小説

『葉桜の季節に君を想うということ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

スポンサーリンク

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。

【「BOOK」データベースより】

2004年のあらゆるミステリーの賞をかっさらった本書ですが、評価は真っ二つに分かれます。

本書をミステリーと捉えるのかどうかもそうですが、最大の点は『叙述トリック』にあります。

ミステリーが好きな方であれば分かると思いますが、叙述トリックとは意図的に事実や描写を省き、読者を誤認させるという手法です。

本書の魅力はそこにあり、僕は今まで想像していた景色が塗り替えられていく快感がたまりませんでしたが、そこが納得できない、受け付けない方がいるのも事実です。

これから読む方はその点を頭に入れた上で読んでみてください。

この記事では、そんな本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

スポンサーリンク

あらすじ

物語は過去と現在を行ったり来たりしながら進行します。

はじめは両者の繋がりが分かりませんが、物語が進みにつれて徐々に関係が明らかになり、終盤で一気に伏線が回収されていきます。

出会い

物語の主人公は成瀬将虎。

彼は女性を愛し、性欲やその他の欲を満たすために純粋な恋愛だけでなく、援助行動や風俗関係にも手を出します。

一方、フィットネスクラブに通い、体を鍛えていました。

仕事は自称『何でもやってやろう屋』で、ガードマンやパソコンの講師、テレビドラマのエキストラなど様々な仕事をこなしています。

 

