『のぞきめ』あらすじとネタバレ感想!二つの怪異譚が驚きの真実を映し出す
辺鄙な貸別荘地を訪れた成留たち。謎の巡礼母娘に導かれるように彼らは禁じられた廃村に紛れ込み、恐るべき怪異に見舞われる。民俗学者・四十澤が昭和初期に残したノートから、そこは“弔い村”の異名をもち“のぞきめ”という憑き物の伝承が残る、呪われた村だったことが明らかとなる。作家の「僕」が知った2つの怪異譚。その衝撃の関連と真相とは!?何かに覗かれている―そんな気がする時は、必ず一旦本書を閉じてください。
「BOOK」データベースより
僕の元に集まった二つの怪異譚。
蒐集した時期こそ違うものの、そこに関連があるようで気になる。
調べていくうちに『のぞきめ』という憑き物が関係していることが分かり、やがて僕は真実にたどり着きます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
謎の化け物
作家の僕は知人の紹介でライターの南雲桂喜と知り合います。
南雲から何か面白いことが聞けないかと考えていると、彼の口から四十澤想一(あいざわそういち)という民俗研究家の名前があがります。
四十澤の著作の中で、『のぞきね』という化け物の伝承が書かれていて、そこから派生した『のぞきめ』という存在があることが明かされています。
その後、四十澤はこの化け物について記載しておらず、結局どんな存在なのか分からないのだといいます。
ノート
南雲はのぞきめを調べ、あまり多くの収穫を得ることはできませんでしたが、手元に四十澤が記録した、未発表の大学ノートを持っているのだといいます。
僕に売りつけることを明らかに目的としていました。
南雲を知っている人間は、仕事は素晴らしいが何かに憑かれていると思われていて、油断ならない相手であることが分かります。
しかも南雲はそのノートを四十澤に無断で持ち出していたことも判明し、僕の彼に対する不信感はますます募ります。
それでものぞきめが気になる僕は調べてみますが、ほとんど何も分からず、この件からは手を引こうとしていました。
しかし、南雲と会ってから二週間後、彼から例のノートが送られてきます。
その真意は分からず、僕は四十澤にノートを返して、それで終わるはずでした。
ところが五年後、四十澤が亡くなり、彼の遺言に基づき、ノートが再び僕の手元にかえってくるのでした。
共通点
僕はノートを読んで驚きます。
四十澤が学生時代に訪れた村が、別の人物から蒐集した怪異譚に登場する廃村の、五十年以上前の姿だったからです。
のぞきめは二つの怪異譚に共通することなのか。
のぞきめとはどんな存在なのか。
僕は二つの怪異譚を改めてよく読み、そこに共通する事実、今まで隠されていた真実に気が付きます。
感想
導入で魅了される
本書は『のぞきめ』というタイトルの通り、誰かがこちらを覗いている、そんな恐怖を味わうホラーです。
その魅力については後述しますが、その話に入るまでの導入がまず素晴らしいです。
僕は南雲からのぞきめについて教えてもらうわけですが、彼はその話を餌に僕をカモにしようとしているのが明らかで、人として不快感があります。
しかもノートの入手方法が明らかになると負の感情は増すばかり。
僕もそう感じて南雲から離れるわけですが、もちろん、物語がそれで終わるわけがありません。
あの何かに憑かれたような南雲が大事なネタを手放し、僕がそれを一度手放しても、また戻ってきてしまったのです。
この運命的な出会いは、どんなことを僕にもたらすのか。
読者の期待値を上げるのに、これ以上ない導入でした。
浮かび上がる真実
そこから二つの怪異譚が語られるわけですが、単体でも十分面白いです。
廃村で明らかに何かをつれてきてしまった学生たち。
その村で過去に起きた、今に伝わる呪いの連鎖。
どうリンクするのか、予想することはそう難しくありません。
しかし、予想ができてもドキドキするし、予想通りの真実がそこにあったとしても想像以上に怖い。
これは良質なホラーの確たる証拠ではないでしょうか。
おわりに
怖いは怖いけれども、ホラーが苦手な人が読んでも後悔しない程度にはマイルドです。
一方で、ホラー好きを満足させることにも成功していて、このバランス感覚はさすが三津田さんだという感じでした。
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