『愚者のエンドロール』あらすじとネタバレ感想!未完成の映画の本当の結末とは?
「わたし、気になります」文化祭に出展するクラス制作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか? その方法は? だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した! さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ! <古典部>シリーズ第2弾!
Amazon商品ページより
古典部シリーズ第二弾である本書。
前の話はこちら。
前作ほどの後味の苦さはありませんが、それでも米澤穂信作品ということで、本書もまたただの青春ミステリでは終わりません。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
未完成の映画
古典部の面々はえるに頼まれ、二年の入須冬実と会います。
えると入須は家ぐるみの付き合いで、入須には古典部に頼みたいことがありました。
文化祭のクラス展示として、入須のクラスでは『ミステリー』と仮称された映画を自主作成しました。
内容は楢窪地区という廃村の取材をするというもので、そこで事件が起きるというものです。
しかし、肝心の結末が描かれないまま映画は終了。
ここからが入須の依頼でした。
脚本を担当した生徒がストレスでこれ以上脚本を書き続けられなくなってしまったため、代わりに事件の犯人を当ててほしいというものでした。
それぞれの推理
古典部は入須のクラスメイト複数人に会い、それぞれの推理を聞きます。
ミステリに詳しい人、そうでない人。
立場の違いもあって様々な見解が出ますが、古典部は協議を重ねてそれぞれの推理の穴を探し出し、本当の結末でないことを確かめます。
しかし、収穫もありました。
映画では分からない撮影現場の状況が分かり、少しずつではありますが事件の真相に近づきます。
依頼の裏に隠された真実
奉太郎は先輩たちの推理などを聞き、それらの矛盾点を突くうちに本当の結末に行き着きます。
他の人に出来ないことが、自分には出来た。
奉太郎は内心得意げに自分の推理を入須に語り、入須も納得してその内容で映画を完成させます。
映画は奉太郎のおかげで素晴らしい出来に仕上がりましたが、映画を見た古典部の面々は納得のいかない様子。
入須は『女帝』の異名で呼ばれ、人を巧みに使って目的を達成する能力に長けています。
本当の目的はもっと別にあったのでは?
奉太郎はやがて入須の真意に気が付き、彼女に自分の考えをぶつけるのでした。
感想
奉太郎の意外な一面が見られる
省エネをモットーにする奉太郎ですが、内面にはしっかりと熱いものを持っていることは前作で証明済みです。
そして、本書においてもその内面がじょじょに出てきます。
自分にしかできないことがある。
そんなことがあれば誰でも嬉しいし、奉太郎も例外ではありません。
何かと女性に弱い奉太郎ですが、本書では入須の頼みを断ることができず面倒事を首を突っ込み、やがて熱くなってしまうのでした。
こういう分かりやすい外面と内面は未熟さを感じさせる青春という感じで、とても微笑ましかったです。
苦味や皮肉が効いている
前作『氷菓』でもそうでしたが、本書もまたただの青春ミステリではありません。
奉太郎の発言とは裏腹の積極的な動きに反して、周囲は冷ややかです。
入須に裏があることは大体の人が予想できたと思いますが、今回は古典部も奉太郎に対して複雑な心境を抱いていることが分かります。
摩耶花の当たりが強いのはいつものこととしても、えるも今回の奉太郎について全面的に肯定はしてくれません。
極めつけは、里志が古典部の部員をタロットカードに当てはめるところです。
奉太郎に対して里志が選んだのは『力』。
タロットカードの知識がないとまったく当てはまらないように思えますが、後になってその本当の意味が判明し、皮肉が効いていることが分かります。
後味の良くない結末ですが、最後のところで救いもあり、苦味がマイルドに抑えられているのもポイントです。
青春時代の成長には痛みが伴いますが、その部分もしっかりと描く古典部シリーズはやっぱり好きだなと思わせてくれる一冊でした。
おわりに
どんどん省エネ主義が剥がれていく奉太郎が見ていて楽しい一冊です。
今後、古典部の各部員にもう少しフォーカスが当たるのが楽しみです。
次の話はこちら。
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