『十字屋敷のピエロ』あらすじとネタバレ感想!人形目線での情報も加わる新たなミステリ
ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心してぼくの前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば…しかもドンデン返しがあって真犯人がいる。前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。
「BOOK」データベースより
東野圭吾さんの作品である本書。
殺人現場にはピエロの人形があり、人形視点で得られる情報が描かれることで、読者は作中の人物たちが得られない情報も加えて推理をすることができます。
しかし、その情報にはしっかりと仕掛けがあり、最後まで気を抜くことはできません。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
四十九日
竹宮頼子はある日、自分の住む十字屋敷のバルコニーから飛び降りて自殺します。
その日から四十九日を迎え、竹宮家の面々が十字屋敷に集まります。
頼子の妹・琴絵の娘である水穂もその一人でした。
一同が再会を喜ぶ中、突然、人形師が屋敷を訪れます。
不幸のピエロ
屋敷を訪れたのは、悟浄という人形師でした。
彼の目的は、頼子が二か月前に購入したピエロの人形です。
その人形は悲劇のピエロと言われていて、手に入れた人を必ず不幸にしているのだといいます。
偶然にも頼子はその通りになったわけですが、竹宮家の面々はそんなことを簡単に信じられるわけがありません。
悟浄に売るにも、現在の所有者である頼子の夫・宗彦の許可が必要であり、彼はちょうど不在でした。
そこで悟浄は一度屋敷を後にします。
不幸、再び
翌日、屋敷に悲鳴が響き渡ります。
なんと宗彦と、彼の秘書・三田理恵子が何者かによって殺害されていたのです。
おまけに現場には例のピエロの人形。
悟浄の言っていたことが脳裏に浮かび上がります。
誰が、何の理由で二人を殺害したのか。
読者は水穂の視点で得られる情報に加え、ピエロの視点で得られる情報をもとに推理をすることになります。
感想
新感覚なミステリ
舞台設定としては、古き良きミステリという感じです。
屋敷という、外部犯の可能性が除外された環境。
親族やそれに関係する人たちが集まり、それぞれの思惑が渦巻いている。
これだけでも心惹かれるものがありますが、本書ではそこにピエロの人形という要素が追加されています。
それによってミステリとして新たな面白さが加わり、本書に新感覚ミステリという側面を与えています。
ピエロの情報がどう推理に影響するのか。
ミステリ好きであれば本書の仕掛けに気が付きやすいかもしれませんが、それを加味しても東野さんの初期作品ならではの雰囲気があり、なかなか好みでした。
のめり込めなかった
良い面がある一方で、僕の中でのめり込めなかったポイントがいくつかあります。
例えば、登場人物の関係。
親族で集まっているので人間関係が複雑になっていて、名前と関係を覚えるのにかなり時間がかかりました。
覚えて馴染む頃には解決編が始まっていて、推理を純粋に楽しめなかったところがあります。
それから物語性。
ミステリとして面白いものの、物語として強烈に惹きつける何かに欠けていて、真実が明かされてもこんなものか、とどこかさめている自分がいました。
ミステリに物語性を求めることはある意味間違っているのかもしれませんが、今回読んだタイミングでは僕が求めているミステリとは違っているなという印象でした。
おわりに
古き良きミステリに、ピエロの人形という新たな仕掛け。
東野さんの初期作品ならではの魅力が詰まっている作品なので、未読の方はぜひ挑戦してみてください。
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