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『ラストレター』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

「君にまだずっと恋してるって言ったら信じますか?」亡くなった姉の未咲の代わりに同窓会に出た裕里は、初恋相手の鏡史郎と再会し、姉のふりをして文通を始める。手紙は姉妹の娘たちをも巻き込み、二つの世代の時間を動かし始めた―不朽の名作『ラヴレター』から24年の時を経て贈られる、岩井美学の到達点。

【「BOOK」データベースより】

本書は松たか子さん、広瀬すずさん、庵野秀明さん、森七菜さん、神木隆之介さん、福山雅治さんら出演で映画化され、2020年1月17日全国ロードショーが決まっています。

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個人的には広瀬すずさんの一人二役がどう作品に影響してくるのかが気になるのと、庵野早くエヴァ映画にしろよと思いました。

小説には関係ないのでこれくらいにします。

内容については正直、ヒロインである未咲がなぜ自殺したのかが分からず、不完全燃焼感は否めません。

彼女の死を周囲の人たちがそれぞれの形で受け止めている姿が感動的だったゆえに、ちょっともったいないかなと個人的に思いました。

しかし、それを含めても本書はぜひ読んでほしい一冊です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

あらすじ

本書は様々な人から話を聞いた主人公・乙坂鏡史郎が今は亡き想い人・遠野未咲に宛てた最後のラブレターという形式で書かれています。

しかしプロローグの後には小説と書かれているので、小説家である鏡史郎が未咲に宛てた小説=本書『ラストレター』と捉えて良いと思います

自殺

はじめに未咲が自殺するまでの経緯が描かれます。

鏡史郎は未咲と付き合っていた期間もありましたが、別の男に取られて未咲はその男と結婚。

高校三年生の長女・鮎美と小学五年生の長男・瑛斗に恵まれますが、二年前に実家である仲多賀井家に戻り、ずっと精神が不安定な状態が続きました。

そして、二人の子どもを残して自殺してしまったのでした。

未咲の妹・裕里の娘で中学三年生の颯香は鮎美のことが心配になり、夏休みの間は仲多賀井家に残ることになり、代わりに瑛斗が裕里と夫の宗二郎がいる岸辺野家でお世話になります。

それぞれが普段通りに暮らしているように見えましたが、その胸中には秘められた思いがありました。

同窓会

鏡史郎の元に中学校の同窓会の案内が届き、未咲に会えるのではと鏡史郎は参加を決めます。

彼はこの時点で未咲の死を知りません。

未咲の言葉がきっかけで小説家になった鏡史郎ですが、会場に未咲がいたら小説家をやめよう。

そんな気持ちで会場に行くと、そこには未咲の妹・裕里の姿がありました。

しかも周囲の友人たちは裕里のことを未咲と呼びます。

訳が分からない鏡史郎ですが、その時、会場に当時十五歳だった未咲が卒業式で読んだ答辞が流れます。

その言葉を考えたのが鏡史郎でした。

涙が堪えられなくなり会場を後にすると、裕里が後を追ってきて話かけます。

中学時代、鏡史郎は未咲に恋をし、裕里は鏡史郎に恋をしていました。

裕里はあくまで未咲として接してくるので、鏡史郎も知らないふりをしてメールアドレスを交換し、その日は別れます。

鏡史郎は思い切って『僕にとって君は永遠の人です』と送り、裕里の反応を待ちますが、なぜか返信はありませんでした。

手紙

しばらくして、未咲からの手紙が鏡史郎のもとに届きます。

もちろん裕里が書いたものです。

そこには鏡史郎のあのメールを裕里の夫・宗二郎に見られてしまい、激怒した宗二郎によってスマホを壊されてしまったことが書かれていました。

裕里の手元にスマホはなく、仕方なく手紙で返事を書いたということです。

裕里からの一方的な手紙は続き、鏡史郎のメールのせいで家庭崩壊を起こしつつあることに鏡史郎は申し訳ないと思いつつも、文面に滲み出る裕里の素の部分が面白かったりもします。

