『これは経費で落ちません!8』あらすじとネタバレ感想!合併吸収後も苦労が絶えない第八弾
トナカイ化粧品を吸収合併した天天コーポレーションだが、経理部に増員はなかった。おかげで沙名子たち経理部員は連日残業続き。社内も合併に伴う人事異動や業務整理で、どこかぎくしゃくしている。落ち着かない社内の空気とは裏腹に、大阪営業所へ転勤となった太陽からはしょっちゅう電話もかかってきて、遠距離恋愛になっても沙名子たちの関係は安定していた。ところが天天コーポレーションのイベントを取材に来た記者が、太陽の元カノだったことを知った沙名子の心はざわつき始め……?
Amazon商品ページより
シリーズ第八弾となる本書。
前の話はこちら。
二つの会社を吸収合併した天天コーポレーションですが、合併前の会社からの社員の配属にともない様々な問題が発生します。
沙名子はかすかな違和感に気が付いてしまう優秀さゆえに今回も振り回され、恋愛面では太陽と東京-大阪間の遠距離恋愛によって起こる問題に悩まされます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
第一話 ごちゃごちゃ言わず、売って売って売りきれよ!
円城格馬が父親に代わって社長に就任し、『トナカイ化粧品』と『篠崎温泉ブルースパ』を吸収合併して新たなスタートを切った天天コーポレーションですが、本当に大変なのはこれからです。
三社の人間が一つの会社に集約されることでやり方、価値観に齟齬が生まれ、解決するには時間がかかります。
加えて天天コーポレーション内でも社長の派閥とそうでない派閥で見えない攻防が繰り広げられていました。
沙名子の所属する経理部としては仕事に支障がなければ何の問題もありませんが、そうはいきません。
吸収合併した二社から人員を補充してほしいところですが、配属には当然ながら各部門長間での見えない争いがあり、欲しいからといって人員が補充されるわけではありません。
吸収合併による業務増加により沙名子たちは残業を強いられ、疲労が積み重なっていくという話。
第二話 なしくずしに宿泊所代わりにされてたまるか!
太陽が大阪営業所に異動になったことで遠距離恋愛を強いられる沙名子ですが、幸いにして関係はうまくいっていました。
そんな時、沙名子はとある問題に気が付いてしまいます。
それは、もともとトナカイ化粧品の総務課長を務めていて、今は静岡にある工場の製造部に所属する槙野の出張に違和感があることでした。
槙野の家族は東京に住んでいるため、よほど関係が悪くなければ金曜の東京出張で土日は自宅に泊まり、月曜に働いて帰ってくるはずです。
ところが槙野はわざわざ金曜と月曜に日帰り出張をしていました。
沙名子は槙野が真面目であることを知っている一方で、槙野は社会人として様々なルールの抜け穴を知っているため日帰り出張には何らかの不正が隠されている可能性もあります。
沙名子は静観を決めますが、やがてこの不自然な出張の意味を知ります。
第三話 過去の決断の正しさを証明します!
天天コーポレーションではキャンペーンが組まれ、太陽は東京に出張することになります。
沙名子にとって太陽と久しぶりに会えるチャンスであり、嬉しくないわけがありません。
ところが、これを素直に喜べない事情がありました。
実は太陽はキャンペーンについて取材を受けていて、その記者がなんと元カノだったのです。
誠実な太陽はそのことをそれとなく沙名子に伝えますが、見事に機嫌を損ねてしまいます。
そして迎えた東京でのキャンペーンで、太陽の元カノである六花がブースに現れ、微妙な三角関係に発展します。
第四話 それは経験と能力の差です!
経理部に待望の人員が補充されます。
その人はトナカイ化粧品で総務部にいた岸涼平で、能力は決して低くなく、真夕と同じ年ということもあって経理部に次第に馴染んでいきます。
そんな中、沙名子が気になっていたのは総務部の玉村志保でした。
以前は人事部にいたため総務部の仕事に慣れておらず、ミスをしても人に聞けない一面がある。
さらに人の秘密を知ると優越感に浸る一面もあり、何か問題を起こしそうな雰囲気を醸し出しています。
そして、それは現実になりました。
発端は沙名子がとある社員の給与計算に違和感を抱いたことですが、調べていくうちに思わぬ事態に出くわします。
感想
会社員としての苦労
これまでも本シリーズでは、会社員としての苦労が沙名子を通じて描かれています。
大人になるまで気が付きませんでしたが、当たり前のように会社に行って働いて暮らすことはとても大変なことで、当たり前に出来ることではありません。
そして、価値観の違う会社が合わさり、違った環境で育った人間が一堂に会せば問題が起きます。
本書ではいつにも増して会社員としての苦労が描かれ、沙名子のルーティンがいかに乱されているのかがよく分かりました。
有能ゆえの弊害
上記の苦労について、沙名子以外であればそこまで問題にならなかったかもしれません。
しかし、彼女は勘が鋭いというか、わずかな違和感からでも問題をくみ取れてしまうほど有能です。
そのせいで今回も見逃せない状況を自分で作り出してしまい、似合わないセリフを吐かないといけない羽目になります。
経理部は少しずつ人員が補充され、一人一人の能力も上がってきています。
この調子でいけば沙名子の負担も減りそうですが、もちろん物語の性質上、そんなことはまずないでしょう。
こういった苦労を背負うのも、沙名子がそういった星の元に生まれたのだろうと、最近は思っています。
恋は順調
本書より、東京ー大阪の遠距離恋愛になった沙名子と太陽ですが、今のところは順調です。
はじめこそお互いのスケジュールが合わずに疲れもありましたが、少しずつ二人ならではの距離感が見つかり、ゆっくりと関係を深めています。
太陽の元カノが現れたことで一時不穏な空気にもなりましたが、こちらは大事にならず一安心です。
仕事関係がまだまだギスギスしている分、沙名子と太陽のパートは安心感があって、物語がシリアスになりすぎないようバランスをうまくとってくれています。
おわりに
気付けばもう八冊目になりますが、飽きることも落ち着くこともなく、相変わらず面白いお仕事小説でした。
まだまだ結末に向かう様子はないので、今しばらく沙名子や彼女を取り巻く人たちが織りなす物語を楽しみたいと思います。
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