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フランツ・カフカ『変身』あらすじとネタバレ感想!個人に降りかかる不条理を描いた海外名作

ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか…。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。

「BOOK」データベースより

朝目が覚めると、一人の男が巨大な毒虫に変身してしまっていた。

こんな衝撃的なシーンから始まる本書。

詳しい内容は知らなくても、この導入部分だけでも聞いたことがあるという人は多いではないでしょうか。

僕もその部分だけ知っていた一人で、たまたま気が向いてちゃんと読んでみました。

すると、毒虫に変身した理由などは明かされず、そこがメインでないことに気が付きました。

変身はあくまで状況を作り出すための設定であり、変身したことによって男に対する家族の態度が変化したこと、男の静かな絶望が描かれ、決して後味の良い話ではありませんでした。

とはいえ、百年前の作品とは思えないほど現代でも通じる内容で、現在では青空文庫版が無料で読めますので、一読の価値ありです。

また翻訳によって微妙なニュアンスの違いなどありますので、ぜひレビューなど見ながら自分に合いそうな翻訳版を見つけてもらえればと思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

変身

ある朝、グレゴール・ザムザが目を覚ますと、彼は巨大な毒虫に変わっていました。

グレゴールは旅廻りのセールスマンとして今日もその日も仕事に行かないといけませんでしたが、思うように身動きが取れず、例え動けたとしてもこの姿を公衆の面前に晒せるはずがありません。

一向に起きてこないグレゴールを家族や職場の人間は訝しみ、グレゴールは自分の置かれた状況を説明しようとするも、すでに人の理解できる言葉を話せなくなっていました。

その声は、まるで獣のようでした。

グレゴールに対する家族の態度の変化

毒虫となったグレゴールを家族は恐れますが、唯一、妹のグレーテだけが彼の世話をしてくれました。

とはいっても、そこには嫌悪感が入り混じり、グレゴールはグレーテに気を遣ってなるべく姿を見せないようにします。

グレゴールの食べ物の好みは変わり、腐りかけの野菜やチーズなど中身まで確実に毒虫 に近づきます。

唯一の働き手を失い、ザムザ家の財産状態は決して良いとはいえませんでしたが、それでもすぐにどうこうなるほど貧困ではありませんでした。

グレゴールが部屋に閉じこもって何か月も経過しますが、やがて家族のグレゴールに対する態度は悪化していき、最後には非常な決断を下すのでした。

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感想

変身したことが面白い作品ではない

どうしても毒虫に変身したというインパクトに目を奪われがちですが、本書の伝えたいことはそこではありません。

著者のカフカの意向で、本書の表紙には虫の絵が描かれていないこともからも、『虫』という部分が重要でないことが分かります。

またドイツ語の原文において、グレゴールが変身したものは『Ungeziefer』で、これは有害生物全般を意味します。

作中の描写から虫を連想させますが、明示されているわけではないので、ここは翻訳する人の匙加減一つかなと思います。

救いのない話

では本書には何が描かれているのかというと、個人を襲う不条理が描かれています。

本来、家族は助け合って生きていくものですが、毒虫となったグレゴールはもはや家族とは認められず、まるで本物の毒虫のように嫌われ、ひどい扱いを受けます。

最初こそ家族もグレゴールの扱いに戸惑っていましたが、やがて毒虫として扱うことに躊躇を見せなくなります。

愛し合った家族であれば、どんな姿になったとしても愛し合えるはず。

そんな綺麗ごとを描く作品もありますが、本書はその真逆。

極めて現実的な反応で、どれだけ綺麗ごとを口にしても大半の人はザムザ家の人たちのような振る舞いをするしかないのではないでしょうか。

姿形だけでなく、存在そのものが毒虫に変身してしまったグレゴール。

救いのない話ですが、短いのでネガティブな内容が苦手な人でも意外と読めてしまうと思います。

おわりに

長年、自分が内容を誤解していることがよく分かりました。

普遍的なことが描かれているので、これから読むとしても決して古臭くなることはなく、どの時代においても読んで損はない名作だと思います。