『ユリゴコロ』あらすじとネタバレ感想!一冊のノートに秘められた家族の秘密とは?
ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!
「BOOK」データベースより
ユリゴコロ。
一生忘れられない言葉になりました。
一冊のノートをきっかけに、家族の形が崩れていく恐怖。
次第に過去が明らかになり、それが現在の本当の姿を浮かび上がらせる。
ミステリとしてではなく、家族の物語として捉えると、本書の本質が伝わるのかなと思います。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
どん底
冒頭、主人公の亮平が幸せの絶頂から不幸のどん底に突き落とされたことが分かります。
亮平はドッグランを併設した喫茶店を経営し、婚約者の千絵を家族に紹介して幸せでした。
ところが突然、千絵が失踪します。
それを皮切りに父親の末期がんが発覚し、母親は交通事故で命を落とすなど、絵に描いたような不幸を味わうことになります。
一冊のノート
亮平は父親に会いに実家に行きますが、父親の姿が見えません。
父親の書斎を入ると、押入れの中から一つだけ口の開いた段ボールを見つけ、中をのぞくとそこには年月を感じさせるハンドバッグがありました。
その中には美紗子と書かれた紙に包まれた黒々とした毛髪があり、亮平は疑問に思います。
なぜ母親が亡くなることを予期したかのように、ずっと前に髪を切って残したのか。
さらに段ボールを調べると、底から四冊のノートが見つかります。
亮平が一冊目をめくると、タイトルらしき言葉として『ユリゴコロ』と書かれていました。
ユリゴコロ
この日記を書いた私は人を殺すことに何の罪悪感も持たない人間でした。
彼女の後頭部には小さな瘤があり、その影響か言葉が離せず、幼少期には病院に通っていました。
医師と母親が話している声が聞こえ、私には『ユリゴコロ』がないのだといいます。
みんなが持っていて、私だけが持っていない『ユリゴコロ』。
漠然と『ユリゴコロ』を手に入れないといけないという思いがありました。
私は少しずつ言葉を話すようになりますが、その異常性が明らかになるのはこれからでした。
感想
理解できない恐怖
本書の中心は『ユリゴコロ』と題された日記です。
殺人を平気で行えてしまう私の人生が描かれていて、とにかく理解できないことの連続でした。
とても同じ人間とは思えない精神構造で、感情移入の余地など、どこにもありません。
理解できないことがこれほど怖いことなのかと、改めて思い知らされました。
下手なホラーよりも怖いです。
真実に近づくドキドキ
日記が進むにつれて、亮平は自分にも関係する真実に近づいていきます。
今まで見ていたものが嘘と分かる時、何が見えてくるのか。
特に終盤から物語は一気に加速し、驚きの事実を提示してくれます。
正直、考えられる可能性の幅は狭いため、このオチに気が付ける人はそれなりにいるのかもしれません。
しかし、知っていても胸にこみ上げるものはあるはずで、分かっていても納得できてしまう結末が本書の魅力の一つといえます。
どうしても理解できなかった
本当は手放しに絶賛したいのですが、どうしてもこの作品を理解、あるいは受け入れきれなかった。
それが正直な感想です。
冒頭にも書きましたが、本書はミステリやホラーなどのジャンルでくくるのではなく、家族の物語として見ることでその本質が見えてきます。
読んでいて、確かにその本質を感じることはできました。
でも、フィクションとはいえ、何か得体の知れないものを見せられたような読了感は拭えず、とうとう消化することはできませんでした。
時間が経って読み直せば違った感覚を得ることができそうな気もするので、今後の課題にしたいと思います。
おわりに
今まで読んだことのない類の小説で、得体の知れないエネルギーを感じました。
暗くて怖い話と捉えるか、家族の物語として明るい何かを見出すのかは人によって分かれそうです。
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