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『こうして誰もいなくなった』あらすじとネタバレ感想!有栖川有栖の魅力が詰まった作品集

harutoautumn
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あの名作『そして誰もいなくなった』を再解釈し、大胆かつ驚きに満ちたミステリに仕上げた表題作をはじめ、ラジオドラマ脚本として描かれ、小説としては世に出ていない掌編や、自殺志願者の恐怖と悔恨を描く傑作ホラー「劇的な幕切れ」、書店店長の名推理が痛快な日常ミステリ「本と謎の日々」など、一作たりとも読み逃せない名作揃い。有栖川有栖作家デビュー30周年記念を飾る、華麗なる傑作作品集!!

「BOOK」データベースより

本書は中編となる表題作をはじめとして、長さもジャンルもバラバラの十四の物語が収録されています。

本格ミステリがあればホラーあり、ファンタジーありと非常に多彩で、本当に飽きがきませんでした。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

館の一夜

主人公である黒田の三十年前の回想を描いた作品。

彼は同じ研究室の星野美佳子とともに民俗学のフィールドワークのために出かけ、帰りの山道で道に迷ってしまいます。

地図を信じて車を走らせると、そこには山中には不似合いな洋館が建っていました。

線路の国のアリス

主人公はアリスといいますが、日本人です。

彼女は兄の鉄男とともに川べりにいましたが、退屈で仕方ありません。

その時、長い耳を立てた白いウサギが現れます。

ウサギは言葉を話し、急いでどこかに向かっているようでした。

アリスは俄然興味がわいてウサギを追いかけますが、これが思いがけない冒険の始まりとなります。

名探偵Q氏のオフ

若き名探偵のQ氏は難事件をいくつも解決してきましたが、それはあくまで対外的な顔で、違った一面も持っていました。

そんなQ氏ですが、彼には解決しなければならない事件がありました。

まぶしい名前

派遣の仕事を切られ、困窮している俺。

彼の単なる苦労話かと思いきや、終盤になってタイトルの意味が分かる驚きの結末が待っています。

妖術師

町はずれの公園で、妖術師の登場するサーカスが幕を開けます。

面白いですが特段珍しい内容ではなく、ここまで人気を集める理由が分かりません。

しかし、最後の演目になって観客の期待するものの正体が明らかになります。

怪獣の夢

わたしは子供の頃からよく怪獣の夢を見ていて、どれも記憶に鮮明に残っていました。

それぞれの夢が描かれるとともに、わたしの現在が明らかになります。

劇的な幕切れ

内村は紫藤美礼と出会います。

二人の知り合ったきっかけは自殺志願者が集うサイトで、二人は一緒に自殺する計画を立てていました。

決行日になると二人は山に向かって最後の時を待ちますが、そこで予想外の出来事が起こります。

出口を探して

私は気が付くと見知らぬ部屋にいて、外に出るとそこは迷路でした。

出口を探して歩くと、途中で同じ境遇の男性と出会います。

二人は協力して出口を目指すことにしますがなかなか見つからず、やがて意外な展開を迎えます。

未来人F

少年探偵団シリーズのパロディ作品。

警察に捕まっていた怪人二十面相が再び脱走しますが、彼を唯一捕まえらえる明智小五郎はアメリカで別の仕事についていて、しばらく戻ってこられません。

そんな時、ラジオに『未来人F』と名乗る謎の人物が現れ、予言を見事に的中させてみせます。

彼は次に国立博物館に盗みに入ることを予告。

警察は厳重な警備体制を敷きますが、そこで思わぬ事実が発覚します。

盗まれた恋文

三ページのショートストーリー。

国民的女優の恋文をめぐった問題について描かれています。

本と謎の日々

書店で働く詩織の周りでは、日々説明のつかない些細な謎が起こります。

それを鮮やかに推理してくれるのは、店長の浅井でした。

この物語では、いくつもの謎が起きて解かれる様子が描かれています。

謎のアナウンス

僕は空港で見知らぬ男性と出会い、時間つぶしで彼の出す問題に挑戦します。

男性はスーパーの店内放送で迷子がいるというアナウンスを聞きますが、同じ系列の別の店舗に行っても同様の店内放送が流れて不思議に思います。

この店内放送は何を意味するのか。

僕は少しずつ推理し、やがて真実に辿り着きます。

八百文字のみで構成された話。

本書の中で最も異色な作品といえます。

こうして誰もいなくなった

表題作である中編。

七人の男女は『デンスケ』なる大富豪から招待されて伊勢湾に浮かぶ島を訪れますが、彼らをもてなすために雇われた夫妻がいるだけで、肝心のデンスケがいません。

不思議に思いながらも夕食をとっていると、突然コンピューターで合成された音声が流れ、デンスケを名乗ります。

デンスケは招待された全員が極悪人であることを告げ、それは雇われた夫妻も同様でした。

島に集めた目的は彼ら九人の抹殺で、手始めに一人が毒によって殺害されます。

まだ到着していませんが島にはもう一人招待されていて、この状況はまるでアガサ・クリスティーの名作ミステリ『そして誰もいなくなった』でした。

残された八人は警戒を強めますが、一人また一人と死亡者が出て、どんどん絶望に突き落とされていきます。

感想

有栖川さんが苦手な人にもオススメ

僕は学生アリスシリーズで有栖川有栖さんの作品をはじめて読みましたが、どうにも合わず二、三冊でやめてしまいました。

しかし一方で、自分にも合う作品があるのではとなんとなく思っていたところ、本書と出会いました。

表題作はどう見ても『そして誰もいなくなった』に影響されていて、ミステリ好きであれば気にならないわけがありません。

意を決して読み始めると、驚きの連続でした。

表題作は期待通りとして、既存の枠にとらわれない発想の物語がこれでもかと詰め込まれ、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズのパロディ作なんかも収録されています。

とにかく新鮮で、有栖川さんの作品にいずれまた挑戦してみたいという気持ちにさせてくれました。

個人的なオススメ

人それぞれ好みがあると思いますが、僕は『未来人F』、『本と謎の日々』が特にオススメです。

前者は上述の通り、少年探偵団シリーズのパロディで、文章までよく似ています。

僕は小学生時代に『怪人二十面相』と出会って本の素晴らしさを知ったので、強い思い入れもあって懐かしい気持ちで楽しめました。

後者はとある書店で起きる小さな謎の数々を巡る物語で、日常生活でもありそうな謎だけについ読みふけってしまいました。

着眼点次第で、日常もミステリになりえると教えてくれた作品です。

正直、全ての作品が好みだということは稀だと思うので、一、二作品でもあなたにとって好みの作品が見つかれば幸いです。

おわりに

タイトルに惹かれて手にとったものの、まさかそれ以外の作品でここまで満足できるとは思っていませんでした。

ありそうでなかった作品。

そんな言葉がぴったりです。

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