『安達としまむらSS2』あらすじとネタバレ感想!
二人の日常のさらに日常。書き下ろし多数の短編集、第二弾。
安達と暮らし始めてしばらく。近々わたしの誕生日だ。
「あ、チャイナドレスは禁止ね」
「えっ」
「あれはクリスマス用だから」
「そうだったんだ」
「そうなんですよ」
二人だけの行事が増えていくのは、そう、悪くない。二人の日常のさらに日常。書き下ろし多数の短編集、第二弾。
Amazon商品ページより
シリーズのSS第二弾となる本書。
前の話はこちら。
表紙からすると、二人が高校を卒業して一緒に暮らし始めてからの日々のような印象を受けますが、一部それ以外の時間軸の物語も含まれます。
今回も他愛のない話がほとんどですが、それが愛おしくて仕方ない。
そんな愛にあふれた作品です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
しまむらから見た安達
今回は二人の視点それぞれの短編が収録されていて、まずはしまむらから。
彼女から見た安達は、大人になってかなり成長したように感じます。
以前のような挙動不審が減り、しまむら相手であればかなり親密なコミュニケーションを抵抗なくできるようになっています。
そして、しまむらへの愛は健在で、衰えるどころか増すばかり。
しまむらを狙う男の影が見えようものなら説教が始まるのですが、これが重たい。
しまむらは安達と一緒に暮らすことによって二人だけの世界に閉じ込められる形になっていますが、しまむら自身がそれを許容していて、とても印象的です。
家族仲は変わらずですが、両親や妹との距離感がやや開いたことに寂しさを覚え、でもヤシロがいることで変わらない日常も演出していて、絶妙なバランスでした。
安達から見たしまむら
これは高校時代とあまり変わりないように感じます。
安達にとってしまむらは美人で可愛くて、何にも代えられない存在であることは一緒です。
自分の執着を隠さなくなったのは、ある意味成長でしょうか。
一方で、安達母やしまむらの家族との交流が増え、しまむらとの二人だけの世界からやや脱出した印象です。
こう見ると、二人は交わることでお互いの世界を譲歩して、ちょうど良い距離感に落ち着いたのかもしれません。
感想
ただ甘い
シリーズとして、安達としまむらがくっつき、二人の未来がどの世界線においてもそれが揺るがないことがほぼ決まっているので、この先に不安が待ち構えていることはほぼあり得ません。
あるのは甘い、とろけるような幸せだけです。
日々の濃淡が減り、毎日が均一化されてきて、毎日がなんとなく幸せ。
物語としては何の起伏もなく、巻を経るごとに作品のファンに向けたファンサービスのような作品になってきています。
もちろんここまでかなりの巻数を重ねてきたので、それが当然ではありますが、特定の読者に刺さるよう尖ってきています。
安達やしまむらが好きであれば、読んでいて幸せになれること間違いなしです。
母親同士の絡み
僕が年をとったせいか、あるいは子どもがいるせいか分かりませんが、巻数を経るごとに安達母、あるいはしまむら母に感情移入している自分がいます。
特にしまむら母の行動、言動には時々ハッとさせられます。
いつもあっけらかんとしていて、何も考えずに思い付きで行動していそうな彼女ですが、締めるところはちゃんと締めてきます。
安達としまむらの交際、同居についても意外と慎重な考えを持っているところも、その一端です。
行動や言動には、表面的には分からないしまむらへの愛情があふれていて、それをしまむら自身も気が付いていて、その気恥ずかしさが混じったやりとりが大好きです。
安達に対しても実の娘のように接するわけですが、その想いが安達に全て伝わっているわけではないため、その伝わる人には伝わる感も大好きです。
シリーズの寿命
悲しい話ですが、シリーズの寿命ってあとどれくらいなんだろう、なんて読みながらふと考えてしまいます。
様々なメディアに進出してファン層を広げた本シリーズは、出版社としても続けたい意向はあるはずです。
一方で、これ以上先に何も起きないとなると、安達としまむらのただ幸せな日々を描くことに何の意味があるのだろう、なんて嫌なことも考えてしまいます。
他の方のレビューを見ると、手放しで褒めていることがほとんどなので僕がずれているのかもしれませんが、これは噓偽りのない本音です。
二人の日常を愛でたいのに、違った感情も隣にある。
複雑で、モヤモヤする日々はまだ続きそうです。
おわりに
作品としてもはや安定しているので、ファンを裏切るようなことは絶対にありません。
表紙にもありますが、冬にこたつに入りながら、人には見せられないにやけ顔で読むと一層幸せかもしれません。
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