小説

『地球星人』あらすじとネタバレ感想!常識をことごとく破壊する衝撃作

私はいつまで生き延びればいいのだろう。いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう―。常識を破壊する衝撃のラスト。村田沙耶香ワールド炸裂! 

「BOOK」データベースより

村田沙耶香さんの作品は本書が二冊目で、芥川賞受賞作『コンビニ人間』以来となります。

タイトルのテイストからして同じような衝撃を与えてくれるものだと期待して読み始めましたが、そんな想像は軽く超えるくらい驚かされました。

後述しますが、内容的には人を間違いなく選ぶものなので万人受けはしません。

しかし、それを加味しても多くの人に読んでもらいたい作品でもあります。

本書に関する村田さんへのインタビューはこちら

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

魔法少女と宇宙人

主人公の笹本奈月は小学校に入学した年、駅前のスーパーでピュートというポハピピンポボピア星の魔法警察と出会い、地球に危機が迫っていることを知ります。

そこで奈月は魔法少女になって地球を守るようになり、彼女が魔法少女であることを知っているのはいとこの由宇だけでした。

二人は年に一度、お盆の時期になると祖父と祖母の家がある秋級(あきしな)の家で会っていましたが、離れている時間が恋しく、小学三年生の時に恋人になりました。

由宇は自身のことを宇宙人だと思っていて、お互いの秘密を知っていることが二人の仲をますます深めていきます。

工場

奈月は、自身のいる環境を周囲の人間とは違う方向で捉えていました。

自分は人間を作る工場の中で暮らしていて、大人になると出荷されて一人で生活を営むことを余儀なくされ、やがてつがいになって子どもを作る。

世界にとって奈月自身も工場の部品でしかありません。

奈月と由宇は小学五年生の時に結婚しますが、由宇は宇宙人のため子どもが出来ないと奈月は考えています。

彼女にとって、世界は理解しがたいものでした。

それでも奈月と由宇は次のお盆に会えるまでどんな手を使ってでも生き延びると約束していたため、その言葉を胸に日々を生きます。

変態

奈月にとって最も嫌な存在が、通っている塾の伊賀崎先生でした。

伊賀崎は若くてイケメンで女子から人気がありましたが、奈月だけが知っている彼のもう一つの顔がありました。

伊賀崎は奈月に目をつけると、誰もいない二人きりの時に彼女の体に触り、己の異常な欲望を満たしていました。

奈月は勇気を出して母親にそのことを伝えますが信じてもらえず、むしろろくでもないと怒られてしまいます。

奈月の味方はどこにもおらず、遠く離れた由宇の存在だけが彼女を生かしていました。

離れ離れ

迎えた小学六年生の夏。

奈月と由宇は再会してついに一線を超えますが、そのことが両親に見つかって引き離され、二度と会えなくなってしまいます。

それから月日が経ち、奈月は三十一歳の時に夫・智臣と結婚。

彼もまた性交渉に抵抗を持っていて、二人は親戚や友人(=工場)に子どもを早く作らないのかと監視されながらも、それなりに暮らしていました。

ある日、話の流れで秋級に二人で行くことになり、奈月は由宇と再会します。

由宇はまるで人が変わったように奈月をさげすみ、地球星人(普通の人間のこと)に洗脳されているのは明らかでした。

智臣と奈月はそれが由宇の本当の姿ではないのだと考え、とある行動に出ます。

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感想

衝撃につぐ衝撃

村田さんの『コンビニ人間』を読んだ時、感情の読み取れない無機的な文章に驚き、まさにタイトルの通りの物語に大きな衝撃を受けました。

決して好みとは言い切れないけれど、気になって仕方ない作家さん。

そんなイメージを持ったので、文庫化された本書を手に取るのに躊躇はありませんでした。

タイトル的に『コンビニ人間』に通ずるものがあったので、ある程度は予想しながら読み始めました。

ところが、本書はそんな予想を軽々と超え、何度も何度も未知の衝撃を僕に与えました。

地球に住む人間の生活に馴染めないことから、自分以外の人間=地球星人と捉えた主人公やその周囲の人間の物語、というのが第一印象で、『コンビニ人間』と似た新しい価値観を打ち出す物語だろうと甘く捉えていました。

ところが、読めば読むほど『コンビニ人間』との大きな違いに気づかされます。

主人公の置かれている環境が劣悪を極めていて、神も仏もいないのかと思わされるほど不幸が次々に襲い、本書で語られるような特異的な価値観を持つに至ったのも仕方ないと思える共感。

そして、この価値観がとんでもない展開を生み出します。

正直、物語から明確なテーマというか主張のようなものが感じられないので、どんな言葉を尽くしても本書を説明することは難しいと考えています。

なので、まずは読んでみてください。

この言葉に尽きます。

キーワードが印象的

本書には独特な言葉がいくつも登場し、何度も登場することによって本書を象徴する言葉に成長します。

例を出すと、『地球星人』をはじめとして、『工場』や『ポハピピンポボピア星』、『お蚕さまの部屋』に『秋級』などが挙げられます。

はじめは特段イメージのない言葉が、次第に本書ならではの意味を持ち、その言葉を出すだけで物語独特の魅力に引き込んでくれます。

その他にも魅力的な言葉がたくさんあり、言葉選びが非常に上手いと感じました。

グロに注意

これは完全に誤算でした。

決して読了感の良さを求めていたわけではありませんが、かなり意表を突かれました。

詳細はネタバレになりますので避けますが、感覚でいうと入間人間さんの『たったひとつの、ねがい』を読んだときのものに似ています。

これもかなりのネタバレですが、苦手な人が読む危険性があるので、あえて明記しています。

そこまで直接的な描写ではありませんが、ちゃんと読めば伝わるようになっています。

グロ系が苦手でそれでも読むという人は、それなりに覚悟をしてから読んだ方が良いかもしれません。

おわりに

小説としてかなり異色で、メッセージ性がない分、人によって受け取り方は様々です。

読めば良さが分かる、とは言い切れません。

しかし、得体の知れないスケールが本書にはあり、そんな経験をできる作品はまずないので、本好きの人であればぜひ読んでその衝撃を味わってもらえればと思います。