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『妖奇庵夜話 その探偵、人にあらず』あらすじとネタバレ感想!妖人が警察に協力する理由とは?

harutoautumn
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美貌の青年茶道家・洗足伊織は、妖怪のDNAを持つ異質な存在。しかし明晰な頭脳と、不思議な力を持つがゆえに、警察に頼られて、妖怪がらみの事件に巻きこまれることに。茶道家探偵、鮮烈に登場。

Amazon商品ページより

セールになっているところを見つけてたまたま手にとった本書ですが、十年以上続いているシリーズとは知りませんでした。

キャラクターの魅力はもちろんのこと、一言では語ることの難しい愛しさだったり、寂しさだったり、繊細な感情を描くのが上手で、長く愛されていることにも納得です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

妖人

本書には『妖人』という種族が登場します。

妖怪と混同されがちなため、本書の冒頭、その辺りがしっかり説明されます。

そもそも妖怪とは定義が曖昧で、噂や伝承の中に存在するようなものです。

一方で、妖人とは明確に定義されており、かつ存在しています。

妖人とは、妖人DNAを有する人間の亜種で、全人口の三~五パーセントが該当するといわれています。

昔から存在していたものですが、近年、その存在が発覚したことで権利をどうするかなど議論が交わされており、現在もその対応は決まり切ってはいませんでした。

Y対

妖人に関する問題に対応するために、警察はY対なるものを設置します。

正式名称はかなり長いですが、要は妖人が絡んだ事件を担当する部署のことです。

見た目は人間と変わりありませんが、妖人DNAによって人間とは異なる運動能力などを有していることもあり、人間と完全に同列に扱うには難しいことがありました。

こういった事情によって妖人絡みの事件が多発すると予想されていましたが、実際はY対の出番は多くなく、捜査一課の使い走りとなっていました。

妖奇庵

Y対は現在、鱗田と脇坂の二人の刑事のみが所属していました。

脇坂は妖怪が好きでこの部署を志望しましたが、妖人と妖怪の区別がついておらず、このままでは仕事になりません。

そして、Y対で仕事する以上、ある人物を避けて通ることはできません。

そこで鱗田は妖奇庵なる場所に脇坂を連れていきます。

彼らを待っていたのは、美形で江戸っ子のような話し方をする、洗足伊織でした。

伊織は論理的な思考で脇坂の誤った認識を論破していき、毒舌っぷりを披露します。

ずいぶんな登場をした伊織ですが、妖人絡みの事件に関して、彼の協力は必要不可欠でした。

感想

妖人という存在

本書では妖怪ではなく妖人が登場します。

曖昧な存在ではなく、人間と同じく、実際に存在するものです。

見た目は同じなのに、種族として人間と同一視できないことから、差別の対象になりやすい危うい存在。

政府は妖人にも人間に近い権利を認めていますが、それも全く同じというわけではなく、明確に区別しています。

さらに一般人からすれば、妖人は得体の知れない怖い存在であり、知らず知らずのうちに差別してしまっていることもあります。

そんな中で、Y対や伊織がどのように事件を解決するのか。

デリケートな設定ですが、それを丁寧に描いていて、まず好感を持てました。

心の機微

妖に関係する題材をテーマにした作品は多くあります。

本書はキャラクターが立っているため、アニメ化にも耐えうる設計になっており、ライトノベルという印象を受ける人もいると思います。

その一面が本書の魅力であることは間違いありません。

一方で、キャラクターの心情や、簡単には分かり合えない難しさを描くのが上手だなと思っていて、それは文芸と呼べるものでもあります。

人間と妖人が分かり合うことは難しいですが、妖人同士でも当然のように思想の違いでぶつかります。

その難しさに対して、伊織や鱗田、脇坂がどのように向き合っていくのか。

巻を増すごとに面白さが増していくことが明白で、シリーズが進むごとに楽しみが増えるのかなと思います。

おわりに

設定や描写、リーダービリティなど、どの点をとっても高いレベルで、安心して身をゆだねることのできる懐の深さがありました。

現在、多くのシリーズものを抱えてしまっているので、本シリーズを一気読みすることは難しいですが、いつでも読めるよう準備したい。

それくらい良い出会いでした。

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