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『物語のおわり』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

harutoautumn
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病の宣告、就職内定後の不安、子どもの反発…様々な悩みを抱え、彼らは北海道へひとり旅をする。その旅の途中で手渡された紙の束、それは「空の彼方」という結末の書かれていない小説だった。そして本当の結末とは。あなたの「今」を動かす、力強い物語。

「BOOK」データベースより

湊かなえさんの、イヤミスではない本書。

最初に未完の物語が提示され、その原稿が人から人へと渡り、読んだ人たちは自分ならと結末を考える、という関連性のある短編集となっています。

しかし未完で終わるわけではありません。

この記事では、そんな魅力的な本作を各章ごとに解説しています。

ネタバレになるので未読の方はご注意ください。

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はじめに

本作は短編集となっていますが話には連続性があり、最初から最後までで数日間程度の時間しか経過していません。

舞台は北海道です。

北海道の雄大な自然を背景に綴られていく物語ですが、同じ舞台でも主人公によって感じ方が様々であること、そして同じ未完の物語を読んでいるのにも関わらず、その結末が全く違うところ、などを楽しんでいただければと思います。

あらすじ

空の彼方

ある山間の小さな街を舞台にした話。

ぎっしりと詰まった文章に、今よりもかなり昔を連想させるような文体、表現などが特徴で、後に、この話が『空の彼方』という創作として各登場人物の手を渡っていきます。

登場人物

・絵美

小さな山間の街で生まれ、両親は「ベーカリー・ラベンダー」という小さなパン屋を営んでいる。

忙しい両親が構ってくれないこともあり、小さい頃から山の向こうの世界を想像しながら時間を潰していて、後に自分の物語を空想しては同級生である小野道代に話し、ノートに小説として書いていくこととなった。

中学三年生の時、両親の手伝いでレジ打ちをしていたことがきっかけでハムさんとあだ名をつけていた公一郎という高校生と知り合い、やがて付き合うことになった。

公一郎は北海道大学に進学して遠距離恋愛になってしまったが、手紙のやり取りの中で自分の書いた小説を読んでもらっていた。また、道代とも文通でやり取りをしていた。

二十歳になると公一郎と式を挙げたが、道代から松木が絵美の作品を気に入り、弟子にしたいという話を聞き、作家になるために東京に行きたいと思うようになる。

しかし、公一郎や両親は反対し、それでも抑えられなかった絵美は黙って東京に向かおうとするが、駅には公一郎が待ち伏せをしていた。

・小野道代

小学校六年生の時に、銀行員の父の転勤の都合で絵美の小学校に転校してきた。

絵美の創作の才能を褒めてくれた唯一の友達。

しかし、中学一年の時に別の街に引っ越してしまった。

その後も絵美とは文通でやり取りをしていたが、東京の有名な女子短大に入学すると、作家の松木流星の元にお手伝い兼弟子として住み込むことになった。

しかし、松木の家に出入りしている編集者と関係を持ったことから破門を言い渡され、出ていくことになった。

また、道代は絵美の作品を松木にも見せていて、それが松木の目に留まったことで、弟子として絵美を迎えたいという話になった。

・公一郎(ハムさん)

絵美の両親の営むパン屋の常連。ある日、絵美が釣り銭を間違えたことがきっかけで知り合い、やがて付き合うことになった。あだ名のハムさんは、いつもハムサンドとハムロールを買っていたから。

北海道大学に進学し遠距離恋愛になるも手紙のやりとりはしていて、そこで絵美の書いた小説を読んでいた。

卒業後は生まれ故郷に戻り、絵美が二十歳の時に式を挙げた。

そんなある日、松木流星という作家が絵美の作品を評価して、弟子として招き入れたいと打診してきた。

皆で反対するも、絵美は作家になるという夢が捨てきれず、誰にも言わずに東京に行こうとしたが、公一郎は駅で待ち伏せていた。

絵美が駅に向かうと、公一郎が待ち伏せていましたが、その後のことは書かれていません。

この後から登場する人物たちは、この続きを考えていくことになる。

過去へ未来へ

原稿(智子

小樽港へと向かうフェリーの中での出来事を綴った話。

・智子(35)

