『死神の精度』あらすじとネタバレ感想!ズレていて憎めない死神が調査する六人の人生
CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。
「BOOK」データベースより
表題作を含む六つの短編で構成される本書。
2007年に『Sweet Rain 死神の精度』というタイトルで映画化され、六つの短編のうち『死神の精度』、『死神と藤田』、『死神対老女』を映画用にアレンジしています。
死神というと髑髏が黒いローブをまとい、鎌を構えているというのが僕のイメージですが、本書に登場する死神は一般人と何ら変わりない外見をしています。
姿を変えられるので本当の姿ではありませんが、それでも外見と思ったことを率直に口にする性格、音楽を愛するところなどが親しみやすく、『死』について恐れることなく向き合うことが出来ました。
こんな死神が実際にいて、その存在に気が付けたとしたら、死に対するイメージがガラリと変わるかもしれません。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルについて。
『死神の精度』とは本書のタイトルであると同時に、収録されている短編のタイトルでもあります。
作中でその意味について明言されていませんので、あくまで僕の考えを書きます。
死神は死ぬ予定の人間を一週間調査し、死を実行するに適していれば『可』、何か問題があれば『見送り』と報告します。
しかしほとんどが『可』で、判断基準も個人の裁量に委ねられていて、かなりいい加減です。
精度でいえばかなり低いです。
そんな中で、本書の主人公である死神の千葉はどのくらいの精度で調査し、死に対する判断を下すのか。
タイトルに対する答えが短編で描かれ、それが本書全体にも通じるため本書全体のタイトルにもなったのではないかと考えています。
あらすじ
死神の精度
死神の千葉は音楽をこよなく愛し、仕事をする時はいつも雨という典型的な雨男です。
『タイトルの意味』の項目でも書きましたが、死神は死ぬ予定の人間を一週間調査し、死を実行しても問題ないかを判断します。
今回、千葉が調査するのは藤木一恵という女性で、千葉はきっかけを作って彼女に近づきます。
一恵は大手電機メーカーの苦情処理の部署で働いていて、最近は自分を指名して何度もクレームの電話をしてくる男のせいで精神をすり減らしていました。
ある日、クレーム男は一恵に近づき、彼女は振り切って逃げ出しますが、千葉には男に見覚えがありました。
男は単なるストーカーなのか。
千葉は一恵に対してどんな評価を下すのか。
本書の入口としてぴったりで、千葉の性格や魅力がよく分かるエピソードです。
死神と藤田
千葉の今回の調査対象は、ヤクザの藤田という男です。
藤田はしっかり筋を通す、今時珍しい真っすぐなヤクザですが、周りからは疎まれていました。
栗木というヤクザの組と揉め事を起こし、取引材料として使われようとする藤田。
千葉は藤田の舎弟である阿久津と一緒に栗木たちに捕まり、藤田を呼び出す餌にされ、絶体絶命に陥ります。
しかし、千葉は死神であるがゆえにあることに気が付いていました。
死の制度やルールをうまく活かしたエピソードです。
吹雪に死神
吹雪が吹き荒れ、外に出ることの出来ない洋館。
ここには複数の男女が集まり、足元には男性の死体が転がっていました。
千葉はその中の田村聡江という女性の調査で洋館を訪れ、複数の人間が死ぬことを知っていました。
死神は不慮な事故や不幸な事件などの突発的な死についてのみ調査するため、老衰や病死、自殺で亡くなることはありえません。
死神だからこそ得られるヒントから事件を解き明かすという、一風変わったミステリを楽しめます。
恋愛で死神
千葉が、調査対象である荻原という男の死を見届けるというシーンから始まる短編。
荻原は向かいのマンションに住む古川朝美に恋をし、二人はやがて惹かれ合います。
朝美は謎の勧誘電話のことを荻原と千葉に打ち明け、電話番号から住所が割れてしまうのではと恐れていました。
実際に相手に住所は割れ、朝美の部屋のドアにはひどい落書きがされていました。
千葉は荻原と朝美の恋や謎の電話相手との出来事、そして最後に荻原の死を見届けるのでした。
死ぬと分かっている相手が、そうとは知らずに生をまっとうする姿は切なく、胸にグッとくるものがありました。
旅路を死神
千葉は森岡という男性を調査します。
森岡は母親と無関係の若者一人をナイフで刺殺し、千葉が運転する車に強引に乗り込み、逃亡の手助けをさせます。
もちろん、千葉は森岡と接触するために車を走らせていたのですが、森岡は当然気が付きません。
森岡は五歳の時に金銭目的で誘拐されたことがあり、色々なことがトラウマになっていました。
その時、森岡の心の支えになったのが監視役だった深津という男で、他の犯人が事故で亡くなった際に森岡を逃がしてくれたのです。
それでも犯人の一人であることに変わりはなく、森岡は捕まる前に深津を殺害しようと考えていましたが、その心は揺れていました。
深津はなぜ森岡を逃がしたのか。
目的地が近づくにつれて、当時の事件の真相が明らかになります。
死神対老女
千葉の調査対象は美容院を営む七十歳過ぎの老女で、千葉が死神であることにはじめから気が付いていました。
怯えるどころか千葉に奇妙なお願いします。
それは、繁華街で若者に声を掛け、明後日、十代後半の男女を四人お店に呼んでほしいというものでした。
千葉は理由を知らないまま繁華街で勧誘し、苦戦しながらもなんとか人数を集めます。
なぜ老女はこんなことを千葉にさせたのか。
それは当日に判明し、さらに意外な事実まで明らかになるのでした。
他の短編とリンクした結末で、それが分かった時は感慨深いものがありました。
人間と死神は違う感覚、価値観で生きているけれど、通じ合えるものもある。
本書を締め括るにふさわしいエピソードでした。
感想
死神らしくないのが良い
本書はとにもかくにも千葉のキャラクターが光っています。
人の死に無頓着なのに他の死神より調査をしっかりやる真面目な部分。
何よりも音楽を愛し、音楽がなくなったり途切れたりすることを何よりも恐れる。
思ったことをすぐに口にして、それが時に人と人とを繋ぐ。
本人は意図していないユーモアさがある。
本書は千葉がいるからこそ成り立つ物語で、彼のおかげでそれぞれの短編がしっかりと結びつき、一つの作品としてまとまってくれます。
人生の意味
千葉からすれば人間の死などそれこそ腐るほど見てきているので、それぞれの人生に興味があるはずがありません。
しかし千葉は彼らを調査する中で、それぞれの人生の意味を目の当たりにして、終わるのを見届けます。
何の感慨もないように見えて、千葉の中にも記憶や思い出という形でこれらのことが蓄積されていることが終盤になって判明するのですが、そこが一番グッときました。
死に優しく寄り添う死神らしくないスタイルは、本書最大の魅力ではないでしょうか。
おわりに
伊坂さんの作品らしい味のある登場人物と、長編ほどのくどさがない読みやすさがうまく調和した作品です。
まだ伊坂さんの作品を読んだことのない人にはもちろんのこと、一度別の作品を読んで伊坂さんは合わないと思ってしまった人にもオススメします。
読了後、雨が降っているとふと、千葉が近くを歩いているのではとつい探したくなるかもしれません。
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