『カメリ』あらすじとネタバレ感想!人が消えた世界で模造亀が紡ぐ物語
楽しいって、なんだろう?世界からヒトが消えた世界のカフェで、模造亀のカメリは思う。朝と夕方、仕事の行き帰りにカフェを訪れる客、ヒトデナシたちに喜んでほしいから、今日もカメリは石頭のマスターとヌートリアンのアンと共にカフェで働き、ささやかな奇跡を起こす。心温まるすこし不思議な物語。
Amazon内容紹介より
愛聴しているポッドキャスト『ハードボイルド読書探偵局』でオススメされていて、ついに購入しました。
ヒトが消えた世界で、模造亀のカメリをはじめとしたキャラクターたちがヒトの形跡を見付けてはそれを模倣するのですが、これがなかなか面白いです。
それを模倣することにフォーカスがあたり、そもそも再現する目的って何?という無粋なツッコミを入れたくなるところですが、カメリたちは至極真面目で、それが可愛く、心が温まります。
一方で無性に切なくなる時もあって、はじめての読書体験でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
カメリ、リボンをもらう
カメリの紹介するような話。
螺旋街の西のはずれにある古いアパルトマンに住む二足歩行型の模造亀(レプリカメ)で、以前はカメリとは呼ばれていませんでした。
そこから彼女がどのようにしてカメリというアイデンティティを獲得したのかが語られます。
カメリ、行列に並ぶ
カメリはテレビで色々なケーキを見ると、幸せな気分になります。
自分でケーキを作りたいと思っていて、そのためにはまず自分がテレビの中に出てくる、行列のできるケーキ屋のケーキを買って食べてみる必要があります。
カメリはケーキ屋を探すことにしました。
カメリ、ハワイ旅行を当てる
カフェに訪れるヒトデナシたちから、商店街で福引きをしていることを教えてもらったカメリ。
何でもハワイ旅行が当たるのだといいます。
ヒトデナシたちが集めた抽選補助券をくれて、カメリとヌートリアンのアンは福引きをすることになりました。
カメリ、エスカルゴを作る
テレビで、家庭でも作れるエスカルゴ料理が紹介されていました。
カフェのマスターはエスカルゴのことを知っていて、昔はこの辺りにたくさんいたのだといいます。
一方で、何者かが残した粘液が見つかっていて、マスターは巨大なエスカルゴ・エスカルゴンの仕業ではないかと疑っていました。
カメリ、テレビに出る
カフェではいつもテレビがついていて、カフェの店員もやって来るヒトデナシたちも楽しみにしていました。
ところがある日を境に、『しばらくおまちください』の文字を映すばかりで、いつもの番組やドラマが放送されません。
重苦しい空気が漂う中、カメリはテレビ局にこのことを伝えるべく行動を開始しました。
カメリ、子守りをする
カメリがカフェに出勤すると、カウンターの上に見慣れないものがいました。
描写からして、ヒトの赤ちゃんのように思われます。
赤ちゃんはなぜかマスターの写真を持っていて、カフェは騒然とします。
カメリ、掘り出し物を探す
ヒトデナシたちはとある事情からカフェにしばらく来れないことが判明したある日。
カメリたちは今できることをしようとなり、カメリとアンは新しいメニューとしてカヌレを作ることを決めます。
そのためには型が必要で、二人はノミの市に行くことにしました。
カメリ、メトロで迷う
カメリが作ったカヌレの評判は上々です。
しかし、ヒトデナシたちはそもそもカヌレというものを知らなくて、カメリも詳しいわけではありません。
そこでマントルの丘で焼き菓子の店を探すことにしました。
カメリ、山があるから登る
ある日、カメリが出勤するとそこにカフェはなく、代わりに山がありました。
アンも出勤してきて、同様に驚きます。
マスターは昨夜の様子からずっとカフェにいたと思われ、二人は山を登ってカフェに向かいます。
カメリ、海辺でバカンス
カフェの常連のヒトデナシたちが、しばらく海に行くことになりました。
なんでも堤防を突破され、海と陸の境界が消えて、すべて海になってしまったのだといいます。
そこでカフェの面々も海でバカンスをすることに決めました。
カメリ、ツリーに飾られる
大川のあたりで、クリスマスが膨らみかけているという話がでます。
もともといつもその一帯はクリスマス前でしたが、今回は今夜あたりにイブになるのではないかと予想されています。
この世界に、クリスマスの本番がやってくるのでした。
感想
不思議な世界
本書ではヒトが消え、彼らが残したものが作中の世界ということになっています。
ヒトはテレビの中にいるとされていますが、もちろんそんなことはなく、おそらく長い時間が経過して、ヒトは滅んでしまったのではと思っています。
これだけ見ると悲しくて切ないのですが、今の世界で暮しているカメリたちは元気そのもの。
人工的に作られているため、ヒトではありません。
しかし、そこには幸せなどの感情があり、ヒトよりシンプルな生き方をしている分、とてもヒトらしいと感じました。
そんな彼らが世界を修復・維持しながら暮らしていて、その様子を描いたのが本書です。
いわゆる終末ものに分類されるのかもしれませんが、受ける印象としてはほのぼの日常系で、読んでいる間はとてもゆったりとした時間が流れました。
あえてひらがなが多用されていて、文章もテンポが良い。
とても心地が良い読書でした。
愛おしさ
本書を読んでいると、カメリたちキャラクターがもう愛おしくてたまりません。
特にカメリ。
彼女はいたって真面目で、何かしたいことができると、それに向けてひたむきに頑張ります。
ヒトの文明を何か再現するたびにマスターやアン、ヒトデナシたちはカメリを褒めてくれて、なんて良い世界なんだろうと、いつもニヤニヤしてしまいます。
ヒトがいないことで、こうあってほしいという理想の世界が生まれているところが皮肉ですが、それもまた面白い。
キャラクターたちの掛け合いは定型のようでいつも似通っていますが、それがまた落ち着きます。
またかではなく、いつものアレという感じで、何度見ても心地良いのです。
おわりに
北野勇作さんの作品ははじめてでしたが、すぐに虜になってしまいました。
著作リストを見ても似たようなテイスト、動物もの、SFものがあり、どこかで挑戦してみたいと思います。
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