『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
「ヒキタさんの子どもの顔が見てみたい」三五歳の妻が、何気なく言ったひと言で、四五歳の作家は子どもを作る決心をした。排卵日を割り出すタイミング法を取り入れたが、一年あまり結果が出なかった。検査を受けると、精子の運動率が悪いと診断され…。そこから長い長い「懐妊トレーニング」の日々が始まった!男性から見た不妊治療を綴ったドキュメント。
「BOOK」データベースより
松重豊さん、北川景子さん主演で映画化されて話題になった本書。
『不妊治療』という言葉は今でこそ当たり前のように聞くようになり、『男性不妊』なんて言葉も決して珍しいものではありません。
しかし、本書の筆者・ヒキタさんが実際に不妊治療に取り組んだ十年ほど前は、今ほど認知度が高くなく、差別的な扱いを受けることも多かったと思います。
子どもが欲しいけれど、できない。不妊治療が辛い。
そんな現実を、男性側の目線から本書は描いています。
お子さんのいる家庭、これから子どもを考えたいと思っている人にはとても突き刺さり、そして心の拠り所になってくれる作品だと思います。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじの前に
内容に入る前に、不妊治療について僕の思うこと、本書を読んで感じたことを書きたいと思います。
内容が気になるという方は、次の章よりお読みください。
僕は仕事の関係で不妊治療について調べ、実際にクリニックを訪れたこともありますが、僕の想像する辛さを何倍も、もしくは何十倍にもした現実がそこには広がっていました。
まず勘違いがないように言っておくと、不妊治療をしたからといって子どもが出来るという保証はありません。
筆者のヒキタさんは五年弱もの間、奥様と一緒に取り組まれ、無事にお子さんが生まれましたが、そうでない方もいらっしゃいます。
また、五年で出来たからといって、その道は平坦なものではありません。
自分たちの努力ではどうにもならないことがたくさんあり、うまくいかない度に心をすり減らし、行き場のない怒りや悲しみを抱えることになります。
ようやく最近では、不妊治療のための休暇など制度を作った企業もありますが、偏見の目はまだまだ健在です。
身の回りに不妊治療に取り組まれている夫婦がいたら、ぜひ優しく話を聞いてあげてください。
無責任な言葉は、たとえそれが前向きなものであっても相手を傷つけてしまうかもしれませんので、相手の背中を支えてあげるような気持ちで接していただけると幸いです。
我が家も、二人目で不妊治療か? と悩んだ時期もあったので、切実なヒキタ夫妻の気持ちがよく分かりました。
あらすじ
きっかけ
ここからは本書の内容に入っていきます。
二〇〇六年にヒキタ夫妻は子作りをはじめることになりますが、きっかけは奥様が言った『ヒキタさんの子どもの顔が見てみたい』でした。
その言葉でヒキタさんは考え、子作りに挑むわけですが、この時点でヒキタさんは四十五歳、奥様は三十五歳。
決して年齢的に若いわけではなく、ここから約五年に渡って長い不妊治療が始まります。
タイミング法
はじめから病院に行ったわけではなく、最初に試みたのがタイミング法です。
これは女性の排卵日を調べ、その時期に合わせてセックスをするというものです。
おそらく子どもが欲しいと考えた人であれば、知っている人も多いと思います。
ただこれだけのことですが、いざ時期を決めてやると、義務のように感じてしまって特に男性側がその気になれないというケースが出てきます。
ヒキタ夫妻の場合、お互いに言いたいことを言えるような良好な関係にあったため、本書を読む限りでは順調にいったようです。
しかし、子どもができないまま一年が経過。
このままでは難しいと考え、夫婦で相談の上、病院に行くことを決めます。
人工授精
夫婦で検査を受けた結果、ヒキタさんの精子の運動率が二十%しかないことが分かりました。
