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『超怖い物件』あらすじとネタバレ感想!若手からベテランまでが織りなす物件怪談オムニバス

harutoautumn
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古民家を買った男は、なぜ家の中にある氷室のことが気になってならないのか(宇佐美まこと「氷室」)。自殺した妹の部屋が、しばらく後に訪ねていくと、元通りに復元されている(神永学「妹の部屋」)。家の中に真ん中にある座敷牢は、誰を閉じ込めるためのものだったのか(黒木あるじ「牢屋」)。その家は、何か変だ(平山夢明「ろろるいの家」)。

当代随一の作家たちが紡ぐ、「超怖い」物語。

Amazon商品ページより

ホラーが好きな人であれば外せないであろう一冊。

『物件』をテーマに、若手からベテランまでホラーの書き手が様々な角度から物語を綴っています。

ちなみに僕は神永学さん、澤村伊智さん、芦花公園さん目当てで購入しましたが、知らなかった好みの作家さんを見つけられたので、とにかく大満足です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

氷室【宇佐美まこと】

直樹は半年前、仕事を辞めて古民家を買って縁もゆかりもない土地に移住します。

父親というお手本が亡くなり、自由に生きられる。

そう直樹は思っていました。

事実、新しい生活は順調に思えましたが、やがて移住にまつわる真実を知ることになります。

倒福【大島てる】

この物語は、大島てる宛に書かれた手紙という体で描かれています。

相手は大島に対してネット上で暴言を吐いて逮捕された男性の父親で、手紙には自分の息子がどうしようもない男であることが書かれています。

はじめは、ただの罪滅ぼしとしか思えない文章ですが、やがて雲行きが怪しくなっていきます。

旧居の記憶【福澤徹三】

私は幼い頃、家族や親戚から土地にまつわる不思議な話を聞かされていて、それがきっかけとなって事故物件に興味を持つようになりました。

この物語は、私がかつて取材した馴染みのある土地を再度訪問した時のことが描かれています。

やなぎっ記【糸柳寿昭】

私は怪談社という団体に所属し、怪異を集めるために様々な人を取材していました。

この物語は、私が取材した時のメモという形で描かれています。

取材相手が変わっていることが多く、それだけで楽しめるのですが、最後に思ってもみなかった驚きが待っています。

たかむらの家【花房観音】

私は、兄の妻・花乃子から相談を受けます。

兄夫婦は私も住んでいた実家で暮らしていて、夫婦仲は良くて一見問題がないように思えます。

しかし、花乃子はこの家で何かを感じるのだといい、自分の身に起きたことを話します。

その正体は、予想もしていないことでした。

妹の部屋【神永学】

私の妹は自殺しました。

彼女の住んでいた部屋は当然解約されましたが、ある日、私のもとに不動産屋から妹の住んでいた部屋について呼び出しがあります。

不審に思う私が不動産屋に連れられて目にしたものは、かつて妹が住んでいた時と何も変わっていない部屋でした。

笛を吹く家【澤村伊智】

私は妻と息子と三人で暮らしていて、一見、どこにでもいる幸せな家族に見えます。

しかし、近所にある事故物件の話や息子の気難しい部分が明らかになるにつれて、おかしな雰囲気が漂い始めます。

牢屋【黒木あるじ】

俺は妻の頼みで、彼女の知人で都内の広告代理店に勤める木藤をとある場所に案内していました。

そこでは三つの事件が起きていて、ホラーやオカルトの話の種にもってこいの場所です。

俺は仕事の幅を広げるためだと性格の合わない木藤と同行して現地で聞き込みをしますが、本当の目的は他にありました。

トガハラミ【郷内心瞳】

美佐子の姉はトガハラミに取りつかれ、好きになった男を食べてしまいます。

トガハラミをはらい落とす方法はなく、取りつかれた人間を殺害すれば、トガハラミはどこかに行ってまた別の人間が取りつかれてしまいます。

そのため姉は蔵の中へ閉じ込められ、美佐子はそんな姉と日々話しながら生きていました。

美佐子は過去の経験から男性を嫌い、彼女にとって清潔な存在である姉に心を許していましたが、途中で物語は急変します。

終の棲家【芦花公園】

私は父親に代わり、内柴美和子という精神系の病を持つ患者の診療にあたることになりました。

美和子は全員が敵であるかのように激しく当たり、父親だけが彼女とまともに話すことができました。

私は父親からあまり話を聞くなと忠告されていましたが、美和子を不憫に思って話に耳を傾けます。

美和子もそんな私に心を許して様々な話をしますが、それが間違いでした。

ろろるいの家【平山夢明】

ある日、私のもとにSという女性から電話がかかってきます。

彼女は十年近く前、私が仕事でインタビューした相手でした。

怪談についてのインタビューでしたが、掲載許可の段階でSとの連絡が途絶え、私にとっては苦い思い出でした。

Sはその時のことを謝った上で、今なら使ってもらいたいといって自身の経験を話し始めます。

感想

豪華すぎるオムニバス

とにかく豪華すぎる。

この一言に尽きます。

僕は冒頭に書いた作家さんの作品を目当てに購入して、そちらは期待通りの仕上がりでした。

一方で、全く知らなかった作家さんの作品が僕の期待を遥かに上回っていて、残暑を吹き飛ばすにはうってつけでした。

『物件』というテーマがあっても、ここまでバリエーションが出るのかと思うくらいに作家さんごとに違いが出ていて、そこが本書の魅力の一つです。

特にオススメはこれ

どれも魅力的ですが、僕が特にオススメするのは『氷室』、『たかむらの家』、『妹の部屋』、『牢屋』、『トガハラミ』、『終の棲家』、『ろろるいの家』です。

どれも短い中で強烈なインパクトを残すことに長けていて、一人、夜に部屋で読んでいたらまず思い出して寝れなかったでしょう。

通勤の電車の中で読んで良かったと思った瞬間でした。

心霊的なものもあれば、現実にありそうで怖いという類のものまで、とにかく怖さ一つとってもバリエーションに富んでいます。

これだけの豪華な作品を税込七百円台で出版してくれた講談社には感謝しかありません。

おわりに

夏の締めくくりにはうってつけの作品でした。

どんなホラー好きでも魅了してしまう作品が一つは見つかると思うので、ぜひ楽しみながら読んでみてください。

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