裕里

こちらは裕里の視点から見た話。

裕里は未咲の死を伝えるために同窓会に参加しましたが、鏡史郎が途中で出ていってしまったため後を追います。

しかし、結局本当のことがいえませんでした。

その後、鏡史郎からのメールを見た宗二郎は、裕里が鏡史郎と会うために同窓会に行ったのだと決めつけ、怒りに任せて彼女のスマホを破壊してしまいますが、仕打ちはそれだけにとどまりません。

里親を探しているという二匹のボルゾイという大型の犬を勝手に引き取り、裕里に世話を任せます。

さらに宗二郎は母親の昭子を自宅に呼び、そのまましばらく住むことになりました。

裕里は日に日にストレスが溜まっていき、スマホのない彼女にとって鏡史郎への手紙だけが唯一のストレス発散の場でした。

その後、ボルとゾイと名付けられた犬のうち、ゾイの方を仲多賀井家に預かってもらうことになり、少しだけ負担が軽減します。

密会

ある日、昭子がいなくなってしまい、裕里はボルとともに探しに行きます。

すると遊歩道のベンチに座る昭子を見つけますが、隣には同年代のおじいさんもいました。

昭子は波止場正三というその男性の家にも行きますが、目的は裕里には分かりません。

事情を聞けずにいると、昭子は椎間板ヘルニアで自分では歩けなくなってしまい、波止場への手紙を裕里にお願いするようになりました。

それまで事態を静観していた鏡史郎ですが、裕里宛ての手紙を未咲に託すことを思いつきます。

かつて、恋する未咲への手紙を裕里にお願いして渡していたことがあり、それとは逆になります。

鏡史郎は裕里宛ての手紙を未咲の実家に送りますが、それを受け取って読んだのは実家に泊まっていた颯香と鮎美でした。

鏡史郎は裕里にだけ分かるような文章を書いていたため、二人には手紙の本当の意図が理解できません。

しかし二人は面白がり、未咲のふりをして手紙を書きます。

こうして鏡史郎のもとには、未咲のふりをした裕里、そして颯香と鮎美からの二通の手紙が届くようになるのでした。

老人

波止場からの返信がなく、不安になった裕里は彼の家を訪ねます。

すると波止場は腕を骨折し、手紙が書けなかったことが判明します。

二人は大学の英語の教師と教え子という関係で、手紙は昭子による英語の回答で、裕里は波止場に変わって手紙の添削をすることになりました。

やがて裕里は波止場の家に新たな居場所を見つけ、この住所から手紙を出すようになります。

ここなら宗二郎に鏡史郎からの手紙を見られる心配はありません。

小説家

鏡史郎はデビュー作『未咲』という小説で世間をそれなりに賑わせますが、いまだに未咲の幻影から抜け出せず、次の作品が書けずにいました。

『未咲』には、鏡史郎と彼女にあったことが書かれていて、鏡史郎は同窓会から始まった一連の出来事を小説にしようと決心。

事実を確かめるために、未咲や裕里たちの住む仙台に向かいます。

帰りたくない

夏休みの間にまるで双子のような友情を育む鮎美と颯香ですが、ある日、颯香がこのままここに残りたいと言い出します。

鮎美のことが心配だと言いますが、鮎美は颯香がいじめられているのではと心配します。

しかし、このことを裕里に伝えて話を大きくしてしまうのもよくないため、とりあえず自分の胸の内に秘めます。

再会

鏡史郎が向かったのは手紙に書かれていた波止場の家で、出迎えてくれたのは裕里でした。

慌てる裕里に対して、鏡史郎ははじめから気が付いていたことを伝え、この時はじめて未咲が亡くなったことを打ち明けられます。

未咲はひどいうつ病で、自殺したのだといいます。

突然のことに受け入れらない鏡史郎ですが、大学時代、未咲と付き合っていたことを明かします。

しかし、未咲は阿藤陽市という男に取られ、未咲は阿藤と駆け落ちして結婚したのでした。

生前、未咲や鮎美は阿藤から暴力を受けていて、あんな男に人生をめちゃくちゃにされたことに裕里は悔しさを滲ませます。

