『死者のための音楽』あらすじとネタバレ感想!妖しくも切ない短編集
死にそうになるたびに、それが聞えてくるの――。母をとりこにする、美しい音楽とは。表題作「死者のための音楽」ほか、人との絆を描いた怪しくも切ない七篇を収録。怪談作家、山白朝子が描く愛の物語。
Amazon商品ページより
山白朝子さんの作品である本書。
収録に一貫したテーマがあるわけではありませんが、どの作品でも理屈では説明できないことと、人間による怪しさや切なさ、そういったものが見事に融合して、ここでしか味わえない読み心地に仕上がっています。
ホラーとして読める一方で、ホラー好き以外にも読んでほしい一冊です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
長い旅のはじまり
私の寺に女がやってきます。
彼女は死んだ子どもを抱えていて、お経を唱えてほしいと懇願します。
子どもは足を滑らせ、川に落ちて亡くなったのでした。
私はお経を唱えると、昔、知り合いの母子(おやこ)が身を投げたことがあると話を始めます。
それは不思議な話でした。
井戸を下りる
私の父は高利貸しを営んでいて、お金を取り立てるために町の人たちから恐れられていました。
私はある時からそんな父を怖いと思うようになりますが、お金が十分にあったため、大人になっても賭け事や女遊びを繰り返していました。
ある日、賭け事に夢中になりすぎて父親の大事にしている壺を質屋に預けてしまい、父親を怒らせてしまいます。
このまま帰れば、どんな目に遭うか分からない。
帰れずにいると古井戸を見つけ、縄に捕まって降りようとすると、誤って落ちてしまいます。
気が付くとそこは井戸の中の部屋で、女が私を看病してくれていました。
黄金工場
ぼくの住む村のはずれの森の中に工場があり、流される廃液からは甘い匂いがしました。
工場には他所から危険な排出物が集められ、そこで無害なものにして埋め立てられるのだといいます。
ぼくはある日、森の奥で黄金のコガネムシを見つけ、憧れの人で工場で働く佐内千絵にプレゼントしますが、彼女に大事にするようにいわれ、以来、大事に家で置くようになりました。
その後も、ぼくは黄金の様々な昆虫を見つけますが、それに母親が悪いことを思いつきます。
未完の像
私の家に少女が訪れ、仏師に弟子入りさせてほしいといいます。
師匠が不在のため帰らせようとしますが、少女はここで待つといい、家にあった木片を彫り始めます。
あっという間にまるで生きているような鳥を彫ってみせ、それだけで才能があることが分かります。
結局、弟子はこれ以上とれないと断られてしまいますが、少女は度々訪れ、ぼくは仕方なく彫り方を教えます。
少女には人殺しの罪があり、こんな日々が長く続かないことは分かっていましたが、その日はすぐに訪れました。
鬼物語
戦のある時代のこと。
ある日、子どもの頭が小川を流れてくるのを村人が見つけます。
頭は数珠つなぎになっていて、大人たちは熊の仕業だろうと考え、中には鬼の仕業だと考える人もいます。
結局、山に火を放って熊を焼き殺すことを決めますが、熊の仕業ではないことはすぐに分かりました。
鳥とファフロッキーズ現象について
ある日、家の屋根に鴉のような鳥が引っかかっていました。
鳥は翼に怪我を負っており、私と父親は鳥を介抱します。
怪我が治って自然に帰るのかと思いきや、鳥はなついたのかその後も家に居座り、二人もそのことを気にしませんでした。
鳥は人の気持ちが読めるのか、私や父親の望むことをしてくれるようになりますが、これが大きな出来事を呼ぶことになります。
死者のための音楽
表題作。
母親と娘の視点が交互に入れ替わり、二つの視点から語られます。
母親は生まれつき耳が悪く、それが原因で両親はいつもケンカしていました。
そんな母親にとって、ある音楽を聞いたことで人生が救われたのだといい、そのことが語られます。
彼女がそれをはじめて聞いたのは十歳の時でした。
感想
浮世離れした雰囲気
収録作は時代がバラバラで、平成や令和といった現代を描いた作品はあまりなく、強いていえば後半の作品でしょうか。
それ以外は昔のことを描いていて、それも人の多い繁華街というよりも、人里離れた、あるいは小さな村や町を舞台にしています。
それによってその場所や時代独特の雰囲気があり、情景を思い浮かべるだけでも楽しいです。
登場する人たちは感情的というよりも非常に冷静で理性的で、どちらかというと静的です。
それでいて起こる事件や現象はそれなりのインパクトがあり、この対比が読んでいて面白かったです。
さらにそんなことが起きていても冷静に受け止めている登場人物が多く、常人ではない様子が怖くもありました。
平成怪奇小説傑作集に収録されていた『鳥とファフロッキーズ現象について』を読んだ時も思いましたが、山白さんの作品はとにかく上質で、丁寧に作り込まれているなと読んでいて何度も思いました。
個人的なオススメ
どれもオススメしたいところですが、あえてオススメするのであれば『黄金工場』です。
どこにも行けない町という狭い世界。
憧れの女性。
宝物になった黄金のコガネムシ。
構成しているものは非常にシンプルで読む方向は迷いませんが、その中でちょっとした驚きや思いがけない切なさを生んでくれて、一言では言えない不思議な感情がこみ上げてきました。
またぼく視点では大人に見える千絵も、そんな高尚な人物ではないことがやがて分かるのですが、その味わいも好きです。
おわりに
七つの短編でも二〇〇ページに満たないので、かなり軽めです。
値段もお手頃ですが、ページ数以上の満足感があり、山白さんの描く作品のファンになってしまいました。
ちなみに山白さんは乙一さんの別名義であることは有名ですが、名義によってどのように書き分けているのか、意識しながら読み比べるのも面白いかもしれません。
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