ミステリー

『蛇行する川のほとり』あらすじとネタバレ感想!美しく儚い青春の夏を描くミステリ

演劇祭の舞台装置を描くため、高校美術部の先輩、香澄の家での夏合宿に誘われた毬子。憧れの香澄と芳野からの申し出に有頂天になるが、それもつかの間だった。その家ではかつて不幸な事件があった。何か秘密を共有しているようなふたりに、毬子はだんだんと疑心暗鬼になっていく。そして忘れたはずの、あの夏の記憶がよみがえる。少女時代の残酷なほどのはかなさ、美しさを克明に描き出す。

「BOOK」データベースより

恩田陸さんの描くティーンエイジャーは瑞々しくて、子どものように無邪気でもあるし、大人のように、もしくはそれ以上に強かで大好きです。

本書には四人の少女が登場しますが、あとがきにあるように彼女たちには恩田さんが自身の学生時代を振り返って感じた憧れが閉じ込められていて、怖さと美しさが共存しています。

恩田さんの『ネバーランド』では四人の少年が登場しますが、作品から感じられる青春の鮮やかさ、儚さは共通しているので、同書を好きだという人であれば必読です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

夏合宿

蓮見毬子は同じ美術部の先輩で憧れの存在である九瀬香澄と斎藤芳野に誘われ、演劇祭で使う大きな絵を描くために香澄の家で合宿することになりました。

香澄の家は『船着き場の家』と呼ばれ、過去に不幸なことが起きたことで知られていました。

毬子は憧れの先輩たちに誘われて舞い上がりますが、親友の真魚子(まおこ)は何か目的があると警戒し、香澄のいとこ・貴島月彦からは香澄に近づかないよう警告されます。

毬子にはその理由が分かりませんが、一方で船着き場の家には複雑な思いがあり、楽しみなような怖いような気持ちで合宿の日を迎えます。

合宿には毬子たち女子三人だけでなく、月彦と彼の幼馴染・志摩暁臣も加わり、少年少女たちの忘れられない夏が始まりました。

過去の事件

毬子にとって楽しい夏となりますが、日々の会話の中で十年以上前の事件が少しずつ明らかになります。

かつて船着き場の家に住んでいた女性が殺害され、ボートの中に寝かせられているところを発見されたこと。

ほぼ同じ時期に女の子が野外音楽堂の屋根から落下して亡くなったこと。

船着き場の家には毬子より何歳か年上のカズコという少女が住んでいましたが、事件があってから引っ越してしまったこと。

他愛のない過去のことと思われましたが、合宿に参加した五人はそれぞれ事件に関係していて、その関係が次第に明らかになります。

秘密

毬子以外は、毬子に対して秘密にしていることがあり、それは過去の事件に関係していました。

香澄が何かしでかさないよう見張っているのだという月彦。

暁臣には亡くなった姉がいて、それが野外音楽堂から落下した少女だということ。

毬子は忘れているといい、暁臣の姉を殺害したのは毬子であること。

香澄がカズコであること。

何が真実で何が嘘なのか分からない状態で、毬子は少しずつ追い込まれていきます。

一方で、五人で話す中で十年以上前の事件の断片が集まり、やがて真実が明らかになるのでした。

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感想

少年少女が瑞々しい

僕は本書に恩田さんらしい魅力がたくさん詰まっていると思っていて、その最大の理由が少年少女の瑞々しさです。

無邪気で美しくて、華やか。

かと思えば何かを企むミステリアスな面があって、平気で人を傷つけることができて、大人顔負けの残酷さも持ち合わせている。

なんというか生命力がみなぎっていて、彼女たちの話を読んでいるだけで楽しかったです。

僕は毬子の立場で、憧れの先輩や美しい親友と接する感覚でした。

秘密によるミステリアスな一面

本書はいくつもの視点に分かれて描かれますが、毬子の視点だと誰もが秘密を持っていて自分を騙しているように見えるので、必然的にストーリーはミステリアスな一面を帯びます。

十年以上前に起きた事件だけでなく、少年少女たちの抱えた秘密を一つずつ解き明かしていく。

その過程もまたミステリで、恩田さんだからこそ描けるミステリが本書です。

忘れられない夏

個人的に夏×青春×ミステリは最強です。

夏の生命力に満ち溢れた、なのにふと切なくなる情緒は青春に通じるものがあって、一年の中で最も記憶に残りやすい季節ではないかと思っています。

そして、そこにミステリが加われば、忘れられない夏の完成です。

本書に描かれた一夏を通じて、少年少女たちは確実に変化します。

それは成長と呼べるかもしれないし、もっと違う何かかもしれません。

貴重な青春と呼べる時代の一幕で、一度読んだらきっと読者の胸に刻まれるはずです。

おわりに

恩田さんは世界観を作り出すのが本当に上手で、本書ではリアルだけれど決して存在しない、美しくて儚い一夏が描かれています。

『耽美』という言葉が好きな人には、ぜひ本書をオススメします。

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