『パレートの誤算』あらすじとネタバレ感想!殺人と生活保護を結び付けるものとは?
ベテランケースワーカーの山川が殺された。新人職員の牧野聡美は彼のあとを継ぎ、生活保護受給世帯を訪問し支援を行うことに。仕事熱心で人望も厚い山川だったが、訪問先のアパートが燃え、焼け跡から撲殺死体で発見されていた。聡美は、受給者を訪ねるうちに山川がヤクザと不適切な関係を持っていた可能性に気付くが…。生活保護の闇に迫る、渾身の社会派ミステリー!
「BOOK」データベースより
柚月さんの社会派ミステリに外れはなく、本書もその一冊です。
生活保護というと、マスコミの偏った報道によって楽して税金もらって悠々自適に暮らしているという認識を持っている人もいると思いますが、そうでない部分についても本書では描かれています。
ミステリとしての面白さだけでなく、改めて社会の仕組みを考える上でも勉強になりました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルの意味について。
パレートとは人名で、パレートという経済学者が発見した統計モデルを『パレートの法則』といいます。
ある分野における全体の八割は、約二割の要素が生み出しているという理論で、所得全体の八割は二割の高所得者が占めると聞くとピンとくる人もいるのではないでしょうか。
パレートはそれ以上言及していませんが、中にはこの理論を勝手に解釈して、残り八割の要素は影響を与えないだとか、不必要だと考える人もいます。
そんな解釈をされることは、パレートにとって誤算だという意味でこのタイトルがつけられました。
もちろんこの話には先があって、それは結末に書かれているので、その目しかと見届けてほしいと思います。
あらすじ
ケースワーカーの死
牧野聡美が津川市役所の社会福祉課に配属され、少しずつ仕事に慣れてきた頃のこと。
福祉課には生活保護受給者の家庭訪問をするケースワーカーという仕事があり、聡美と同じタイミングでこの部署に異動してきた小野寺と聡美もこの仕事に従事することになりました。
自分に務まるのだろうかと不安になる聡美ですが、先輩の山川に励まされ、小野寺と共に少しずつケースワーカーとしての経験を積みます。
そんな中、生活保護受給者の住むアパートが火事になり、そこを訪問していた山川が死体となって発見されます。
事故かと思われましたが、山川には他殺の跡があり、警察が捜査に乗り出します。
不正受給の影
山川は高級腕時計をいくつも所持していましたが、市役所の職員の給料では考えにくいことでした。
また焼けたアパートには聡美の兄の同級生だった金田という男が住んでいましたが、いまだ連絡がついていません。
金田は暴力団と関係を持っていることが度々目撃されていて、何度も訪問している山川が知らないはずはありません。
ところが、山川はその事実を記録せず、隠していました。
山川は、暴力団に協力して生活保護の不正受給に手を貸し、お金を受け取っていたのかもしれない。
信頼していた先輩の思わぬ姿にショックを受ける聡美ですが、まだ真実かどうかは分かりません。
そこで聡美と小野寺は警察とは別に独自で調査を始め、生活保護にまつわる隠されていた真実に辿り着くのでした。
感想
生活保護の実態が分かる
僕は生活保護について、社会人になってからその言葉が連日報道され、一般市民の間でも認知されるようになったイメージを持っています。
しかもテレビで報道される受給者は真面目に職を探すつもりがなかったり、贅沢を望めない立場にも関わらず贅沢を当たり前に享受しそれに文句を言ったりと、ひどく偏っているなと疑問を抱いていました。
この辺りのことは作中で小野寺が言及していますが、もちろんそんな人ばかりではなく、自立して生活するために努力をしている人もたくさんいます。
本書はそんな当たり前のことを改めて教えてくれ、そういった人を支えるために生活保護があるのだとその意義を提示してくれました。
近年、揚げ足取りのようにネガティブな側面ばかりが注目されがちなので、この考え方はすごく前向きだし、それであれば税金を投入することも意味があると理解を得やすいと感じました。
ミステリとしては及第点
一方で、ミステリの謎解き要素という観点からいえば、及第点程度かなと思います。
例えば『孤狼の血』のように膨大な暴力団、関係者が関与する事件ではないので、事件に至るまでの経緯を推理するのはそう難しくはありません。
ミスリードを誘う箇所がいくつかありますが、これもミスリードと分かるような書き方をしているので、難問を解きたいという人にはちょっと物足りないかもしれません。
個人的には山川の実態について、物語の都合とはいえ少し無理のある描写だった気がします。
ただ、生活保護のことを考える上でこの事件は必要不可欠なものなので、あくまでミステリは一要素だと割り切ればとても楽しめると思います。
おわり
柚月さんの小説は直視しがたい現状にしっかりフォーカスして、その責任を負うだけの覚悟をいつも見せてくれます。
僕は柚月さんという信頼できる小説家が書いた作品だからこそこの問題を受け取ることが出来たので、ミステリにとどまらないこの作品に本当に感謝しています。
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