『ロマンシエ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
政治家を父に持つアーティストの卵・遠明寺美智之輔は、恋愛対象が同性の乙女な男子。同級生の高瀬君への恋心を秘めたまま、日本の美大を卒業後、単身、パリへ留学した。ある日、美智之輔は印象的な風貌の羽生光晴という女性と知り合う。偶然にも彼女は、美智之輔が愛読する超人気小説の作者で、訳あってリトグラフ工房に匿われていた。過去に、ピカソなどの有名芸術家たちが作品を生み出してきたプレス機が並ぶその工房で、リトグラフに魅了された美智之輔は、光晴の生活をサポートしつつ、リトグラフ制作をすることになるが―。
「BOOK」データベースより
原田マハさんの作品なんだけれど、そうでもない気もする。
はじめて読んだ時、作者を間違えたかと本気で目を疑いました。
僕は『暗幕のゲルニカ』や『楽園のカンヴァス』などで彼女の作品にはまったので、そういったテイストを予想していたのですが、全くといっていいほど違います。
物語の視点である遠明寺美智之輔は恋愛対象が男性で、心情は乙女そのもの。
そんな彼の心情がこれでもかと深堀りされているので、勢いが凄まじいです。
表現も作者が注釈を入れている通り、昭和チックなので、苦手な人は読み進めるのにかなり苦労すると思います。
しかし、作品の織り成す輪郭が読者にきちんと見えてくると美智之輔=自分のようにその心情が手に取るように分かるようになり、ラスト50ページは圧巻です。
苦手だという方も、ぜひすぐに見限らずにお付き合いしてもらえればと思います。
以下は本書に関する原田さんへのインタビューです。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
『ロマンシエ』とはフランス語で小説家という意味を持ちます。
スペルは『romancier』です。
ロマンスという単語なら聞いたことのある人も多いと思うので、つい勘違いしてしまいそうですが、読み進めるうちにタイトルの意味に気が付くと思います。
もちろんロマンスという言葉も内容とすごく密接にリンクするので、色々と想像しながら読んでみてください。
転機
物語の主人公は、政治家の父親を持ち美大に通う遠明寺美智之輔。
彼は卒業したらイラストレーターになり、父親の望む進路とは別の道を進むことを決めていました。
しかし冒頭、寝坊して依頼のあったイラストの締め切りに間に合わず、担当の松原に愛想を尽かされて途方に暮れます。
一方、大学では卒業制作に取り組んでいて、美智之輔は大好きな高瀬(男性)への思いを募らせつつも、打ち明けるべきか入学以来ずっと悩んでいました。
そんなある日、父親から彼の所属する政党の幹事長の娘との縁談を強引に決められ、美智之輔の将来は決まったかのように思われました。
その時、高瀬から連絡があり、美智之輔の卒業制作が最優秀作品に選ばれたことを知らされます。
さらに今年は創立五十周年を記念し、選ばれた学生はパリのエコール・デ・ボザール(美術学校)に留学する権利を得ることができるのです。
まさに渡りに船。
美智之輔は迷わずパリ行きを決め、友人たちに祝われ旅立ちます。
ところが、物事はそう甘くはありませんでした。
そもそも留学先は美智之輔が思っていた場所はまるで違う、個人経営の小規模な私塾のようなアトリエで、大した勉強もできません。
改めてボザールに入るべくフランス語を習い始めますが、親からもらった資金は底をついてしまい、彼らに内緒で『ラ・ブーム』というカフェでバイトもします。
そんなこんなで気が付けばパリに渡って二年が経過し、今年がボザールを受験するラストチャンス。
落ち込む美智之輔を元気づけたのは、愛読作品である羽生美晴(はぶみはる)の『暴れ鮫』シリーズでした。
出会い
不思議な雰囲気の日本人女性がラ・ブームを訪れるようになり、美智之輔は奇妙な言葉のフランス語訳を頼まれるようになります。
ある日、ムギと呼ばれる友人の女性も一緒で、ムギは相手の女性をハルと呼びます。
二人は物騒な会話をしていて、名門ホテルのリッツ・パリの名前を挙げます。
美智之輔はバイト後、どうしても気になってリッツ・パリを訪れます。
そこで彼は、『暴れ鮫』に登場するシャーク本郷似の日本人男性に声を掛けられ、ロビーにハルが現れると男性は彼女に近づこうとします。
