては鳥肌が立つほど気持ちの悪いことですが、仕事として仕方なく受け入れます。

出張

杉下は付き人になって早々に、星園と共に出張します。

行先は、埼玉県の山の中にある別荘地でした。

別荘地を買い取った会社の社長・岩岸は星園たちゲストを招いてアイディアを募ることにより、別荘地のイメージアップを図って若い女性客の集客を狙っていました。

星園の他にはUFO研究家の嵯峨島一輝、ベストセラー作家の草吹あかねとその付き人の早沢麻子、岩岸の知り合いである小平ユミ、大日向美樹子が招待されています。

そこに岩岸の部下である財野が加わり、一同は別荘地で一泊することになります。

目的

杉下はその夜、はじめて星園と腹を割って話します。

いちいち気障な星園でしたが、それはとある目的のための演技でした。

九年前、彼の故郷で殺人事件が起き、完全な密室状況下ということで捜査は難航。

ところが、動機面で一番怪しいと思われていた人物が自殺したことによって捜査は打ち切られ、幕を閉じました。

星園は自殺した人物が犯人ではないと考えていて、その人の汚名を注ぎたいと考えています。

一番の問題は関係者が口を閉ざしてしまっていて、再調査が困難であるという点でした。

そこで星園は、大金を稼いでその土地で一番の高額納税者になることによって、住人たちの口を開かせようと考えています。

事件が時効を迎えるまであと六年しかなく、星園はお金を稼ぐために手段を選ぶつもりはなく、その方法がスターウォッチャーでした。

杉下はこの話を聞いて星園への考えを改め、関係を深めるのでした。

閉ざされた山荘での殺人事件

翌朝、物語が動き出します。

岩岸が死体となって発見されたのです。

星園は杉下と共に捜査を開始しますが、動機やアリバイなどから犯人を見つけることはできません。

また大雪によって別荘地は外界から遮断されてしまい、助けを待つしかありません。

一同は仕方なくもう一泊しますが、翌朝には再び殺人事件が起こり、緊張感がいよいよ高まります。

外部から人間が入ってこられないということは、別荘地にいる人間の誰かが犯人ということになります。

杉下は星園と共に様々な方面から捜査を続け、やがて真実にたどり着きます。

感想

王道ミステリ

本書にはホームズ役とワトソン役がいて、外界から閉ざされた山荘で殺人事件が起きます。

もうこの設定だけで王道ミステリと分かる内容で、ミステリ好きであれば否が応でも期待が高まると思います。

魅力はいくつもあるのですが、個人的には読者への挑戦状のように散りばめられたヒントに対して一番胸が高鳴りました。

やりすぎでは?と思われるくらいヒントが提示され、これで謎が解けなければ倉知さんに負けてしまう、という謎の使命感に駆られ、全身全霊を込めて謎に挑むことができました。

このヒントによって推理に慣れていない人でも考える取っ掛かりを得ることが出来ますので、これからミステリを好きになりたいという人にも読みやすいよう設計されています。

コミカルな一面もある

本書は星園をはじめ、印象的なキャラクターが数多く登場します。

一度登場すれば嫌でも覚えてしまい、人物の人間関係をすぐ把握できる点は非常に良かったです。

またやりとりがいちいち面白く、物語が進むにつれて愛着がわいてきます。

本書の文庫版の解説をしている西澤保彦の『七回殺された男』にも通じる部分があり、どちらかを読んで気に入った人であればもう一冊も間違いなく好みだと思われます。

結末は賛否両論が予想される

最後に本書の結末についてですが、人によって評価が一番分かれるポイントだと思います。

綺麗に騙されたと喜ぶ人もいれば、拍子抜けだとガッカリする人もいるでしょう。

僕はちょうどその中間で、発売からかなりの年月が経過してしまっているため、決して目新しさがあるわけではありません。

しかし、その中でミステリとして成立させるためのポイントがしっかり際立っていて、結末がある程度予測できても、それを含めて満足することができました。

ミステリに慣れていない人であれば新鮮な気持ちで読めるでしょうし、数多くのミステリを読んできた人であればひょっとして別の作品で本書のパターンをすでに経験しているかもしれません。

ミステリファンの人は一つの様式美と捉えて読むと過剰な期待をせずに済むかもしれません。

おわりに

表紙とタイトルで一気に惹かれて、中身もその印象を裏切らない良作でした。

時代が変わっても面白い部分はまったく損なわれていないので、ぜひその味わいを堪能してみてください。

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