『ブラフマンの埋葬』あらすじとネタバレ感想!ブラフマンと過ごす愛すべき自由な世界
ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している“創作者の家”。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた―。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。第32回泉鏡花賞受賞作。
「BOOK」データベースより
小川洋子さんの作品である本書。
百ページ程度の中編で、タイトルにある通り、ブラフマンが登場します。
ブラフマンは動物ですが、その正体は何なのか最後まで明かされることはありません。
もちろんヒントはいくつも与えられているので、読者は想像しながら読むことになり、いつの間にか自分を主人公の『僕』に置き換え、かけがえのない友達になれた気がしました。
特別なことは起きないけれど、特別な時間が流れる本書。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
出会い
主人公の僕は、〈創作者の家〉で住み込みの管理人をしています。
元々は出版社の社長の別荘で、彼の死後、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に無償で仕事場を提供するための場所になりました。
僕は夏のはじめのある日、怪我をした生き物を保護します。
序盤で水かきとひげを持ち、水の中を泳げることが明かされますが、何という種類の生き物なのかは明示されません。
僕はその生き物を手当てし、サンスクリット語で『謎』を意味するブラフマンと名付けます。
芸術家たち
〈創作者の家〉には本当に多種多彩な芸術家たちがやって来ます。
作家や詩人、翻訳家、哲学者、画家、デザイナーなどなど。
挙げればキリがないほどの芸術家が静かな時間と新たなインスピレーションを求めていました。
芸術家たちの多くは特別に扱われることを好むため、僕は彼らの好みに合わせながらもてなし、彼らの活動を邪魔しないことをモットーにしています。
独特な感性を持つ芸術家たちは気難しいところもありますが、一人一人が魅力的な個性を持っていて、本書を彩ってくれます。
二人で過ごす時間
僕はブラフマンと一緒に多くの時間を過ごします。
その中で次々にブラフマンの特徴が挙げられていきますが、やはりその正体までは明示されず、読者は自分なりのブラフマンを思い浮かべながら読み進めることになります。
また僕には気になる人がいて、それは村の雑貨屋の娘です。
恋焦がれるといった激しいものではありませんが、お釣りを渡される時など些細な瞬間に喜びを見出していて、本書におけるエッセンスの一つになっています。
こうして僕はブラフマンや娘、芸術家たちに囲まれ、夏のはじまりから秋までのことが本書には描かれます。
感想
一つ一つの描写が丁寧
本書では特別なことは何も起こりません。
どこにでもある日常が淡々と描かれています。
しかし、とにかく描写の一つ一つが丁寧で鮮やかです。
例えばブラフマン。
彼の仕草や行動はまるで目の前で生きているかのように活き活きしていて、まるで意思疎通が図れているような気がしてきます。
例えば人間描写。
娘や芸術家たちはちょっとした発言、行動からその人柄がよく表れていて、この小さな世界にたくさんの面白い人たちが暮らしていることが分かります。
曖昧で自由
ブラフマンの正体はもちろんですが、本書に登場する人はみんな名前がついていません。
全員が肩書、続柄などで呼ばれます。
非常に曖昧で、セリフや描写ではなく名前で人物を判断している人からすれば分かりにくいかもしれません。
しかし、曖昧であるがゆえに自由だと僕は感じました。
名前があるだけで読者は先入観というか、自分の知るその名前のイメージを持ち込みがちですが、本書ではその名前がないので先入観の持ちようがありません。
その人を知ろうとすると、彼らのセリフや描写をしっかりと追わないといけません。
そうすると想像力が働き、読者それぞれのイメージが出来上がります。
著者の小川さんの繊細な世界観と、それから読者に判断を委ねる部分が混在し、他にはない特別な読書になるのではないでしょうか。
ブラフマンとは何なのか
上記したように、曖昧であるがゆえに想像力が働き、良い読書が出来るようになっています。
しかし、ここでは自分なりのブラフマンのイメージを持った上で、彼についてまとめたいと思います。
ブラフマンの特徴は作品中の至るところに散りばめられ、まとめると以下の通りです。
- 森の動物である
- 水かきとひげを持っている
- しっぽが個性的で、長さは胴の1.2倍
- 一日の半分は眠っている
- 好き嫌いはなく、何でも食べる
- 体に比べて足は小さく、足の裏に五つの肉球と爪がある
- 毛が生えている
僕は泳げる森の動物、という点でカワウソ、カピバラなどを想像していました。
上記の特徴をまとめると、やはりカワウソかなと思います。
もちろん作中で明示されていない以上、これは正解とは思いません。
やはり読者の想像したブラフマンが一番だというのが僕の考えです。
それこそ現実にはいない、自分のオリジナルの動物を思い浮かべるのも楽しいと思います。
おわりに
短い中に自由で鮮やかな世界が広がり、すっかりブラフマンと楽しい時間を過ごした気になれました。
想像力を働かせると読者は何倍も楽しくなる。
そんな当たり前のことを思い出させてくれた作品で、このタイミングで出会えて本当に良かったと思います。
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