『残穢(ざんえ)』あらすじとネタバレ感想!震源地から拡大する恐怖とは
この家は、どこか可怪しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!
「BOOK」データベースより
タイトルからしてまとわりつくような恐怖がたまらない本書。
第26回山本周五郎賞を受賞したのは伊達ではありません。
最初はよくありそうな気配、違和感ですが、調べるにつれて恐怖の感染源が特定されていくというもので、確実に得体の知れない巨大な負のオーラに近づいてくのを楽しみながら読むことができます。
直接的なホラーとは一味違うので、もしかしたらホラーが苦手な人でも読めてしまうかもしれません。
あと映画化もされていますので、こちらも合わせて楽しんでもらえればと思います。
映画化に際して、中村義洋監督と著者の小野不由美さんが対談していますので、合わせてご覧ください。
小野不由美さんが語る「ホラー愛」――ハマった『呪いのビデオ』シリーズ〈映画『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』公開記念対談(1)〉
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
発端
作家の私は著書のあとがきで怖い話を募集したことがあり、読者から時々恐怖体験が送られてきます。
本書の発端は、久保という読者から送られてきた賃貸マンションでの恐怖体験でした。
久保は越した新居で箒をはくような音を聞き、やがて着物の帯が畳を這う光景を目撃します。
私は既視感を覚えて調べると、同じマンションの別の部屋の住人からも同じ内容の手紙をもらっていたことを思い出します。
久保とメールするようになり、二人はマンションで過去に何があったのかを調べ始めました。
過去に遡る
そのマンションで過去に自殺した人はいませんでした。
ところが、退去してから新居で自殺をした人がいて、さらに調べを続けます。
周辺住人に聞き込みをすると、近隣の団地で人の居着かない家があり、現在の住人も奇妙な出来事に遭遇していたことが判明します。
私と久保はマンションが出来るよりももっと前のことを調べ始め、様々な人の証言を頼りに何十年と遡っていきます。
穢れ
二人は過去に遡るにつれて、恐ろしい話に出くわします。
それらの出来事は今の奇妙な現象に通ずるものがあり、私は『穢れ』という考えに至ります。
恨みを持って亡くなった人の死が『穢れ』となり、人を汚染していく。
人は時代を経て流動的に住む場所を変えるようになり、どこからか穢れに感染した状態でこの土地に持ち込んだのではないか。
この怪異現象には震源地があると私は確信し、調べを続けます。
いくつも歴史をたどり、私はついに九州の地にその震源地を見つけるのでした。
感想
説得力のある恐怖
本書では『穢れ』という言葉が一つのキーワードになっています。
人間、生きていればいつか死んでしまうものですが、恨みを持ったまま亡くなるとそれは『穢れ』になり、よくない影響をこの世に残していきます。
そして、新たにそこで暮らす人たちに感染し、新たな不幸をもたらす。
まさに『残穢』というタイトルにぴったりな内容です。
それでも何百年も前であれば人々は土地に根差していたので、広い範囲に感染することはなく、清めるなどして被害の拡大を防ぐことができました。
しかし現代において人々の暮らしは流動的で、一か所に留まっていることはあまりありません。
それによって意図せず拡大させてしまった感染。
そこに新たな穢れが生まれ、何重にも穢れが溜まっていく。
この悪循環はとても説得力のある恐怖で、読了後もなんとなく頭から離れませんでした。
当時、山本周五郎賞の選考委員だった石田衣良さんや唯川恵さんは、本書を手元に置いておくことが怖いとコメントしていて、とても本書の恐怖にしっくりくる表現だと感じました。
本書自体が穢れなのではないか。
そんな錯覚すら覚えました。
私の正体
本書の語り部である私ですが、名前が一切出てきません。
しかし、彼女の経歴が私=小野不由美さんであることが推察できるようになっています。
作中、私は小学生から中学生向けの文庫レーベルにホラーのシリーズを持っていて、あとがきで怖い話を募集していたと書かれています。
これは『悪霊がいっぱい!?』から始まる『悪霊』シリーズであると思われ、現在では『ゴーストハント』シリーズと改題しています。
ちなみに本書と同時期に刊行された『鬼談百景』は本書と内容がリンクしているため、合わせて読むとこの世界観をより深く味わえるようになっています。
序盤を越せるかが鍵
先に進むにつれて加速度的に面白くなっていく本書ですが、個人的には序盤がやや退屈でした。
具体的にいうと三章の『前世紀』あたりまでです。
ここまではよくありそうな恐怖体験で、ここからどう展開していくのか検討がつかず、モチベーションの維持に苦労しました。
手記のような形式も、話の起伏が少なくなる原因だったのかもしれません。
読み終わった今ではそれらの要素があったからこそ本書のメッセージが活きてくるのだと分かるのですが、初見では賛否が分かれるかもしれません。
ぜひ根気強くお付き合いいただければと思います。
他の作品では見られない圧倒的な恐怖であることは保証します。
おわりに
冒頭からは予想もつかない壮大なホラーで、背表紙の『残穢』という文字を見るだけでその時の恐怖がよみがえります。
僕も身近に恐怖体験があれば、本書のように周辺事情や歴史を調べてしまうかもしれません。
本当に『穢れ』があったらどうしよう、という話ですが。
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