平野啓一郎『ある男』あらすじとネタバレ感想!人間の存在、愛が描かれた文学作品
【第70回読売文学賞受賞作】
【キノベス!2019第2位】
【映画化決定!2022年 公開予定(監督:石川慶、脚本:向井康介)】愛したはずの夫は、まったくの別人であった。──
「マチネの終わりに」の平野啓一郎による、傑作長編。弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。愛にとって過去とは何か? 人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
Amazon商品ページより
『マチネの終わりに』で一気に好きになった平野啓一郎さんの作品です。
愛した人が実は別人で、その正体を弁護士である城戸が探すというストーリーは宮部みゆきさんの『火車』が思い出されました。
また映画化されました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
本書はとある小説家がバーで弁護士の城戸章良と知り合い、彼から聞いた話を小説にしたという体で始まります。
ある男
里枝は若くして長男を病気で亡くし、意見の対立によって夫と離婚。
下の子どもを連れて実家のある宮崎県S市に戻り、実家の文房具屋を手伝うことにしました。
そんな時、客としてやってきた谷口大祐と出会い、やがて結婚します。
二人の間には女の子が生まれ、里枝は新たな幸せを手に入れたかのように思えました。
ところが、下の子どもが三歳の時に大祐は仕事中に事故にあい、帰らぬ人となります。
里枝は大祐が実家と折り合いが悪かったことを知りつつもその実家に連絡をとりますが、ここで奇妙なことが起きます。
大祐の兄・恭一がやってきて遺影を見て、戸惑います。
里枝が大祐だと思っていた人物は、大祐ではなかったのです。
恭一に聞いても当然分かるわけがなく、里枝は何が何だか分からなくなっていました。
調査
以前、里枝の離婚調停の代理人を引き受けた城戸は彼女から連絡をもらい、大祐に関する一連の出来事を知ります。
城戸は大祐に成りすました『X』を探すために、まずは大祐の元恋人である美涼のもとを訪れます。
そこから次第に範囲を広げ、やがて戸籍交換を仲介したブローカーにたどり着きます。
Xもこのブローカーを通じて誰かと戸籍を交換したのかもしれない。
そう考えた城戸ですが、事態は彼が思ったよりも複雑でした。
Xが誰で、なぜ大祐になりすますに至ったのか。
城戸の調査によってそれが次第に明かされます。
感想
自分の存在とは
本書では谷口大祐と呼ばれていた人物が本当は何者なのかに始まり、『過去のロンダリング』という社会の裏が次第に見えてきます。
自分にとって忘れたい、消したい過去を持った人間が戸籍を入れ替え、別人となって生きていく。
しかもまるで持ち物を交換するかのように手軽に行うのに、顔や声が同じでも名前が違っていればまるで別人に見えてしまう。
いかに人間という存在がその人自体だけでなく、名前や過去など様々な要因で印象づけられているのかが分かります。
僕も家庭、会社、それ以外の場所で相手から持たれている印象が違うのを感じるし、もっといえば一人でいるか誰かといるかでも大きく変わるのではと思います。
本書を読んでいかに存在が曖昧なのかを感じたし、在日三世である城戸の目線に立つことによって無意識の内に差別や偏見がばらまかれているのを感じました。
僕も知り合いの在日の方の話を通じて、城戸の悩んでいることがいかに苦しいのかを何度も聞いてきたので、城戸の思うことに共感できるところが多くありました。
作品単体での評価の難しさ
本書の評価を見ていると、低評価も一定数見受けられます。
しかし、それは本書の取り扱う問題についての反対意見なども少なからずあり、作品単体として評価することが難しいのを感じました。
個人的には城戸が在日三世だからこそ目の前にいるのにいないという存在の曖昧さを自覚できたと思うので、この設定である必要はあったのだと考えます。
一方で、それが本題ではないのに所々で城戸の主張が大きくなりすぎるのを感じたので、その点についてはマイナスに働いているともいえます。
登場人物がどうにも好きになれない
僕が本書を読んでいて一番気になったのは、読むのも嫌になる登場人物が多いことです。
城戸の妻である香織や美涼の働くバーのマスター、あとは谷口家全般など、とにかく読み進めるごとに嫌悪感が募っていくのを感じました。
美涼自体は決して嫌いではないのですが、彼女の見る目がないのか周囲にいる人間のせいでどうしても色眼鏡で見てしまい、最終的にはそんな彼女に好意を抱く城戸にもムカムカするようになっていました。
物語の途中から里枝が登場しなくなることで気分転換の機会を失い、最後まで読み進めるのも一苦労でした。
衒気が鼻につく、という言葉が作中に登場しますが、それは本書そのものの評価にでもあるような気がしてなりません。
おわりに
テーマ的に宮部みゆきさんの『火車』を思い出しながら読み、良くも悪くも違いを実感した一冊でした。
話として非常に面白いのですが、我慢ならない部分が多かったのも事実で、僕には平野さんの作品自体が合わないのではと感じ始めています。
次の一、二作品でそのあたりを見極めたいと思います。
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