『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』あらすじとネタバレ感想!最後まで予想のつかないとんでもミステリ
京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城を彷彿させる館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、惨劇の幕はすでに切って落されていた。首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人、2人の名探偵の火花散る対決そして…。島田荘司、綾辻行人,法月綸太郎三氏の賛辞を付して刊行された著者21歳のデビュー作、ノベルス化になる。
「BOOK」データベースより
麻耶雄嵩さんのデビュー作である本書。
完成度うんぬんは人それぞれ基準が違うかもしれませんが、王道ミステリのようなシチュエーションから読者が予想もできない事実がとにかく詰まっていて、デビュー作とは思えない風格をまとった作品です。
しかも京都大学在学中の二十一歳の時のことなので、余計に驚いてしまいます。
一方でその突き抜けた内容は賛否両論があります。
他の人がレビューで書いている通り、人を選ぶことは間違いないかもしれません。
しかし、合わなくてもその凄みで満足できる人もいると思うので、読まないのはもったいないです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
依頼
ワトソン役である香月実朝が物語の視点となります。
発端として、探偵の木更津悠也のもとに今鏡伊都という人物から依頼が入ります。
今鏡家の経営するグループは大阪に拠点を持ち、傘下に数十の子会社を抱える大企業です。
依頼の内容はシンプルで、決まった日時に伊都の住む蒼鴉城(そうあじょう)に来てほしいというものでした。
これだけでは何も分かりませんが、同時に届いた手紙には脅迫じみた言葉で蒼鴉城に近づかないよう書かれていました。
不穏な気配が流れますが、これらは木更津の好奇心をくすぐり、香月とともに京都近郊に建つ蒼鴉城に向かうのでした。
密室殺人
木更津たちが蒼鴉城に着くと、顔見知りの刑事・辻村をはじめとした警察の面々がすでにいました。
殺人事件が発生したということで、死体を見るとその人物は依頼人である伊都でした。
首を切られ、甲冑の鉄靴を履かせるために足が切られていました。
ところが詳しく調べると、胴体は伊都で、頭は彼の息子である有馬のものであることが判明します。
その後、それぞれの頭、胴体は別のところで見つかります。
それだけでも異常なのに、問題は他にもありません。
伊都の胴体、有馬の頭が置かれていた部屋は密室でした。
これだけの特異性が重なれば、それは偶然ではなく犯人の意図が込められているのは明らかです。
では犯人はどんな意図をもってこんな手の込んだ殺人を犯したのか。
ここから木更津と犯人の壮絶な頭脳戦が始まります。
殺人は続く
木更津や警察の捜査をあざ笑うかのように、殺人事件が連日発生します。
しかもどれもただ殺害することが目的でないような殺し方ばかりで、それでいて犯人に繋がる証拠が全く見つかりません。
物語にはメルカトル鮎という二人目の探偵も登場し、木更津との推理合戦を繰り広げるわけですが、物語の先には壮絶な結末が用意されていました。
感想
圧倒的なミステリ
新本格ミステリの代表作としてよく名前の挙がる本書。
あらゆる意味で他のミステリを寄せ付けない、圧倒的な存在感を放っています。
探偵が閉鎖的で独自の文化を持つ一族の元を訪れ、そこで連続殺人が行われる。
ここまでであればミステリの王道で、そこまで唯一無二という印象は受けないかもしれません。
しかし、本書は読者の理解するスピードなどお構いなしに物凄い速さで展開していき、それもページを経るごとにそのスピードは増す一方です。
もはや推理しようという気すらおきず、ただただ本書の創り出す世界観に圧倒され、その事実を諦めにも似た気持ちで受け付けるしかありません。
二転三転する推理
本書の最大の魅力、かつ評価の分かれるポイントとして挙げられるのが、二転も三転もする推理です。
数ページ前まで披露されていた推理はあっさりと敗れ、新たな推理が披露されたかと思いきや、すぐに新たな真実によって塗り替えられてしまう。
推理のどれもが突拍子もないのですが、それをいうとそもそも連続殺人自体が理解不能なもので、その真実としては相応しいのかもしれません。
結末はもう読者の想像の遥か彼方をいくものなのですが、読み返してみるとちゃんと伏線は張られています。
ただとんでもない発想ゆえに、伏線から真実に辿り着くのはもはや不可能です。
しかし、推理できないことに腹立たしさはなく、こんな想像もつかない物語を組み上げた麻耶さんにもう脱帽するしかありません。
フィクションとして許容できるか
ミステリはフィクションです。
常人には理解できない人物のオンパレードだし、殺人事件が起きようものなら探偵は大喜びです。
そういった前提がある上で、本書をフィクションとして許容できるかが一つのポイントとなります。
本書では数多くの人が殺害されるわけですが、決してクローズドサークルではないので逃げようと思えば逃げることができます。
しかし当事者たちは事件現場となった館にずっと留まり、あっけなく殺害されていく。
それを全くといっていいほど阻止できない探偵が、最後に真実を語る。
いくらなんでも異常すぎるだろう、と何度心の中で突っ込んだか分かりません。
ミステリが好きかどうかではなく、どんな物語でも許容できる人。
そんな人が本書には向いているのかもしれません。
おわりに
尖りすぎているゆえに読み手を選びますが、デビュー作でここまで圧倒的な世界観を作り上げた麻耶さんはすごすぎます。
僕はどはまりというほどではありませんでしたが、物語にいいように翻弄され、それをどこか嬉しく思ったのでした。
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