美智之輔は本能的にハルは彼に追われているのだと察知し、寸前のところで彼女をタクシーに押し込み、ムギの経営するワイン専門店に連れて行くことで難を逃れます。
後日、美智之輔は改めてムギのお店に行き、とりあえずボザールの試験が終わったということで乾杯をかわし、その後、とある場所に案内されます。
ハルの正体
案内されたのは、『idem』というリトグラフ工房で、オーナーのパトリス、アシスタント兼広報のサキと知り合います。
美智之輔は入った瞬間からこの工房を気に入りますが、本当の驚きはここからです。
紹介したい人がいるとしてムギに通された部屋。
そこにはあの暴れ鮫の原稿が床に置かれ、机ではハルこと羽生美晴が寝ていました。
彼女の正体を知って以降、美智之輔はお世話係としてidemに通うようになります。
しかし、ハルはなぜか暴れ鮫を書くのをやめていて、その理由を教えてくれません。
追跡
それから日は経ち、美智之輔は見事ボザールに不合格。
このままでは日本に帰国しなければならず、落ち込みます。
するとそこにハルを追いかけていた男性が現れ、彼は神野仁と名乗ります。
彼はなんと『暴れ鮫』の仕掛け人であり、連載から逃げだしたハルを追いかけてパリまで来たのでした。
神野はフランス滞在ビザを渡す代わりにハルの居場所を教えるよう美智之輔に迫りますが、彼は誘惑を振り切って逃げます。
そのことをムギに報告し、idemに行くにも細心の注意を払います。
神野のことはハルの耳にも入り、彼女は執筆をやめた理由を教えてくれます。
彼女の右腕は上腕骨外側上顆炎、別名キーパンチャー病に侵されていて、石をぶら下げたように腕が重くなり、パソコンのキーを打つと激痛が走ります。
掛ける言葉が見つかりませんが、それでも力になりたいと思い、美智之輔は残りの二か月間、アシスタントとしてidemに住み込み、卒業制作としてリトグラフを創ることにします。
企画
idemで刺激的な日々を過ごしている美智之輔のもとに高瀬から電話がかかってきます。
彼はなんと仕事のためにパリに来ていましたが、彼の近くに神野もいることが分かり、神野見つからないように合流します。
事情を聞くと、高瀬の仕事はムギと日本で開催するフランスのアート展の企画の打合せであることが判明。
そこでムギに迎えに来てもらい、神野をまいた上でidemに行きます。
idemの面々を紹介する中で、高瀬はハルのことを『導師』と呼ぶほど筋金入りの暴れ鮫の読者であることが判明します。
高瀬も美智之輔と同様、idemでの仕事に惹かれていると、ハルの一声でidemの展覧会を日本で開催することが決まります。
さらに名だたるアーティストの作品に加えて、完成したら美智之輔の作品も展示してもらえることになりました。
逃走
一週間後、高瀬の帰国の日を迎えますがその前日、美智之輔は出版プロデューサーのアラン・ドロンから声を掛けられます。
彼もまたハルの居場所を知りたがっていて、暴れ鮫の映画化をプロデュースしたいという目的がありました。
元々は神野と交渉し、映画化のために少なくないお金をつぎ込んできましたが、埒が明かないことが分かり、直接本人に交渉する方向にシフトチェンジしたのでした。
しかもハルの居場所を教えれば、美智之輔に労働ビザを発給してドロンのいる会社で雇ってくれるといいます。
美智之輔は答えを保留しますが、あまり時間はありません。
高瀬が帰る当日、ドロンは美智之輔をつけてidemにハルがいることを掴み、建物の前で待ち伏せます。
どうしたものかと考えていると、今度は神野がidemに乗り込んできて、一同は事前に用意していた手順に従って裏口から脱出。
ムギの車で美智之輔、高瀬、ハル、サキは逃げ出し、神野を振り切るように逃走するのでした。
叶わぬ思い
そうして辿り着いたのがドーヴィルという浜辺の町です。
高瀬は帰国を遅らせ、一同は神野たちに追われていることを忘れて束の間のバカンスを楽しみます。
その夜、席を立ったハルがなかなか戻ってこないので美智之輔は様子を見に行き、見つけた彼女から本当の気持ちを聞きます。
ハルは神野に恋をし、彼を喜ばせるために暴れ鮫を書いてきました。
ところがその間に神野は結婚。
ふと、自分が書きたいのは暴れ鮫かと疑問を感じるようになっていました。
