『忌み児の町』あらすじとネタバレ感想!町に正体不明の何かが蔓延していく
豊かな森林に覆われていた北部をニュータウンとして開発し、真新しい一軒家が立ち並びはじめた葦根町。見たところ平穏そのものの地方都市ではしかし、密やかな異変が進行しつつあった。昼なのにカーテンを閉め切った家々、うつろな笑みを浮かべる玄関先の隣人、キッチンに撒き散らされた食肉の空きパック──「最近この町は、何かがおかしい」。少数派の住民たちの心中をかすめた疑いの念が確信となるとき、日常世界は地獄へと一変する。実力派作家が驚愕の趣向を凝らした、不穏と戦慄のホラー・エンターテインメント。創元推理文庫オリジナル。
Amazon内容紹介より
街が何者かによって侵略されていく様子を描いた本書。
はじめは違和感程度ですが、違和感が確信に変わると物語は一気に加速して、焦るそばから街が変容していく様子は手に汗握りました。
本書に関する阿泉来堂さんへのインタビューはこちら。
“可愛い怪物”に操られる人たち 阿泉来堂さんの侵略ホラー「忌み児の町」インタビュー
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
欠席
高校生の霧山誠一はクラスメイトの上村結美に誘われ、遠藤沙織の家に行くことになります。
彼女は三日間、学校を休んでいて、結美とは同じバレー部員でした。
二人が訪問すると沙織が迎えてくれますが、まるで別人のような様子で、忙しいという理由で早々に二人を追い返してしまいます。
沙織は『レン』という名前を口にしますが、彼女の飼っていた犬のレンは今年の春に亡くなっていて、今待たせていることなんてあり得ません。
二人は違和感を抱きつつも、その場を後にします。
違和感
久我努は刑事として職務に邁進する一方で、家族をどうしても犠牲にしている面があり、娘の楓との関係は決して良好ではありませんでした。
また妻の里子とも離婚していて、楓も里子についていってしまったため、会えるのは数える程度。
久我はまたしても事件を理由に楓との約束を破ってしまいますが、事件を放っておくわけにはいきません。
事件が落ち着いた後、久我は里子に電話しますが、彼女は出ません。
なんて事のないはずですが、何か違和感があり、久我は里子と楓が住むアパートに向かいます。
あの子
アパートに着くと里子はいましたが、どうも様子がおかしい。
吐く息は耐え難いほどの異臭がして、久我と一緒に暮らしていた頃から考えるとあり得ません。
おまけに楓は数日前から家に帰っておらず、ただ事ではないことが分かります。
久我が家にあがろうとすると里子は狂ったように抵抗し、やがて気を失ってしまいます。
救急車を呼ぶことになりますが、里子もまた『あの子』と口にしていて、何者かの影が見え隠れしていました。
感想
見えない侵略者
前半はスローペースで、決定的な何かがあるわけではないものの、何か嫌な予感がする。
そんな印象を与えることが視点を変えて次々に起こります。
本書は四人の登場人物たちが上記の違和感を覚え、それをきっかけに集うため、四人の嫌な予感が高まるようひたすら丁寧に、ねちっこく描かれています。
個人的には久我パートが終わり、七海パートに入ったタイミングでやや辟易した感じがしましたが、これをこらえることで爆発的な楽しさが待っているという期待も持てたので、ぐっとこらえることができました。
結果として、主役どころが合流して、侵略者に立ち向かうという方針に落ち着くまで全体の半分を贅沢に使っていますが、その甲斐があった内容になっています。
怒涛の後半
四人が合流してからが本書の本領発揮です。
持っている情報を共有し、全体像を把握する。
そこから状況を推測し、それをもとにそれぞれの強みを活かして侵略者に立ち向かう。
ここから異形とのサスペンスホラーとして面白さがぐっと前に出てきて、読者の緊張感も合わせて高まります。
状況が分かっても、解決策がどこにあるのかはさらに進まないと分からないため、読者は四人と同じく、手探りで前に進むことになり、この不安感もまた良かったです。
全体としてはもう一つ
全体を通して、面白い要素が数多くありつつも、もう一つという印象でした。
三三四ページというのは小説としてそこそこな文量ですが、それに対して動き出すまでのパートがやや冗長で、動き出してからも焦らした期待を回収しきれなかった印象です。
また着地地点もおおむね予想通りで、意外性や驚きがそこまでなかったことも原因になっているのかもしれません。
そのため読み方として、これまでも世にあったスモールタウンの侵略ものを踏襲したものとして読むのが良いかもしれません。
期待は適度に。
これが鍵のような気がします。
おわりに
表紙、タイトルだけでも不気味ですが、本編はさらにそれが煮詰められていて、生理的な嫌悪感を誘う描写は巧みでした。
あらすじで好奇心をくすぐられたのであれば、読んでまずは損はないと思いますので、ぜひ挑戦してみてください。
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