鏡史郎が結婚してくれていればと。

それでも、未咲のふりをして手紙を書くことで、まだ未咲が生きているのではと思うこともできました。

鏡史郎は『未咲』を裕里に手渡すと、未咲のためにもこれまでのことを小説にすることを改めて決意するのでした。

トラウマ

未咲がかつて住んでいた家に向かうと、そこには阿藤と同居するサカエという女性がいました。

サカエに連絡をとってもらい、外で鏡史郎は二十年ぶりに阿藤と会います。

阿藤は何者かになりたいと願い、他の人とは明らかに違う未咲を奪うことで何者かになろうとし、未咲や子どもたちとの生活に耐えられなくなり自分から家を飛び出したのでした。

鏡史郎は『未咲』に描かれなかった部分の話を知ります。

その後、サカエに頼まれ、鏡史郎は阿藤が持っていた『未咲』にサインをするのでした。

成長

裕里が家に戻ると、瑛斗がいなくなってしまったと昭子がいいます。

それまでの瑛斗と昭子との会話の内容から考えて、思いつめていることは確かでした。

瑛斗は時々、神社に行ってこっくりさんを使って未咲と話していたことが分かり、宗二郎や警察も交えて捜索。

すると、ある神社で保護されました。

瑛斗はどこにも未咲はいないと口にする中、裕里は自分、そして瑛斗の中にいるといいます。

その瞬間、瑛斗は泣き出します。

平気そうに見えても、未咲を失ってその悲しみをどう吐き出していいのか分からなかったのです。

裕里と宗二郎は鮎美や瑛斗を引き取ることを考えますが、瑛斗は祖父母が寂しがると断ります。

悲しみを乗り越えて少し成長し、代わりにボルも引き取るのでした。

運命

鏡史郎が未咲との思い出のある中学校に行きますが、すでに廃墟になっていました。

しかし、そこで思いがけない出会いを果たします。

ゾイの散歩をしていた鮎美と颯香がいたのです。

すぐに未咲と裕里にそっくりだと気が付いて鏡史郎から声を掛けると、鮎美たちも卒業アルバムを見ていたのですぐに鏡史郎だと気が付きます。

ここで鏡史郎は彼女たちが未咲のふりをして手紙を書いていたことをはじめて知ります。

その後、未咲の実家に寄り、二十四年の歳月を経て未咲と対面します。

そこには未咲の気配が残っていて、それこそが鏡史郎の描きたいものでした。

鮎美は『未咲』を読んだことがあって、鏡史郎はサインします。

家には鏡史郎が未咲に送った小説の元となる手紙が残されていました。

鮎美はいつか鏡史郎が未咲を迎えにきてくれると信じていました。

もっと早く来てくれれば良かったけれど、それでも鏡史郎が来た意味がありました。

鏡史郎はそれまでのことを思い出し、人生とはなんという奇遇の連続で成り立っているのだろうと思い、涙を流すのでした。

結末

鏡史郎は裕里に小説家を続けることを報告。

裕里に頼まれ、彼女の『未咲』にもサインします。

鏡史郎は『未咲』に三度出会い、三度サインしたことに奇跡のようなものを感じていました。

 

それから颯香が残るといった理由について、好きな人ができたことが関係していたことが判明します。

夏休みが終わって会った時に絶対に顔が真っ赤になると思い、帰りたくなかったのでした。

それぞれが未咲の死を乗り越えて成長する中、鮎美は未咲の遺言の内容を教えてくれます。

それは、鏡史郎が考えて未咲が読み上げたあの答辞でした。

それが何を意味するのかは分かりませんが、そこには未来への希望に満ち溢れた言葉が綴られていました。

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おわりに

人物として、小説として常に物語の中心には未咲がありました。

そして、それぞれが彼女の死を受け止め、乗り越えるまでが丁寧に描かれていて、自然と感情移入していました。

『未咲』という小説が読みたいような、他の男に奪われるのが辛そうで読みたくないような、そんな気分です。