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『ののはな通信』あらすじとネタバレ感想!女性二人の濃密な関係が往復書簡によって描かれる

harutoautumn
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横浜で、ミッション系のお壌様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。不器用にはじまった、密やかな恋。けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ…。運命の恋を経て、少女たちは大人になる。女子の生き方を描いた傑作小説。女子校で出会い、運命の恋を得た少女たちの20年超を、全編書簡形式で紡いだ、女子大河小説の最高峰。

「BOOK」データベースより

野々原茜(のの)と牧田はなの間での手紙、メールのやりとり。

だから『ののはな通信』。

単純明快なタイトルで、内容もはじめは少女二人の友情を超えた恋の話ですが、中盤以降、もっと複雑で何にも例えられない二人だけの関係に発展していきます。

序盤でこんな感じか、と油断していたので、途中からは気持ちを一気にもっていかれてしまいました。

本書に関する三浦しをんさんへのインタビューはこちら。

【刊行記念インタビュー】三浦しをん『ののはな通信』 横浜の女子高に通い互いに友達以上の気持ちを抱くふたりは、運命の恋を経て大人になってゆく。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

ののとはな

ミッション系のお嬢様学校に通うののとはな。

家庭環境も性格もまるで違う二人ですが、誰よりも仲が良く、学校以外でも手紙を通じてやりとりをしています。

学校でのこと。家のこと。自分のこと。

学校で話せばよい内容も多分に含まれていますが、手紙という媒体を通じて二人だけの秘密のやりとりというエッセンスが加わり、特別なものになっています。

手紙を書くということはそれだけ書く・送る労力がかかるものですが、それでも相手に伝えたくて仕方がない。

そんな思いがひしひし伝わる内容で、二人がお互いにとってかけがえのない存在であることがうかがえます。

始まる恋

ある時、ののははなに打ち明けます。

自分がはなに対して抱いている感情が単なる友情を超えていて、恋であることを。

ののはそれが受け入れられるとは思っていませんでしたが、実ははなも同じ思いを抱いていて、二人は交際を始めることになります。

誰にもいえず、それでいて女性同士の恋愛がよく分からない二人。

手探りで関係を深めていくことになりますが、そのゆっくりとした交際関係の中で、二人はお互いへの気持ちを深めていき、幸せを堪能します。

崩壊、そして

しかし、そんな日々は長く続きませんでした。

とあるののの裏切りによって二人の関係に亀裂が入り、はなから別れを切り出します。

もう自分は死んでしまったのだと。

ののはそれを受け入れたわけではないけれど、もう今までの関係に戻れないことは分かっていたので、離れていくはなを見送るしかありませんでした。

こうして物語の序盤で二人の関係は破局をむかえますが、大学生以降になっても二人の手紙によるやりとりは続きます。

それは立場を変え、のののとはなの関係はより複雑で深くなり、誰にも理解できない二人だけの関係へと変化していきます。

感想

濃密な交流

本書は基本的にののとはなの交流が手紙、あるいはメールを通じて描かれます。

二人の交流さえも直接の描写はないため、それぞれの主観が通常の小説以上に入り込んでいます。

これがとにかく良い味を出しています。

学校で散々会っているにも関わらず、別れてすぐに話したくなるほどの仲良し。

それが手紙を通じてひしひし伝わってくるのですが、他愛のないやりとりの一つ一つに二人の気持ちがこもっていて、これ以上ないほど濃密な交流になっています。

中盤以降は必見

ただ正直にいうと、最初の調子で最後まで続いていたら、途中で飽きてしまうだろうと思っていました。

だから中盤に入る頃に調子が変わり、はじめに抱いた印象とは全く違う方向に物語が進み出したので、良い意味で驚かされました。

特に二人が四十代になってからの関係は必見で、五〇〇ページというそれなりのボリュームをまったく感じさせないほどテンポ良く読むことができました。

年齢や立場によって変わるもの。

それでも、一度交流を再開してしまえば、あの頃のように戻れる関係や距離感。

このさじ加減が絶妙で、手紙やメールだけの単純なやりとりにも全く飽きがきませんでした。

これから読むという人は、まず二〇〇ページ頃までを読んでください。

それ以降は一気に引き込まれると思うので、あとは身を任せてしまえばもう大丈夫です。

あとは楽しむだけです。

おわりに

序盤の瑞々しく甘い関係だけではない作品で、読み始めた頃の期待を遥かに超えてくれた作品でした。

三浦しをんさんの描くキャラクターは本当に魅力的で、彼らのやりとりはいつまでも見ていたくなるほど素敵でした。

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