『インシテミル』原作小説のあらすじとネタバレ感想!ミステリファンこそ最大限楽しめるミステリ
「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。
「BOOK」データベースより
2010年に映画化され、米澤穂信さんの作品の中でも特に知名度の高い本書。
米澤作品の中ではかなり異色なミステリで、命の危険を感じながらのヒリヒリした推理を楽しむことが出来ます。
ミステリ好きであればたまらない仕掛けがいくつも施されていて、楽しみ方がいくつもあるのがおすすめポイントです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルの意味について。
『インシテミル』とは漢字で『淫してみる』と書き、『度を過ごして物事に熱中する』という意味を持ちます。
本書の解説でも書かれていますが、伝統的な本格謎解きミステリに淫してみる反面、そういった構成を途中であえて崩して突き放したりと、米澤さんらしい試みが感じられるタイトルになっています。
あらすじ
高額バイト
雑誌の隅に、誤字を疑うような超高額なバイトの求人が掲載されていました。
その額、なんと時給十一万二千円。
七日間拘束され、二十四時間モニタリングされるなど制限はありますが、それを差し引いてもあり得ない好待遇なバイトです。
文面からも怪しい、危険な雰囲気は感じられましたが、物語の視点となる大学生・結城理久彦をはじめとした十二人がこのバイトに申し込むのでした。
疑心暗鬼
十二人が連れてこられたのは『暗鬼館』と呼ばれる閉ざされた地下の施設。
そこでは謎の依頼主による実験が企画されていました。
依頼主が求めるものは人間の純化された行動。
もっといえば参加者同士の殺し合いでした。
参加者それぞれに殺人に用いることが出来るアイテムが配られ、その気になれば殺人を犯すこともできます。
殺人を犯すことによって報酬は跳ね上がり、逆に探偵役となった参加者が犯人を突き止めても報酬が跳ね上がる、など金銭的な誘惑もあります。
もちろん、通常であれば何もせずとも大金を得られるため、誰もそんな言葉にそそのかされるはずがありません。
しかし、一つの死体が発見されたことをきっかけに、参加者たちは館の名前通り『疑心暗鬼』になり、普段では決してあり得ない異常行動に出るのでした。
それぞれの思惑
実験期間の七日間で、どんどん死体が増え、犯人が絞られていきます。
結城をはじめ、各自が犯人が誰かと推理し、刻一刻と状況は変化していきます。
疑心暗鬼に陥る中で、冷静な推理は出来るのか。
物語が進むにつれて、閉ざされた空間で起きたこと、実験の持つ意味が次第に明かされます。
感想
慣れてからが本番
序盤はとにかく設定を飲み込むのに時間がかかります。
登場人物は十二人と多いので、個性を把握するのも一苦労ですし、実験のルールも手が込んでいるのですぐには頭に入りません。
しかし、それは作中の人物にもいえることで、彼らと同じスピードで状況を理解していく過程は一体感があり、本書をより身近に感じることができました。
読み終えてから思ったことですが、実験のルールなどを自分でもメモしておくと、推理が捗ってより楽しめると思います。
ただ読んで楽しいというよりも、より能動的に楽しむことに向いた作品ではないでしょうか。
ミステリ好きにはたまらない仕掛け
ミステリを読み慣れている方であれば、馴染みのある設定や言葉がいくつも登場します。
ノックスの十戒。
『そして誰もいなくなった』に登場した十二体のネイティブアメリカンの人形。
これはあくまで一例であり、ミステリ好きであればあるほど序盤でこの実験の置かれた状況、意味が読み取れると思います。
しかし、それだけで物語を知ったつもりになったとしたら、それは大間違いでした。
本書はそこから読者の予想を覆す展開を見せ、淫する読者を突き放します。
ミステリが好きだとより楽しめるけれど、それで本書がつまらなくなることはないのでご安心ください。
結末の盛り上がりがもう一つ
中盤以降、緊迫感に欠ける展開になりながらも推理が一気に進み、モヤモヤが解消されていくのは爽快でした。
このまま終われば良作だ。
そんな風に思っていましたが、結末については消化不良で物足りなさを感じました。
詳細は書きませんが、どうしてこの実験に参加したのか。
どうして大金が必要だったのか。
そのあたりが明示されず、また推測する材料にも欠けています。
登場人物にそこまで愛着がわかなかったせいか推測してもそこまで面白みはなく、その点は残念でした。
登場人物の一貫性
僕が本書で一番疑問に感じたのは、登場人物の一貫性についてです。
極限に追い込まれれば誰だって本性が出るし、普段では絶対にしないような行動に出ます。
それは分かるのですが、それでも本当に同じ人?と思うくらいに性格や言動が変わる人物がいたので、いまいちのめり込めませんでした。
特に結城。
別人ではと思うくらいに最初と最後でキャラが違っていますし、彼の目線で描かれているので、いちいち違和感を抱いてしまう自分がうっとおしかったです。
物語の仕掛け的には面白いものがあったので、欲をいえば没入感がもっと欲しかったです。
おわりに
後半は批判的なことも書きましたが、ミステリを突き詰めた作品としてとても意欲を感じましたし、ハッとさせられる仕掛けもたくさんありました。
僕自身、ミステリの勉強不足で出典元を知らないことも多かったので、勉強した上で再読すると、新しい発見がありそうで楽しみです。
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