『ある修道士の自罪』あらすじとネタバレ感想!病棟に潜む、修道士を破滅させる存在とは?
この病棟には、 修道士を破滅させた “何か”がいる――。
聖バシリオ精神病棟を慰問していた修道士が異様な死を遂げた。先代に続きこれで二人目。新たな慰問役を命じられた若き修道士ペテロは、前任者トマゾが残した日誌を託される。そこには悪魔めいた怪奇の数々、院内をさまとう謎の少女、日に日に壊れていくトマゾの姿が綴られていた。ペテロは真相が隠された日誌を手掛かりに、彼らを死へ追い詰めた悪しきものの正体を暴くべく病棟の闇へ踏み込む。信仰は救済か、それとも狂気を加速させる毒か。読む者の心を蝕む、漆黒のゴシックホラー。
Amazon内容紹介より
本書はnotextTALES主催創作大賞2025角川ホラー文庫賞受賞作を加筆修正したものです。
精神病棟を慰問する修道士たちですが、何らかの原因で異様な死を遂げ、次の修道士たちにバトンタッチしていきます。
病棟には何が潜んでいるのか。教会という超常現象とぴったりなシチュエーションもあり、闇を存分に味わえました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
引き継ぎ
修道士のペテロは前任であるトマゾから引き継ぐ形で、聖バシリオ精神病棟の慰問を担当することになります。
とはいっても、トマゾはすでに亡くなっており、十分な引き継ぎが行える状況ではありませんが、トマゾには記した日記がありました。
ペテロは状況が十分には分からない中、トマゾの遺した日記をヒントにして慰問にあたります。
日記により、トマゾの前任であるタダイもまた怪異に襲われていたことが明らかになります。
日記
序盤はトマゾの日記という体で、物語が進行します。
ペテロは精神疾患を患う患者とコミュニケーションすることははじめてですが、極めて真面目で、前任者にならって自分も日記をつけることにします。
トマゾは三十歳という若さで、医師のルカレッリは彼のことを十分には信用していませんでした。
前任者のことを考えると仕方のないことで、トマゾは事情を飲み込んだ上で職務にあたります。
何人もの患者
トマゾはここから色々な患者と接することになります。
最初の患者は女性で、赤ん坊を亡くしたことで精神に異常をきたしていました。
とはいえ、最近は落ち着いており、極めて無害だとルカレッリは話します。
しかし、トマゾと話す中で患者は取り乱し、その日の慰問は終了となります。
このようにトマゾは経験を積みながら患者たちとコミュニケーションを重ねていきますが、その中で精神病棟に潜む怪異と邂逅することになります。
感想
常軌を逸した気配
本書は精神病棟が舞台であり、患者たちの様子や発言は支離滅裂で、まともに受け止めていてはこちらもまたやられてしまう危険性を秘めています。
そのため話半分に受け止め、感情と業務を切り分けて医師や修道士たちは対応するわけですが、そう簡単にできるわけではありません。
修道士たちも人間として正しい行いをしたいと思い、しかしそれだけでは患者を救えないことに気が付き、傷つきながら成長していきます。
このように精神病棟ならではの常軌を逸した気配がまずグッドです。
さらにここに怪異要素が加わることで、どこまでが現実で、どこからが虚構なのかが曖昧になり、自分の立っている場所すら分からなくなりそうになります。
ゴシックホラーとして必要な要素は十分あるように感じました。
もう一歩がほしい
とはいえ、僕は本書を読んで、面白いものの記憶に残るようなシーンや仕掛けがそこまでなかったように感じました。
日記形式で淡々としていますが、当時の様子や感情を思い浮かべながら読むと恐怖が浮き上がり、手法としては成功していたと思います。
物足りなさはそこから生み出される爆発的な何かが足りなかったことです。
これは驚きでも恐怖でも何でも良いのですが、読者の心に杭を突き立てるような一撃がなかったように思います。
そのため全体を通してよく出来ていたと思うものの、後になれば内容が薄れ、本書で得たものが消えていくような気がします。
設定や雰囲気作りがここまでしっかりされているからこそ、読者を次の修道士と見立て、こちらの精神すらも蝕むような圧倒的な闇があれば、言うことはなかったかな、という所感です。
おわりに
辛口なコメントにはなってしまいましたが、角川ホラー文庫として新たな作家さんの発掘・育成している様子が見受けられ、嬉しかったです。
祇光瞭咲さんにとって本書がデビュー作であり、これからどのような作品を生み出していくのか、そちらにも期待したいと思います。
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