『アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿』あらすじとネタバレ感想!取材のネタが導き出してしまう恐怖
癖者揃いの娯楽系ウェブマガジン『アウターQ』編集部。新人ライター湾沢陸男は、小学生の頃によく遊んだ公園の落書きを調査することに。最後に<露死獣>と書かれた意味不明なその落書きを、当時の子供たちは<露死獣の呪文>と呼び、解読しようと夢中になった。取材を進めるうち、湾沢は「二十歳までこの呪文を覚えていると<露死獣>に殺される」との説を唱えた旧友が亡くなっていたことを知り……。何重にも張り巡らされた呪文の謎が時を経て今、解き明かされる「笑う露死獣」を含む全七編を収録した傑作ミステリー連作短編集。
Amazon商品ページより
澤村伊智さんのミステリ。
それってどんなものだろうと予想がつきませんでしたが、読んですぐに分かりました。
本書は澤村さんのミステリです。
それがどういう意味かは、読めば分かります。
ここで言いたいことは、本書がめちゃくちゃ面白いということです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
ライター
新人ライターの湾沢陸男は、娯楽系ウェブマガジン『アウターQ』の依頼で記事を執筆していました。
今回は湾沢が小学校の頃によく遊んだ公園にあった落書きをテーマに執筆することになります。
『露死獣』という興味をそそられるけれど、意味の分からない言葉。
湾沢は高校時代の先輩でライターの先輩・井出とともに調査に乗り出します。
謎
実際の落書き、公園の近くの住民から聞き込みで、湾沢は少しずつ記事の材料を集めます。
『アウターQ』編集長の八坂は湾沢の原稿を見て、謎が残されていることを指摘。
それに気が付いた湾沢は子どもが考えたような謎を追いかけ、得体の知れない何かに近づいていきます。
てっきり子どもの考えた大したことのないものだと高を括っていましたが、次第に子どもが考えたとしては辻褄の合わないことが起き、湾沢たちの当初の認識が誤っていたことが次第に明らかになります。
繋がる
露死獣が一件は本書の一部に過ぎず、湾沢はその後も様々な調査をします。
一見、どれも独立した単なる短編集に見えますが、実はそれらは関連性があり、本書が連作短編集であることがだんだんと明かされます。
誰が何の目的で謎を生み出したのか。
湾沢やその他の数多くの登場人物には、一体どんな思惑があるのか。
これらが繋がる時、本書は一気に面白くなり、目が離せなくなります。
感想
人間の闇
澤村さんというと、ホラー作品のイメージしかありませんでしたが、本書でそれが払拭されました。
ウェブマガジンの取材でライターの湾沢がどこにでもありそうなネタを調べるのですが、それが予想もできないほどの闇を抱えていて、それがまず怖いです。
これだけであればホラーですが、そこには人間の思惑があり、ネタを経るごとにそれらが繋がりを見せます。
この面白さはまさにミステリで、澤村さんのミステリはこんなに面白いのかとただただ感動してしまいました。
一編ごとの怖さ、面白さがあり、繋がることで何倍にも怖くなる。
読み進めるごとに止まらなくなるので、可能であれば一気に読める時間を確保してから本書を手に取ることをオススメします。
自分の周りにも
本書に登場するネタは、自分の身の回りを探しても一つくらいは転がってそうです。
それくらいありふれたもので、ライターの腕がなければ面白い記事にはなりそうにないものばかりです。
しかし、その裏にはこれだけの闇が潜んでいるということで、もしかしたら僕の住んでいるこの街にも何か明かしてはいけない秘密があるのかもしれません。
そう考えると好奇心が顔を覗きだして、自分でも探してみたくなりました。
僕のこれから見つけるちょっとした不思議は、一体どんな真実をはらんでいるのか。
面白いものであれば、ブログで皆さんに発信してみたいなと、現時点では思っています。
おわりに
日常から非日常に繋ぎ目を感じさせないリンクがうまく、自然と物語に引き込まれていました。
本書は続編、あるいは別の登場人物で同じような構成ができそうなので、密かに期待したいと思います。
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