『海の見える理髪店』あらすじとネタバレ感想!家族をテーマにした短編集
店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。
「BOOK」データベースより
荻原浩さんの家族をテーマにした六つの短編を収録した短編集です。
ハートフルで人情味の溢れる文章を書く荻原さんなので、読む前からかなり期待していましたが、それ以上の衝撃がありました。
近しい距離にいる家族だからこそさらけ出せる愛憎、それからちょっとした驚きの仕掛け。
家族を大事にしたい、ちょっと距離感を見つめ直したいという人には特にオススメです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
海の見える理髪店
海辺の町に佇む理髪店。
僕はとある思いを秘め、普段通う美容院ではなく遠くにあるこの理髪店を訪れます。
大物俳優や財政界の名士が店に通いつめたという名店。
僕は緊張気味でしたが、店主の熟練の腕を確認して次第に身を預けていきます。
店主は会話もサービスといわんばかりに自分の昔話を始め、僕は聞き入ります。
しかし、店主の話は次第に他人に話すような内容ではないほど個人的なものになり、やがて僕の秘めた思いも明らかになります。
いつか来た道
私こと杏子は弟・充に説得され、十六年ぶりに母親に会いに行きます。
母親はかつて中学校の美術教師で、才能を持っていましたが、絵だけで暮らしていけるほど甘い世界ではありません。
そこで小さい頃から英才教育をすればいつか大成すると杏子やその姉に自分の夢を託しますが、姉は死亡。
その狂気は杏子だけに向けられ、耐えられなくなった杏子は家を出ました。
十六年ぶりに会った母親は車椅子なしでは生活できないほど足腰が弱り、杏子を正しく認識できない状態でしたが、以前と変わらないひどい言葉を杏子にぶつけます。
帰ってこなければよかった。
何度も後悔する杏子ですが、やがて自分の知らない母親の心情を知ることになります。
遠くから来た手紙
祥子は夫の孝之とケンカし、娘の遥香を連れて実家に帰ります。
しかし、実家には弟・辰馬とその妻・麗亜が同居していて、麗亜のお腹の中には新しい命がいます。
祥子の来訪は決して歓迎されず、かといって孝之はすぐに迎えに来る様子もなく、祥子の不満を日に日に募ります。
そんなある日、見知らぬアドレスから時代錯誤の仰々しいメールが送られてきます。
祥子は孝之のご機嫌取りの作戦だと思って無視をしますが、やがてメールの正体を知り驚くことになります。
空は今日もスカイ
小学生の佐藤茜は見知らぬ町に引っ越してきますが、母親や自分が町に受け入れられていないことは明らかでした。
転校した途端に夏休みになり、遊ぶ相手もいません。
暇を持て余していると、ゴミ袋を被った少年と出会います。
森嶋陽太(もりしまひろた)といい、ゴミ袋を脱ぐと明らかに虐待されているような様子でした。
二人を家出をして海に向かうことにしますが、そんな探検は長くは続きませんでした。
時のない時計
私は二ヶ月前に亡くなった父の遺品である時計を受け取りますが、壊れて動かなくなっていました。
いい時計のはず。
情けないことに母親のその言葉に心を動かされ、『鈴宝堂』という時計屋に修理のために持ち込みます。
時計屋には様々な時計が置かれていて、そこには主人とその家族の思い出が詰まっていました。
私は主人の話を聞きながら、形見であるこの時計にも父親との思い出が詰まっていることを思い知ることになります
成人式
私と美絵子は五年前に娘の鈴音を事故で亡くしていました。
当時、鈴音は十五歳でした。
鈴音が亡くなったことで二人とも気を落とし、このままではダメになると分かりながらも鈴音を忘れられずにいました。
そんな時、私は晴れ着のCMを見て思い付きます。
今年二十歳になるはずだった鈴音に代わって、自分と美絵子が新成人として成人式に参加することを。
お互いに五十歳を目前にして、どれだけ努力をしたところで本物の新成人に紛れられるわけがありません。
それでも二人は限られた時間の中で精一杯の努力をして、ついに成人式当日を迎えます。
感想
家族ゆえの愛憎
家族は誰よりも長い時間を共有する存在で、それゆえに愛しさも憎しみも格別です。
心の底では信じあっていても、ちょっとしたことでケンカになり、素直に謝れないまますれ違うことも珍しくありません。
どちらかが折れてすぐ仲直りすることもあれば、関係を正せないまま離れ離れになり、時間が問題を解決してくれることもあります。
もちろん、そのまま生き別れてしまうこともあります。
そんな特別な関係である家族を、様々な視点から描かれた六つの短編が本書には収録されています。
親、子ども、夫婦。
視点を変えるだけで家族の形はがらりと変わるのが面白く、またいずれの場合でもかけがえのない存在であることを教えてくれます。
自分に答えをくれる短編が見つかるはず
読者の年齢や立場によって共感する短編も変わるのではないでしょうか。
親との関係に悩む子ども。
夫、もしくは妻とすれ違いになっている人。
子どもとの接し方に悩む親。
本書にはいずれの立場からも描かれた短編がありますので、きっとあなたの疑問や悩みに答え、もしくはそのきっかけになるものを得られるはずです。
荻原さんの文章は温かみがあり、自然と心に染み込んできますので、何かしら得られるものがあるのではないでしょうか。
おわりに
直木賞を受賞したことも頷ける作品で、読み終えると本書に愛おしさを抱かずにはいられませんでした。
家族は特別な存在ですが、誰にとっても大切とは限りません。
しかし、時間の経過とともにお互いの心境や関係が変わることもありますので、家族に対して何かわだかまりを持っている時ほど読んでほしい一冊だと思いました。
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