『タイタンの妖女』あらすじとネタバレ感想!神のような力で導かれる計画の先にあるものとは?
時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。
Amazon商品ページより
ハヤカワ文庫SFを漁っている中で、たどり着いた本書。
正直、初読の際は難解で、物語をどう捉えれば良いのか難しい部分がありました。
しかし終盤になって全貌が見えるとその構成に驚き、再読して倍以上の面白さがありました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
波動現象
本書で、神のごとき力を見せつけてくれるウィンストン・ナイルズ・ラムファード。
彼は愛犬カザックとともに自家用宇宙船で宇宙を移動中、時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)に飛び込んでしまいます。
本書中では時間等曲率漏斗の説明がかなり簡略化していますが、簡単にいうとここには過去・現在・未来のあらゆるものが波動として存在していて、太陽内部からペテルギウス星まで連なっています。
ラムファードはこの漏斗と一体化してしまったわけですが、その結果、過去から未来までを知ることのできる能力を身に着けた一方で、らせん型が地球と一致した時だけ実体化することができました。
この超常現象と化したラムファードが、物語の軸にいます。
不幸な男
全米一の大富豪、マラカイ・コンスタントは、ラムファードの企てる計画の一番の被害者となります。
コンスタントは、ラムファードから嫌な予言を授かります。
とても信じられる内容ではなく、コンスタントはそれが実現しないよう祈っていましたが、その想いに反してコンスタントは予言の通り、不幸な目にあいます。
富を奪われ、名前を奪われ、彼は地球から火星、水星と流浪する羽目になりますが、終着点はそこではありません。
コンスタントは、どんな運命をたどるのか。
ラムファードの計画とは何なのか。
宇宙のように膨張していく物語ですが、やがて思いがけない真実に至ります。
感想
翻弄される読者
本書を読んで、最初から最後まで意味を完全に理解して読めた人はほとんどいないのではないでしょうか。
それくらいに物語に一貫性はなく、作中で起こったことや発言にどんな意味があるのか、読者は頭を悩ませながら読み進めることになります。
かくいう僕も、中盤くらいで意味が分からな過ぎて諦めるところでした。
しかしそれをしなかったのは、意味が分からないながらも面白いパーツがいくつもあり、読み進めないと後悔すると何となく思ったからです。
そんな形で最後まで読んだわけですが、それが大世界だったことが最後になって分かりました。
壮大な物語
最後まで読むことによって、本書の意味が分からない意味が分かりました。
よくよく考えてみると、人生にはいくら考えても分からないことがいくらでもあり、本書はそんなことがテーマに掲げられています。
そのテーマが見えてくると、本書の一貫性のない物語に急に意味が見えてきて、一気に再読したくなります。
再読すると今まで理解できなかったことに違う意味が見えてきて、これまでの難解さが嘘のように面白くなりました。
再読前提でも良いくらいの難易度なので、読者に優しいはお世辞にもいえません。
しかし、その価値以上のものが本書にあるので、はじめは何となく、二回目以降は本書のテーマ・狙いを念頭に置いて読むと、他では味わえない読書体験を得ることができます。
おわりに
最近根気を求められる読書が多いですが、その中で本書はその根気に報いてくれる名作でした。
初読の時は意味が分からないことをスルーすることも大事になってくるので、時に大胆に読み飛ばしながら最後まで進んでみてください。
そこできっと作中の登場人物同様、あなたはこの計画の意味を知ることができるでしょう。
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