『金色機械』あらすじとネタバレ感想!江戸時代にSF、ファンタジーが溶け込む異色作
触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。
「BOOK」データベースより
第67回日本推理作家協会賞受賞作である本書。
恒川光太郎さんの作品といえばこの世とあの世の狭間のような幻想的な作品、あるいは得体の知れない恐怖を描いた作品をイメージする人も多いと思います。
本書も上述した特徴に合致する部分がありますが、それだけではありません。
タイトルにある『金色機械』という存在が加わることでエンタメ性が増し、殺伐とした中にもユーモアがあったり、感傷に浸れる余裕を生み出したりしています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
不思議な女性
江戸時代の話。
舞柳と呼ばれる大遊郭があり、創業者の熊悟朗は殺意を読む能力に長けていました。
相手が殺意の持つ場合、それは火花として、殺意が大きくなると黒い霧として表れるので、その心眼を駆使して何度も窮地を脱してきました。
ある日、熊悟朗のもとに遥香と名乗る女性が遊女として働きたいと現れます。
しかし、遥香はどう見ても遊女の顔をしておらず、熊悟朗には嘘や隠し事の火花が見えていました。
つまり、雇ってほしいとは別の理由でここに来たことになります。
熊悟朗はさらに遥香に質問を重なると、彼女は遊女希望ではなく熊悟朗と話したいがためにここに来たことを打ち明け、自分のこれまでの話を始めます。
とある力
遥香は生まれて間のなく両親を失い、医師である祖野新道とその手伝いの初枝に拾われました。
遥香が自身の能力に気が付いたのはまだ幼い頃のことで、その手で生き物に触れることで命を奪うことが出来ました。
祖野はその力を使うことを禁じ、誰にも言わないことを約束させますが、やがて自分の力では手の施しようない患者にだけその力を使うことを許し、いつしか遥香は菩薩の手と呼ばれるようになります。
しかし、遥香は十六歳の時、自分の命を守るために祖野の言いつけを破って力を使ってしまい、人を殺めてしまいます。
遥香はこの家にいる資格はないと飛び出し、自分の生きる意味について悩んだその時、金色様の話を思い出します。
金色様はその名の通り、金色にぴかぴか光っていて、どうしても頼みたいことや願いごとがある時、滝の脇を登って会いに行くと何やら説教するのだといいます。
遥香は滝の脇を登ると、そこにいたのは金色に輝く具足(鎧)のような存在でした。
それこそが金色様で、なんと人の言葉を話すことが出来ました。
遥香は驚きながらもこれまでの経緯を話し、金色様から本当の父親の居所や母親を殺害した人物の正体を聞きます。
こうしてこの物語に金色様が登場し、彼を中心に様々な年代、視点の話が入り乱れ、少しずつ一つの物語として収束していきます。
感想
これまでと一味違う
はじめ、本書は単なる時代小説かと思いました。
ところが金色様なるにわかには信じがたい存在が現れるとその認識は一変し、SFのような雰囲気が漂い始めます。
その時代にあるはずがないのに、明らかに機械あるいはアンドロイドであるような挙動、性質で、タイトルに偽りがないことがこの時点で証明されます。
またトータルで考えるとファンタジーという趣も強く、今までありそうでなかった恒川さんの作品だということが分かります。
本書の主題について人間の善悪だと書いてある紹介が多く、もちろんそれもあります。
江戸時代という飢饉や争いなど生命が今よりもずっと危険に晒されている状況において、ただ人を殺めた=悪と決めつけるわけにはいきません。
しかし、その中にも単なる気まぐれ、悪意のこもった余計な殺生も含まれているわけで、この辺りは作中の登場人物たちによって何度も善悪が問われます。
この辺りはこれまでの恒川作品に通ずるところがあります。
一方で、やはり金色様という謎の存在がどうしても強烈で、神様のように全知全能に見えてどこかズレているなど愛嬌もあります。
最初は不気味なのに、だんだんと可愛く見えてくるんですよね。
この金色様がどこからやってきて、どこに辿り着くのか。
それを見届けることもまた本書の楽しみの一つで、僕はどちらかというとこちらの方をより楽しみました。
ちょっとしたドラえもん
本書を未読の人に分かりやすく伝えるとするならば、『ちょっとしたドラえもん』というフレーズが思い浮かびました。
まずタイトルですが、ドラえもん同様、金色機械とそのままのネーミングです。
そして、この金色機械(金色様)がいればどんな状況においても勝利することができ、それは秘密道具を駆使して悪いやつらをやっつけるドラえもんと重なるものがありました。
どちらも機械ですしね。
まあ、おそらくこのフレーズを聞いてピンとくる人の方が少ないと思うので、なんのこっちゃと思いながら本書を読んでもらえればと思います。
おわりに
この世とあの世の狭間を描くようなスタイルはこれまでの作品と共通していますが、民話的な話という点も似ています。
その一方で、金色様という機械、あるいはアンドロイドが江戸時代に溶け込んでいる様子は冷静に考えると面白く、よりエンタメ性に長けている印象を受けました。
すでに恒川さんの作品を読んだことがあるという人のイメージすら覆すほどの新たな魅力と面白さに溢れた作品なので、ぜひ色々な人に手にとってほしいと思います。
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