『八日目の蝉』あらすじとネタバレ感想!八日目を生きる蝉は何を思うのか?
直木賞作家・角田光代が全力を注いで書き上げた、心ゆさぶる傑作長編。不倫相手の赤ん坊を誘拐し、東京から名古屋、小豆島へ、女たちにかくまわれながら逃亡生活を送る希和子と、その娘として育てられた薫。偽りの母子の逃亡生活に光はさすのか、そして、薫のその後は――!? 極限の母性を描く、ノンストップ・サスペンス。第2回中央公論文芸賞受賞作。
Amazon商品ページより
『対岸の彼女』で直木賞を受賞し、その後すぐに新聞で連載が始まった本書。
最初から『逃げる』話にしようと決めていたという言葉通り、ある女性が浮気相手の妻が生んだ赤ちゃんを誘拐し、逃亡してそのまま四年もの間、一緒に暮らすという壮絶な内容になっています。
角田さんの作品は世の中を悲観的というか、批判的に見ているような作品が多いイメージで、本書も決して明るい話とはいえません。
しかし数々の苦悩の中で家族とは何か、八日目を生きた蝉はどう思うのかについてかすかですが希望が提示され、前向きに生きる勇気をくれるメッセージも込められています。
以下は本書に関する角田さんへのインタビューです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
誘拐
野々宮希和子は妻帯者である秋山丈博と不倫をし、彼の子どもを身ごもります。
しかし産むことは許されず、堕胎。
その際に子宮内が癒着して閉鎖し、そのままでは妊娠できない体になってしまいます。
一方、丈博に離婚する気配はなく、夫婦の間には女の子が生まれます。
希和子は女の子を一目見て、それまでのことは忘れて新しい人生を歩むつもりでした。
しかし、夫妻がちょっと家を空けた隙に家に侵入して見た赤ちゃんはどこか他人とは思えず、気が付くと赤ちゃんを抱えて逃げ出していました。
怯える日々
希和子は生後半年の赤ちゃんに『薫』と名付けます。
それはかつて、これから生まれてくる自分の子どものために丈博と一緒に考えた名前でした。
希和子は両親を亡くしていて、しかも誘拐した赤ちゃんと一緒で行く当てなどありません。
常に誰かに追われることに怯えながら各地を転々とします。
東京の友人の家、名古屋で出会った立ち退きを拒否する高齢女性の家、訳ありの女性だけを受け入れる宗教コミュニティ、瀬戸内海に浮かぶ小豆島。
希和子は指名手配をされながらも捕まることなく、薫はすくすくと育ちます。
二人の姿はまるで本物の家族のようでした。
しかし、そんな日々が永遠に続くことはありませんでした。
その後の人生
後半は大学生になった薫の視点で物語が語られます。
これだけの壮絶な人生を歩み、ましてや自分の意思で選んだわけではないので、幼少期のことは薫にとって重荷となります。
そんな彼女のもとに宗教コミュニティで一緒に過ごした安藤千草と再会。
千草は自分たちがいたコミュニティについて調べ、本を出版しようとしていました。
最初は協力するつもりのなかった薫ですが、状況が一変。
不安の中、自分のルーツを辿る旅に出ます。
そこで薫は、自分の本当の気持ちに気が付くのでした。
感想
家族の物語
本書の最後には角田さんのロングインタビューが掲載されています。
そこから女性目線を徹底し、結婚や家族といった制度に疑問を抱いていて、それが本書に反映されているのが分かります。
僕が特に考えさせられたのは家族とは何かでした。
普通に考えれば血の繋がりなのかもしれませんが、血が繋がっていなくても素敵な家族を作っている人たちはたくさんいます。
逆に血が繋がっていても分かり合えない家族もたくさんいます。
そう考えると家族って何なんだろうと何度も思いました。
その疑問は大学生になった薫の視点で描かれる後半でより膨らみ、やがて家族という形にこだわる必要はないのかなと思いました。
血の繋がりなど関係ない、希和子と薫の間で気持ちがしっかりと通じ合っているのを感じ、これは家族だと僕は断言することが出来ます。
八日目を生きて良かったと思える結末
よく蝉は地中から出てきて、七日で死ぬと言われています。
だから作中では『八日目の蝉』について、七日でみんな死んでしまったのに、八日目も生き残ってしまった蝉という意味で用いられています。
みんなと違って死ねなかった。
一人残された蝉は悲しいと。
しかし、その考えが変わり、やがて新たな『八日目の蝉』の意味が生まれます。
誤解や反発を恐れずに綺麗ごとではない部分をしっかり描いたからこそ説得力のあるラストで、かすかではありますがしっかりと希望を提示してくれました。
角田さんが作品を通してそういう考え方をできるようになったのかもしれない。
そう思うと素直に嬉しくなり、今後の作品にこの気持ちが活かされたらいいのにと願わずにはいられません。
厭世的な作品も好きですが、僕はやっぱり最後には前を向ける作品が好きなので。
おわりに
ぶつける先のない不安や怒り、悲しみ。
理不尽なことが確かに存在する世の中ですが、自分が考えているほど世界はひどくないのかもしれない。
そう思える作品でした。
自分がもしも悲しみの中で『八日目の蝉』になってしまったとしても、この気持ちを思い出して目を開いて精一杯生きたいと強く思いました。
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