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『六番目の小夜子』あらすじとネタバレ感想!サヨコ伝説に隠された真実とは?

harutoautumn
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とある地方の高校に伝わる奇妙なゲーム。三年に一度、学園祭で行われるそのゲームは、学校の運命を占えると言われていた。ゲームは一人の生徒によって行われる。その生徒は「サヨコ」と呼ばれ、十数年間、秘密裡に受け継がれていた。「六番目のサヨコ」の年、一人の転校生がやってくる。名前は津村沙世子。それは不慮の事故死を遂げた「二番目のサヨコ」と同じ名前だった。

「BOOK」データベースより

恩田陸さんのデビュー作である本書。

荒削りな部分があることは確かですが、すでにこの時点で恩田さんの魅力が凝縮されていて、作品に吸い込まれるような没入感を味わうことができます。

サヨコに関する謎が常に不安感と緊張感を生み、綾辻行人さんの『Another』を読んでいた時の感覚を思い出しました。

記事作成後に確認をしたところ、Anotherの文庫本あとがきで本書の影響を受けたと書かれていました。

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本書に関する恩田さんへのインタビューはこちら。

恩田陸|特別インタビュー デビュー前後の思い出

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

サヨコ伝説

物語の舞台となる高校では、『サヨコ』という伝説が受け継がれていました。

伝説はやがて伝統となり、その内容は以下の通り。

  • サヨコは次のサヨコを指名する
  • サヨコの正体は自身と、指名した前のサヨコしか知らない
  • 引き継がれるのは卒業式で、卒業生から在校生に役目と鍵が引き継がれる
  • サヨコが表舞台に現れるのは三年に一度で、間の二年は鍵を渡すだけのサヨコが選ばれる
  • 次のサヨコは四月の始業式の朝、自分の教室に赤い花を活ける
  • 一年の間で、誰にも正体を知られずに校庭の桜の木の下にある石碑に『私が今年のサヨコです』と書くと勝ち。学校として良いことがある

本書はこの要素がなければ単なる青春小説ですが、この要素が下敷きにあることでホラーと化します。

発端

サヨコ伝説は物語から十五年近く前に始まりました。

当時、学園祭で『小夜子』という少女による一人芝居が行われ、その時に舞台上の教卓の上に真っ赤なバラの花が花瓶に活けられていました。

このバラの花が、伝統の一部として引き継がれています。

またその年の大学合格率は非常に優秀でした。

二つに何の関連もありませんが、生徒たちはまたサヨコが現れるのを望み、三年後に同じ内容の芝居をやろうという企画が挙がります。

小夜子役は四月に転校してきた女子生徒に決まりますが、その芝居が上演されることはありませんでした。

その転入生は車による事故で亡くなってしまったからです。

さらにその年の大学合格率は史上最悪を記録し、サヨコというものが伝説のように扱われる結果となります。

それからサヨコが引き継がれるようになり、三年に一度、表舞台に姿を現します。

本書では『六番目の小夜子』の番となります。

歴代のサヨコ

あらすじに入る前に、歴代のサヨコについて整理します。

  • 小夜子:一人芝居を演じた、伝説の発端
  • 転入生:小夜子役を演じることなく交通事故で死亡
  • 関根秋の兄:現在のサヨコのルールを作った
  • 気の強い女子生徒:サヨコ役を迷惑に感じ、生徒総会でやめるべきだと訴えた
  • ???:赤い花を活けるだけで何もせず、『無言のサヨコ』と呼ばれる
  • ???:本書におけるサヨコ

六番目は物語序盤に明かされますが、ここではあえて記載しません。

ぜひ本書を読んで確かめてみてください。

二人のサヨコ

ここまでのサヨコ伝説を踏まえた簡単なあらすじです。

この年の四月、花宮雅子や唐沢由紀夫、関根秋のいる三年十組のクラスに赤い花が活けられていて、六番目のサヨコが始まります。

ところが異変はいきなり起こります。

十組に津村沙世子という美少女が転校してきますが、偶然なのか同じ『サヨコ』です。

沙世子は美しい見た目だけでなくコミュニケーション能力に長けていて、あっという間に学校中に受け入れられ、雅子たちとも行動を共にするようになります。

一方で転入初日からまるで学校を知っているかのような行動に出たり、サヨコ伝説に関与していることを示唆するような言動、行動をとったりします。

沙世子を一番警戒したのは秋で、彼の兄は三番目のサヨコ、姉は鍵を渡すだけのサヨコとして伝説に関与していました。

秋はサヨコ伝説や沙世子について独自に調査します。

瑞々しい青春物語が繰り広げられる裏では、サヨコ伝説が新しい不安や恐怖を生み出していました。

感想

途絶えることのない謎

本書の最大の魅力はサヨコの謎、正体にあります。

生徒が入れ替わっても絶えず受け継がれ、きっちり三年に一度現れる。

生徒たちはそれを期待していて、若さゆえの怖いもの見たさを感じました。

恩田さんの作品全般に言えることですが、白黒はっきりつくことはあまりありません。

ある程度真実が明らかになっても、残りは読者の考え次第でどうとでも解釈できる余地を残しています。

本書もそのパターンで、サヨコの謎について人によって様々な捉え方ができます。

事実をはっきりさせたい人には消化不良感が残るかもしれませんが、この余地があることでサヨコの謎に対する魅力がより深まるようできています。

学生たちの瑞々しさ

サヨコの部分を除いたとして、雅子や由紀夫といった登場人物の学生たちがとにかく活き活きとしていたのが印象的でした。

目の前のことに一喜一憂で、大人からしたら大したことのないものでも、彼らにとって死活問題だということがこれでもかと描かれています。

これは誰もがかつて持っていた瑞々しさで、それを見事に描き切ることのできる恩田さんはさすがです。

満足のいく青春を過ごした人にとっては懐かしいものになるだろうし、悔いの残った人にとっては本書がその隙間を埋めてくれる存在となりえるかもしれません。

細部は多少甘い

デビュー作ということもあり、設定や構成に甘さが目立ちます。

サヨコ伝説は曖昧さがあった方がより謎めいて見えるので良いとして、学生同士のノリがライトノベルで見かけるようなちょっと真顔になってしまうもので、恩田さんにもこんな時代があったのかと意外でした。

ただこの部分はこれもご愛嬌、くらいで十分流せます。

それ以外の魅力がとにかく輝いているので、甘い部分には目を瞑って楽しむのが一番のポイントです。

番外編がある

恩田さんの『図書館の海』では、本書の番外編を描いた短編『図書館の海』が収録されています。

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そこではちょっとだけ登場した秋の姉・夏が主人公を担っていますので、本書を読んだ後はぜひ挑戦してみてください。

小粒ですが本書の世界観が広がり、より楽しむことができます。

おわりに

学校という特殊な空間だからこそ成立する伝説。

その設定をうまく活かした物語は瑞々しく、怖く、とにかくキラキラしています。

恩田さんの魅力がすでにふんだんに盛り込まれているので、ぜひ読んでみてください。

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