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筒井康隆『時をかける少女』あらすじとネタバレ感想!不朽のSF作品を含む三つの短編

harutoautumn
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放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。この匂いをわたしは知っている──そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床に倒れてしまった。そして……目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始める。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時を超え、未来へと引き継がれる。

Amazon商品ページより

僕は2006年に映画化された細田守監督の『時をかける少女』から入り、本書を読みました。

そのせいか色々と驚いたことがあり、本書の『時をかける少女』はあくまで表題作で、さらに二作の短編を含めた三作で構成されていることに一番驚きました。

本書は新装版で、発行されたのは1967年。

時代背景もあって多少の古臭さは感じます。

しかし、僕が見た映画『時をかける少女』で感じたSF要素、青春時代の切なくて全力な恋心はそのままに描かれていて、いつまでも色あせない魅力があることを確認することが出来ました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

時をかける少女

表題作。

中学三年の芳山和子は理科室で試験管が割れる音を聞きつけ、何者かの気配を感じます。

しかし、部屋には誰もいませんでした。

その夜、和子は地震で目が覚め、さらに友人の浅倉五郎の家でボヤが発生します。

翌日、和子は登校時、トラックに惹かれそうになり死を覚悟します。

ところが和子は無事で、なぜか時間も登校前に戻っていました。

夢かと思いますが、和子にとって既視感のあることばかり起こり、和子は自分が一日前に戻ったことを知ります。

和子は学校の福島先生に相談し、理科室で嗅いだラベンダーの匂いの薬品のせいでテレポーテーション(身体移動)とタイムリープ(時間跳躍)の能力を獲得してしまったことを知ります。

便利な能力ですが、和子は周囲から変な目で見られ、元の生活に戻ることを願っていました。

そこでタイムリープで薬品を嗅ぐ前に戻り、理科室にいたはずの人物に事情を聞くことにするのでした。

悪夢の真相

中学二年の昌子には怖いものがいくつかあり、なぜ怖いのか理由が分かりませんでした。

弟の芳夫は夜、女の人が怖いという理由でトイレに一人で行くのを嫌がっていました。

しかしそれにはちゃんとした理由があり、昌子が説明してあげると芳夫は一人で夜、トイレに行けるようになりました。

昌子はこの経験から、怖いものには何らかの理由があることを知り、自分がなぜ般若のお面と高い所にある手すりなどを怖がるのかを知るために調査を始めます。

そこには、思いがけない事情が隠れていました。

果てしなき多元宇宙

高校生の暢子は自分の容姿や周囲の人間など現状に不満を感じていました。

こうだったらいいのに。

そう思う暢子とは別に、遥か未来のことも一緒に描かれます。

ヴェラトロンという装置が大爆発し、多元宇宙における同一の存在が入れ替わってしまったのです。

その結果、暢子は別の宇宙の自分と入れ替わり、そこは暢子の望む結果の得られた世界でした。

喜ぶ一方で、元のままの方が良いこともあり、暢子は元の世界に戻りたいと願います。

その頃、ヴェラトロンを開発したノブはこの事態を把握し、正すためのさらなる実験を行いますが、それが新たな結果を生み出すことになります。

感想

よくまとまっている

本書は表題作を含めても二〇〇ページちょっとしかありません。

その中で『時をかける少女』が占める割合はだいたい半分。

僕の知る『時をかける少女』を描くには十分なページ数とはいえませんでした。

しかし、本書は簡潔に必要なことを描き、それでいて情緒的な部分もしっかり加えています。

ヤングアダルト向けということで、テレポーテーション+タイムリープというSF要素が魅力的なのはもちろんですが、青春時代だからこそできるまっすぐで純粋な恋愛が描かれ、もういうことはありません。

短い中で、非常によくまとまっていると思います。

世代を超えた魅力がある

僕は細田守監督の映画『時をかける少女』から入ったので、本書を読むとどうしても同一作品とは思えませんでした。

しかし、根底に流れるテーマやメッセージは同じものを感じ、今読んでもしっかりと楽しめることに驚きました。

時代の移ろいと共にトレンドや価値観は変わりますが、変わらず人を惹きつける魅力があり、本書にはそれがあります。

本書から入って違う媒体の『時をかける少女』に入るのもあり。

映画などから本書に入るのもありなので、ぜひそれぞれの違いや魅力を楽しめながら、『時をかける少女』という名作を何倍にも楽しんでほしいと思います。

おわりに

不思議な体験と、思春期特有の青くて、瑞々しい感覚。

その両方が見事に融合し、僕よりも後の世代にもオススメしたい不朽の名作でした。

本書を読んで、また細田守監督の『時をかける少女』を見たくなりました。

夏のエアコンの効いた部屋で見る『時をかける少女』は色あせない僕の思い出で、いつまでも残り続けるのだろうと思います。

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