ハルはこれまで二十五年間、暴れ鮫しか書いたことがなく、そんな自分を小説家と呼べるだろうかと自嘲しますが、次の作品も書くと美智之輔は彼女を励まします。
彼はアートをする理由を、自由になれるからだと話し、素の自分でいられる素晴らしさをハルに訴えます。
するとハルは、美智之輔が高瀬のことを好きなことを見抜いていて、本当に自由になって彼に思いを伝えることを勧めます。
その後、部屋に戻って気持ちを伝えようとする美智之輔ですが、その前に高瀬はサキのことが好きになったとまさかの発言をかまし、美智之輔は彼の幸せを願い、その背中を後押しします。
高瀬はそのままサキのところに向かい、翌朝、二人が結ばれたことが分かります。
美智之輔は覚悟をしていましたがその光景に耐えられず、一人逃げ出して帰ろうとします。
するとハルが追いかけてきて、二人はタクシーに乗って一足先にパリに戻ります。
彼女はいいます、君をひとりになんかしないと。
電車に乗ると美智之輔は堪え切れずに涙を流し、ハルは彼に肩を貸します。
そして、もし小説を書けるようになったら、美智之輔のためにパリを舞台にしたごく普通の恋の物語を書くことを約束するのでした。
決断
それから数日経ち、高瀬は帰国、ハルは決着をつけるために一人で神野に会いに行きます。
一同はハルが戻ってくるのか心配していますが、美智之輔は彼女が戻ってくると信じていました。
ハルはidemの日本での展覧会のカタログに掲載するための短い掌編小説を書きおろしてくれることを約束したし、彼女は言ったことは必ず実現してきた人だからです。
そこにドロンから美智之輔に連絡が入ります。
彼は美智之輔が彼の会社に入社できることになったので、オファーを受けてくれるかといいますが、美智之輔は事情が飲み込めません。
聞くと、ハルは神野とちゃんと話し合い、暴れ鮫の映像化を許可する代わりに、美智之輔をドロンの会社で雇い、『日仏文化交流プロジェクト』のために働いてもらうよう交換条件を出していたのです。
美智之輔はたまらずハルの居場所を聞くと、神野と一緒に帰国するために空港にいるといいます。
居ても立っても居られず電話を切ると、今度は神野から電話がかかってきます。
ハルの居場所を聞こうとしますが、実はハルが空港から姿を消し、神野もまた彼女を捜していました。
美智之輔はあてもなくハルを捜し、思い付きでドーヴィルを訪れタクシーを拾います。
すると以前も乗ったことのあるタクシーで、運転手はちょっと前にハルを数日前に行った浜辺に連れて行ったところでした。
美智之輔も慌てて向かうと、そこにハルはいました。
ハルは日本に帰って、もう一度小説を書くためにみんなに何も言わずにいなくなるつもりでした。
しかし、結局逃げてしまいました。
ハルはその理由を言おうとしますが、美智之輔はその先を遮ります。
彼女はそんな美智之輔になんでそんなに一生懸命なの?と問い、美智之輔はハルのことが好きだと思いを告げます。
そのままキスをしようとしますが、勢い余っておでこをぶつけてしまいます。
二人は涙声で笑い、もう一度ちゃんとキスをし、確かに結ばれたのでした。
結末
それから月日は流れ、idemの展覧会は無事に開催されます。
タイトルは『君が叫んだその場所こそがほんとの世界の真ん中なのだ』という長いもので、ハルがつけました。
美智之輔は制作のために日本には行かず、またあれ以来、ハルとも会っていませんでした。
しかし、もう不安になったりしません。
美智之輔は自分のするべきことのために集中するつもりでしたが、ふと聞き覚えのある音が聞こえ、おそるおそる三階の部屋を訪れます。
開けるとそこにはハルがいて、彼女は小説を書いていました。
それはハルと美智之輔をモチーフにしたパリで繰り広げられるラブコメディで、タイトルは『ロマンシエ』というのでした。
おわりに
本編の後にはハルが展覧会のために書き下ろした小説が掲載され、さらに後の解説で作中に出てくる展覧会は実際に開催されたことが明かされます。
僕は残念ながら参加しておらず、画像でその作品を眺めるだけでしたが、それでも原田マハという小説家の持つ魅力にまたしてもやられてしまいました。
彼女の作品を楽しむのもよし、そこに登場する街並みや美術作品に見とれるのもよし、人それぞれの楽しみ方ができるまさに名作でした。
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