ある日、クラブで知り合った高校の後輩、芹澤清のお目当ての女性、久高愛子がしばらくクラブを休むことが判明します。

清の頼みで二人でお見舞いに行きますが、愛子の休んでいる理由は体調不良ではありませんでした。

二週間前、『おじいちゃん』である久高隆一郎が交通事故で亡くなり、その後の手続きなどに追われているのだといい、二人にはどうすることもできず退散。

そしてその帰りに、将虎は駅のホームから飛び降り自殺を図る女性と出くわし、彼女を助けます。

女性は麻宮さくらといい、将虎がわざと飛び込んだのではないと嘘をついたことで事なきを得ます。

ちなみに、この時将虎は駅員に偽名を名乗っています。

後日、駅員から将虎の連絡先を聞いたさくらから電話があります。

さくらは自殺を思いとどまり、頑張って生きていくことを決め、将虎も次第にさくらに惹かれていくのでした。

調査

愛子は隆一郎が交通事故にあったのだと話していましたが、実は轢き逃げされたのだと訂正し、将虎と清に助けを求めます。

目的は隆一郎にかけられた保険金で、愛子の見立てでは『蓬莱(ほうらい)倶楽部』が関係しているとのこと。

蓬莱倶楽部は高齢者をターゲットに胡散臭い健康食品や羽根布団などを売りつける悪徳会社で、隆一郎も引っ掛かった一人でした。

幸い、保険金は支払われていませんが、愛子は犯人を許すつもりはありません。

しかし、現時点で蓬莱倶楽部が怪しいというのは愛子の推測であり、家族や警察に相談するわけにいきません。

そこで元探偵の将虎に白羽の矢が立ったのでした。

実際、そこまで探偵経験のない将虎ですが、ダメ元で依頼を引き受けるのでした。

終わりのない地獄

視点が変わり、今度は古谷節子という女性の目線から語られます。

節子は何でも買ってしまう性分で、年金暮らしにも関わらず蓬莱倶楽部の商品を買いまくってしまいます。

支払い能力がなくなったことを伝えると、金融業者を紹介されて借金し、その借金を返済するために別の金融業者から借金をする。

借金はあっという間に数千万円になり、蓬莱倶楽部は節子を脅します。

息子たちに迷惑をかけたくない節子は蓬莱倶楽部の仕事を手伝い、代わりに借金を減らしてもらいます。

しかし、それは犯罪の片棒を担ぐ行為でした。

節子は途中で気が付きますが、時すでに遅し。

同罪で捕まるのが嫌なだけでなく、借金返済の目処が他で立つはずもなく、地獄のような生活を続けるしかありませんでした。

過去

将虎はさくらとの会話の中で、自分が十九歳の頃のことを語ります。

探偵に憧れて、周囲の反対を押し切って探偵事務所に就職。

しばらくして任されたのは、戸島会というヤクザ組織の組員になり、内偵するという仕事でした。

依頼してきた八尋組の組員が殺害され、犯人が戸島会の人間であることを突き止めるための調査です。

将虎は一芝居打って戸島会の一員となり、世羅元輝、田辺賢太らと行動を共にします。

世羅は江幡京という恋人の家で寝泊まりしていて、将虎もそこに転がり込みます。

やがて覚醒剤を運んでいる最中に何者かに襲われ、盗まれる事件が発生。

それが二度続き、その翌朝、世羅の死体が見つかります。

現場の様子から女性の関与が浮上。

容疑者として小暮明里が浮上しますが、犯行を告白すると同時に自殺したのでした。

潜入

将虎はなかなか蓬莱倶楽部に近づけずにいましたが、埼玉の本庄で無料体験会があることを知り、同居している妹・綾乃と一緒に会場に向かいます。

綾乃がうまく社員の注意をそらしている間に、将虎は不正な手を使って社員の携帯のダイヤルメモリーを入手。

その番号から渋谷にある蓬莱倶楽部の事務所にたどり着くことができました。

ビルには清掃業者が定期的に出入りしていて、将虎はお金を払って仕事を変わってもらい、清と共に事務所に潜入します。

ところがあえなく社員に見つかり、殺されそうになります。

その時、火事を知らせる非常ベルが鳴り、実際に煙も上がります。

社員が対応に追われていると、そこになぜかさくらが現れ、二人を助けてくれます。

さくらはずっと将虎の後をつけていて、非常ベルを鳴らしたのも火をつけたのも彼女でした。

将虎はこのまま隠し通すのは無理だと判断し、今している仕事のことを打ち明けるのでした。

千絵

話はまたしても飛び、二年前のこと。

将虎は講師を務めるパソコン教室で安藤士郎と知り合い、月に何度か飲みに行く仲でした。

安藤は七十二歳でしたが、十七歳になる千絵という娘がいます。

しかし妻と離婚して千絵も引き取られたため、幼少期以降、一度も会ったことがありませんでした。

安藤にとってそれが心残りで、将虎は千絵の様子を見てきてほしいと依頼されます。

調査の中で、将虎は別れた妻がウイラーヤというタイ人であること、名古屋に引っ越して自分のお店を開いたことを知ります。

将虎はなんとかお店を突き止めますが、ウイラーヤは病気で苦しみ、千絵が代わりに店を守っていました。

そのことを安藤に伝えると、ショックを受けて人が変わったように元気をなくしてしまうのでした。

隆一郎の真実

再び節子の話。

彼女が次に蓬莱倶楽部の指示で近づいた人物、それが隆一郎でした。

同じ蓬莱倶楽部の被害者ということで油断させ、人気のないところに連れ込みます。

隆一郎は蓬莱倶楽部の手によって車に轢かれて死亡。

