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『平成怪奇小説傑作集3』あらすじとネタバレ感想!平成後期を彩る名作集

harutoautumn
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平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方の太平洋岸を中心に未曾有の被害をもたらした。理不尽な死に見舞われた無辜の人々と、残された者たち―彼岸と此岸、死者と生者の幽暗なあわいに思いを凝らす作家たちの手で、新時代の怪談文芸が澎湃と生み出されてゆく。平成の時代に誕生した極めつきの名作佳品を全三巻に収録する、至高の怪奇小説アンソロジー最終巻。

「BOOK」データベースより

平成を彩った怪奇小説集の最後を飾る本書。

前の話はこちら。

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平成後期ということで現代でも違和感のない文章や、令和という時代への変わり目が作品に影響を与えていたりと、最後にふさわしい一冊となっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

成人【京極夏彦】

私の手元にある二つの作文。

すぐに二つには関連性があることが明示され、作文に関わる奇妙な話が描かれます。

実話とは何か、という問いから始められるところが、本書の幕開けにふさわしい作品になっています。

グレー・グレー【高原英理】

人間社会が崩壊し、死体が生前の様に歩き回る世界。

アキは佐月和花に会いに行くところから物語は始まります。

和花は死んだ後も生前のように動きますが、少しずつ腐敗が進み、アキはそれを少しずつ引き伸ばそうとしていました。

盂蘭盆会【大濱普美子】

夏子・秋子姉妹の話で、物語の視点は秋子です。

彼女たちの人生を描いた物語で、途中までは穏やかで温かみがあります。

しかし、ある部分を境に印象はがらりと変わり、読者に衝撃を与えます。

蛼橋(こおろぎばし)【木内昇】

蛼橋のたもとに、良い薬種屋がある。

佐吉はその話を聞き、母親の目の病に効く薬を求めて訪れます。

正面ではなく内蔵に案内され、そこで若い女性と出会います。

女性は無料で薬をくれ、代わりに毎日取りに来るよういいますが、その意味が最後に明らかになります。

天神坂【有栖川有栖】

二人の男女が割烹で食事をするシーン。

男性は心霊専門の私立探偵で、女性とは友人や恋人という関係ではありません。

非常に不思議な食事会ですが、その意味はすぐに分かります。

さるの湯【高橋克彦】

東日本大震災によって多くの人間が亡くなった中で、私が撮った写真には亡くなった人が写ることがあり、多くの人から写真を撮ってほしいと依頼がきていました。

私はある依頼により、死人が最期に入るというさるの湯を訪れることになりますが、そこで驚きの真実が待っていました。

風天孔参り【恒川光太郎】

岩さんは道路を挟んで向こう側に樹海があるところで、レストラン兼宿を営んでいました。

ある日、昼間にグループ客が訪れますが、その日の夜、昼間のグループにいた一人の女性が再度訪れます。

女性は月野優と名乗り、ここに泊まりたいのだといいます。しかも長期で。

こんなところに長期で泊まる理由は分かりませんが、岩さんは彼女を泊めます。

やがて岩さんは優のことが気になるようになり、少しずつ関係を深めていきますが、その中で優の口から『風天孔参り』という言葉が出てきます。

雨の鈴【小野不由美】

有扶子は祖母から譲り受けた家に住み、七宝教室の講師料とアクセサリーの販売料でなんとか生活していました。

ある日、有扶子は喪服のような服をまとう女性を見かけます。

見かけない風貌に、いくつかの奇妙さ。

はじめて見た時は特に何もありませんでしたが、彼女の正体が明らかになると、事態は一変します。

アイデンティティ【藤野可織】

猿と鮭の干物がくっつけられ、人魚として作られる世界。

人魚と呼ばれるものは言葉を話し、自分が人魚であると自覚していますが、それはとても人魚とはいえない存在でした。

江の島心中【小島水青】

僕は橋見という老人と仲良くなり、家に招かれます。

江の島の話をしたところ、橋見は不思議な話を思い出し、それを僕に教えてくれます。

深夜百太郎【舞城王太郎】

三つの話から構成されています。

福井県のとある町を舞台にした程度にしか共通点がありませんが、舞城さんならではの世界観、表現に満ち溢れていて、短い中に圧倒的な満足感があります。

修那羅(しょなら)【諏訪哲史】

ドクショと!(https://twitter.com/kusatu9)さんのポッドキャストの中で、『平成怪奇のミッドサマー』といわれた本書。

見たことのある人であれば想像がつくかもしれませんが、見たことがなくても全く問題ありません。

怪奇という表現では想像のつかないアブノーマルな世界観が待っています。

みどりの吐息【宇佐美まこと】

亮司は雑貨屋を営む伯父に頼まれ、山奥に住む老人たちに配達をしていました。

ある日、台風が強まって帰れなくなってしまい、最後に配達した岡田という老人の家に泊まらせてもらいます。

テレビをつけると、東京郊外の神社の裏山で人骨が見つかったというニュースが流れていました。

海にまつわるもの【黒史郎】

『海の怪談を』という執筆依頼を受け、わたしは蒐集していた海にまつわる話を披露します。

それは海にまつわる奇妙なものについて調べている中で知ったことで、話同士は一見関係がないように見えて、どこか関連性があるような話です。

鬼のうみたりければ【澤村伊智】

『比嘉姉妹シリーズ』の話。

野崎が、十年以上連絡をとっていなかった元同期・希代子の話を聞くという形で物語が進行します。

希代子は義母の介護をしながらもそれなりに楽しい日々を送っていましたが、夫の健太郎が仕事にクビになって定職につかないようになると状況が悪化。

体力的にも精神的にも限界を迎える中、健太郎は自分には双子の兄・輝がいて、九歳の時に神隠しにあったのだと打ち明けます。

今では北朝鮮に拉致されたのだと誰もが信じていましたが、ここで驚くべきことが起きます。

行方不明になっていた輝が、三十年ぶりに帰ってきたのでした。

感想

読みやすい

平成後期を扱った作品なので、傑作集の中で最も読みやすいと感じました。

舞台設定もすんなり入ってくるものが多く、作品の持つ雰囲気をじっくり堪能できたことも良かったです。

顔ぶれを見ると自分が今現在も追い続けている作家さんも多く、令和である現在にかなり近い位置にあることが分かります。

平成から令和に向かう中で起きた変化も影響していて、それが作中に登場する言葉やネタによって浮かび上がるところも面白かったです。

新たな出会い

今回も新たな出会いや発見がありました。

例えば小野不由美さんですが、短編をちゃんと読んだのは初めてですが、情景が浮かぶような描写や物事の背景がしっかり書き込まれていて、改めてその面白さに気が付きました。

それから舞城王太郎さん。

初めての作品だったので奇才というフレーズが正しいのかは分かりませんが、とにかく読んだだけでそこでしか味わえないものがあり、著作を買いあさってしまいました。

おわりに

怪奇小説の歴史を知る上で、必須となる一冊です。

平成後期で読みやすい面があるので、シリーズで本書だけ手に取るのも全然アリなので、ぜひ挑戦してみてください。

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