つまり、二割の精子しか生きていない状態です。
原因として考えられるのが加齢で、夫婦どちらかに原因があっても不妊になってしまうことを突きつけられます。
このままでは自然妊娠は難しく、ヒキタ夫妻は人工授精に臨みます。
簡単にいえば、元気な精子を選び、子宮内に挿入するという治療で費用は当時の金額で一回一万二千円です。
ヒキタさんは不妊治療、そしてそれに関係する言葉のイメージが悪いと言及していて、人工授精もその一つです。
人によっては試験管ベビーかと思う人もいるようで、治療の本質的な部分以外でも課題が多いのだと改めて実感しました。
体外受精
こうして人工授精に臨み、一度は妊娠までこぎつけるも、流産してしまいます。
この時の悲しみは読んでいても痛いほど伝わってきて、特に奥様の心身は共にボロボロだったと思います。
それから二度目の人工授精を行いますが、今度は妊娠に至らず、費用的にも限界が見えてきました。
幸い、奥様のご両親の援助で続けられることになり、次は体外受精に移ります。
体外受精には二種類あり、ヒキタ夫妻は顕微授精に臨みました。
これは男性不妊症の際に行われる治療で、簡単にいうと子宮から取り出した卵子に精子を注入し、受精卵を子宮に戻すというものです。
文字で書くとこの程度に思えてしまいますが、人工授精とは体にかかる負担が段違いです。
主に女性の体の負担です。
卵子を成熟させるために薬を飲み、成熟した卵子を極細の注射針で吸い取る。
字を見ただけで想像を絶する苦しさなのに、これだけしても授精するとは限りません。
ヒキタ夫妻も一回目は失敗しますが、二回目に無事授精しました。
ちなみに費用は一回で四十五万円で、人工授精とは桁が違います。
いかに顕微授精が心身だけでなく、経済的にも負担になるのかが分かります。
命名
無事にご懐妊となりましたが、前回の流産のこともあり、気が気ではありません。
そんな中、四か月目の検診で胎児の頭に空洞があることが分かります。
それは『脈絡叢嚢胞(みゃくらくそうのうほう)』と呼ばれるもので、問題なく消える確率の方が高いと言われています。
その後、五か月目の検診で空洞はなくなり、ヒキタ夫妻は喜びます。
この出来事はかなり衝撃的で、ヒキタさんはお腹の中の子どもの名前をつけることにします。
色々考えた末、夫婦がつけた子どもにつけた名前は『空』でした。
この時点で男の子か女の子かまだ判明していませんが、どちらにも使えるということで決まりました。
名前の由来ですが、青空などの空ではなく、空洞の『空』です。
空洞が現れて夫婦は心配し、でも空洞のおかげで家族になれたのだと、空が大きくなってから話そうとヒキタさんは決めていました。
その後、お腹の子どもが女の子であることが判明します。
結末
そしてついに、ヒキタ夫婦の子どもが生まれました。
体重三二七三グラム、身長五二センチの元気な女の子です。
これで不妊治療は終了となり、その先に待っていたのは幸せな日々でした。
最後には不妊治療に向けた心構えなど書かれていて、実際に治療を乗り越えたヒキタさんだからこそ説得力のある言葉だと思います。
また、この文庫版が発売された時点で、空ちゃんは小学二年生になっていました。
おわりに
あとがきでヒキタさんも書かれていましたが、ヒキタ夫妻が不妊治療を行った時と今では状況が大きく変わっています。
以前ほど、差別的に見られることはなくなりましたが、やはり偏見は残っていますし、高額な医療費は依然課題のままです。
まだまだ簡単に行える治療ではありませんし、必ずその努力が報われるとは限りません。
うちの夫婦は、以前二人で話し合い、二人目が自然妊娠しなければ、不妊治療はしないと決めました。
考え方は人それぞれなので、本書を読んだ上で、自分たち夫婦がどうしたいのかを一番に考えれば良いと思います。
そして、不妊治療というものがもっと正しく認知され、幸せになるご家族が一組でも増えれば幸いです。
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