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森見登美彦『夜行』あらすじとネタバレ感想!作家十周年を飾る、どこまでも続く夜を描いた作品

harutoautumn
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『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』『きつねのはなし』代表作すべてのエッセンスを昇華させた、森見ワールド最新作!旅先で出会う謎の連作絵画「夜行」。この十年、僕らは誰ひとり彼女を忘れられなかった。

「BOOK」データベースより

とても印象的な表紙で、一瞬で読みたいと思わせてくれた本書。

本書は森見登美彦さんの作家十周年を記念して執筆されました。

森見さんのこれまでの作品とは違った印象を受け、怪談という言葉がぴったりな内容になっています。

以下は小学館による本書の特設サイトです。

怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語『夜行』森見登美彦 小学館

最初の76ページが無料で試し読みができたり、聖地巡礼のおともとなる『夜行』マップが掲載されていますので、読む前でも後でも作品をより楽しむことが出来ます。

またYouTubeに森見さんへのインタビューもアップされていますので、気になる方はご覧ください。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

この物語の中心には二つの事柄があり、常につきまといます。

そこでまずはその二つを簡単に説明し、それからあらすじに移ります。

失踪

物語の十年前。

京都の英会話スクールに年齢の違う六人の男女が通っていました。

彼らは鞍馬の火祭を見物しようと夜に出掛けますが、仲間のうちの一人・長谷川という女性が突然姿を消します。

彼女を見つける手がかりは何一つなく、生きているとも死んでいるとも分からないまま、残された五人は連絡を取らなくなりました。

そして長谷川失踪から十年後。

大橋の呼びかけで五人は再び集まり、鞍馬の火祭を見物することになりました。

『夜行』という絵

大橋は他の四人と合流する前、街で長谷川にそっくりな女性を見つけ、あとを追います。

女性が入っていったのは画廊でしたが、そこに女性の姿はありませんでした。

そこでは岸田道生という画家の個展が開かれていて、大橋は『夜行』という銅版画と出会います。

『夜行』は四十八作からなる連作で、タイトルにそれぞれ地名が書かれ、一人の女性が描かれていました。

同じ一つの夜がどこまでも広がるような不思議な感覚。

この物語には、常にこの『夜行』が関わっていました。

また、『夜行』には対となる『曙光』という作品があり、ただ一度きりの朝を描いたといわれています。

しかし、『曙光』を見た人間は一人もいないといいます。

それぞれの不思議な体験

再び集まるも、火祭に行くでもなく宿にとどまる五人。

大橋を除いた四人は、それぞれの旅の思い出を語ります。

どれも怪談のような内容で、驚くことに全員が旅先で『夜行』のいずれかを目にしていました。

大橋は、長谷川も同じような体験をして、戻って来れなかったのではと考えます。

昔の仲間と会って、長谷川のことを思い出す。

今回の目的は達成できたように思えましたが、物語はここから動きます。

大橋もまた、『夜行』と関係する不思議な体験をするのでした。

感想

幻想的な雰囲気

英会話スクールに通っていた面々が語る不思議な体験の数々。

その一つ一つが雰囲気をまとっていて、まるで物語に迷い込んでしまったかのような没入感がありました。

この夜はどこまで続いているのか。

果たして無事に帰ることができるのか。

怪談というだけあって怖さがある一方で、真実を知りたいとついページをめくってしまう自分がいました。

果ての見えないトンネル。

醒めることのない悪夢。

このような感覚が常につきまとい、何となく居心地が悪いなと感じつつも、それが幻想的で本書の魅力となっています。

一方で、物語全体を通してそこまで起伏はないので、退屈と感じる人がいるかもしれません。

森見さんのこれまでの作品とは違った一面を持っているので、ある程度、評価は分かれると思います。

何が正解なのか

主人公である大橋は、自分の身に何が起きたのかを終盤になって知ります。

しかし、それだけで彼の身に起こったことを説明することはできず、最後まで結末が曖昧なまま終わります。

よくいえば幻想的な雰囲気を貫いた。

人によっては消化不良のように感じると思います。

僕は結末も含めて満足のいく内容でした。

読み終わった後も物語の持つ幻想的な雰囲気の余韻に浸ることが出来ましたので、これ以上の終わり方はなかったと思います。

もう再読したいと考えていて、次は最も本書の雰囲気に合う夏の夜に読みたいと思います。

おわりに

作家十周年にして、新たな一面を見せてくれた森見さん。

とにかく雰囲気のある物語で、ぜひ夜に読んでほしい一冊です。

もしかしたらその夜がどこかに通じていて、こことは違う世界に迷い込んでしまうことがあるかもしれません。

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