車は証拠隠滅のためにロシアに流し、節子の借金は減りますが、それでも地獄は終わりません。

次のターゲットは安藤でした。

点が線になる

将虎はまだ蓬莱倶楽部のことを諦めていませんでした、ある日、さくらが知らない男とラブホテルの方から出てくるのを目撃。

後日問い詰めると、借金返済のためにああして体を売っていることをさくらは白状します。

将虎はこの時点でさくらを愛してしまったのだと確信。

体をもう売らなくていいよう、借金の返済に向けて動き出します。

実は愛子の依頼が数日のうちにカタがつく算段がついていたため、報酬の代わりに一千万単位の借金をお願いし、愛子もこれを検討してくれます。

将虎は蓬莱倶楽部の事務の女性の家をたずね、お金を渡す代わりに事務所に入れてもらいます。

そこで見つけたのは安藤の保険証書でした。

しかし、安藤は一年前に亡くなっています。

将虎が混乱していると、潜入したことを事務の女性が告げ口し、社員が現れます。

再びピンチに陥りますが、将虎は虚勢を張って話を引っ張り、隆一郎の事故に蓬莱倶楽部が関与していることを白状させます。

その後、普段から鍛えている体を活かして逃げ出し、車でさくらを迎えにいくと自宅に連れて行きます。

真実

自宅には綾乃の他に彼女の孫、美波がいました。

しかし、読者はおそらく疑問を抱くはず。

美波は少なくとも中高生よりは上で、そんな年齢の孫がいる綾乃、そしてその兄である将虎は何歳なんだと。

そう、将虎は七十歳の老人だったのです。

そしてなぜかさくらは、将虎のことを安藤士郎だと勘違いしていることが判明。

ここで全てのトリックが明かされます。

さくらは自殺未遂の時、駅員から将虎の名乗った偽名を聞き、彼のことを安藤だと思い込んでいました。

さくらは安藤にかけた保険金を得るために、籍を入れて安藤さくらになっていました。

しかし、安藤は死んでいるはずで、なぜ籍を入れることができるのか。

それは将虎が安藤の死体を秘密裏に埋葬し、彼に成りすまして年金を不正受給、千絵が成人するまで仕送りをするつもりだったからです。

つまり戸籍上、安藤は生きています。

さくらはそうとは知らず、安藤だと思い込んだ将虎を殺害する機会をうかがっていました。

嘘は他にもあります。

麻宮さくらという名前は偽名で、彼女の本当の名前は古屋節子だと判明。

ここで二つの物語が繋がります。

節子もまたさくらをはじめとし三つの故人になりすまし、年金の不正受給をしていたのです。

絶望から自殺を図るも将虎に助けられ、今度は彼から保険金を得ようとしていましたが、節子もまた将虎のことを好きになってしまったのでした。

蓬莱倶楽部の事務所で将虎たちを助けてくれたのもその証拠です。

節子はどうしていいか分からず、将虎は不正受給のことで警察に出頭するつもりでした。

しかし、その前にやることがありました。

愛子は実は隆一郎の妻で、蓬莱倶楽部相手に自爆テロを計画していたのでした。

隆一郎のことを愛子は『おじいちゃん』といっていますが、孫がいればこう呼んでも決して不思議ではありません。

挫折

世羅の事件の謎を解いたのは将虎でした。

世羅は組織の覚醒剤を自分の懐にしまい、売りさばいていたのです。

襲撃は、協力者である賢太との狂言でした。

二人は覚醒剤をコンドームで包むと、飲み込んで隠し、後で下剤を飲んで取り出すという方法をとっていました。

しかしあの日、世羅の体の中でコンドームが破け、世羅は覚醒剤の急性中毒で死亡。

腹を刺したのは賢太で、覚醒剤を取り出すためでした。

明里を犯人に仕立て上げて殺害したのも賢太です。

将虎の本来の目的である八尋組の件も今回と同様のケースで、これにて目的は達成。

将虎はヤクザから足を洗います。

しかし、心が晴れることはなく、さらに惚れていた京が世羅の後を追って覚醒剤服用による自殺をしたことで、さらに傷つくのでした。

結末

将虎は節子にそのバイタリティーがあれば人生は終わらないと説得。

ここで清や綾乃も六十代の高齢者であることが明言されます。

将虎は今でも人生を謳歌していて、一般的に桜の花がとっくに散った年齢にもかかわらず、自分の中ではまだ満開だと自信を持っていました。

そして、それは節子にもいえることだと。

例え花が咲いていなくても桜は生きているし、その葉は簡単に散ったりはしない。

二人は新たな目標を見つけ、抱き合うのでした。

スポンサーリンク



おわりに

評判が賛否両論だったので不安もありましたが、綺麗に騙され、最高の気分です。

清が六十代にもなってアダルトビデオを先輩に借りてもらうところなんておかしいといえばそれまでですが、僕は許容範囲かなと思います。

綾乃や愛子も若々しい名前に見えますが、これもあくまでイメージで、おそらくそういう名前の方もいると思います。

無料体験会で綾乃が所々年寄り臭い場面があったので、よくよく思い出すと気が付くポイントはいくつもあったように思えます。

絶対に気が付けないけれど。

あと、将虎と節子の最後のシーンが気持ち悪いという人もいますが、この反応も仕方ないのでしょう。

恋愛といえば若い人同士のものを望む読者が多いので、受け入れがたいという気持ちも分かります。

僕はいつまでも現役な二人の姿に、正直羨ましいと感じました。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です