十五歳の時に父と二人で北海道に行ったことがあって、今回はお腹の中の女の子と二人で北海道を目指し、向こうで夫の隆一と合流する予定になっていた。

フェリーで萌と知り合い、『空の彼方』を譲り受ける。

智子はこの作品に『一度は家に連れ戻されるも、理解を得て東京に行けることになった』という結末を考えた。

一回目の北海道旅行の後、父を直腸がんで亡くしていて、自身も妊娠発覚後に直腸がんが発見された。

隆一と相談の末、赤ちゃんを産んだ後で治療することを選択。そして思い出を残すために、北海道に旅行に行くことを決めた。

最後は父との思い出を振り返り、赤ちゃんを産んで自分も生きる決意を固める。

・萌

中学生くらいの女の子で、誰かに一緒に来ているようだが、その相手は登場しない。

智子と話していく中で、『空の彼方』を智子に託した。

ちなみp.69で、ケータイのくだりで顔色がくもるが、これが後の伏線になっている。

・隆一(38)

智子の夫。建設会社勤務。智子とは友人の結婚式の二次会で知り合った。出産に関して、智子の意思を第一優先に考える優しい夫。

花咲く丘

原稿(智子拓真

プロのカメラマンになることを諦めるために北海道を訪れた拓真と智子のやりとりを描いた話。

・柏木拓真(30)

実家は、山陰地方の小さな海辺の街にあるかまぼこ工場。

プロのカメラマンを目指していたが、父が亡くなったことでかまぼこ工場を継ぐことになり、夢と決別するために北海道を訪れた。

家族で北海道に旅行で来たことがあり、その時に自分の撮った写真だけがうまく撮れていたことを褒められ、それがきっかけで写真家を目指すことになった。

しかし、その熱意は失せてしまって写真と関係ない会社に就職するも、再燃して写真専門誌のコンクールに応募して入賞、会社を退職して写真の専門学校に通うことにした。

後に黒木譲二という一流の風景写真家の助手にならないかと声を掛けてもらうが、父が亡くなったことで自分がかまぼこ工場を継がないといけなくなり、夢が断たれた。

旅の途中で智子と知り合い、彼女の撮る写真には思いがあり、自分にはないものだと内心凹んでいた。

そんな中、智子から『空の彼方』を譲り受ける。

拓真は、絵美には作家として生きていく覚悟がないと断じ、「公一郎と共に家に帰るが、それは夢を諦めたわけではない。いい作品を書けば、田舎だろうがどこだろうが必ず見てくれる人はいる」という結末を考えた。

それは拓真自身の決意でもあった。

かまぼこ工場を継ぐことが夢を諦めるわけではない、魂が求める作品を生み出すためにあえて夢を突き放すのだと言い聞かせ、カメラを手に取った。

・拓真の姉(34)

拓真の四つ上。独身で、実家の隣町の小学校で教師をしている。

・拓真の兄(32)

拓真の二つ上。東京にある一流証券会社に勤めていて、妻と二人の子供がいる。

ワインディング・ロード

原稿(拓真綾子

志望した会社に内定が決まっていたが、自分には才能がないと自信が持てないでいる綾子と拓真の出会いを描いた話。

・芝田綾子(22)

本を読むのが好きで、大学の文芸同好会に入り、そこで剛生と付き合うことになったが、後に破局。

趣味のサイクリングで自己PRし、志望していたテレビ番組の制作会社に内定が決まり、大学生最後の夏に北海道にサイクリングに来ていた。

ある日、コンビニの駐車場で、中学生男子のケンカに遭遇。

その場にいた拓真が仲裁に入り、それがきっかけで後に再会した時に話すことに。

そこで物語が作りたいという欲求を拓真に引き出してもらい、『空の彼方』を譲り受ける。

綾子は「物語が作りたいか、作りたくないか、それだけであとのことはいい」という結末を考えた。

そして、自分はおもしろい物語を作る人になるとメールで剛生に宣言すると、彼のアドレスを削除した。

・剛生

綾子の元恋人。作家を志望していてプライドが高く、いつも綾子に対して上から目線なことを言う。

綾子がテレビ番組の制作会社に内定が決まった時も、嫉妬から批判し、その二週間後には綾子の友人と付き合い始めた。

時を超えて

原稿(綾子木水

娘の夢を反対し、娘と妻に出ていかれてしまった木水と綾子の出会いを描いた話。

・木水(42)

地元の市役所勤務。大学四年生の時に当時付き合っていた妻が妊娠し、娘の美湖が生まれた。

美湖がアメリカで特殊造形の仕事をしたいと言ったことに反対し、妻と娘に出ていかれてしまう。

今回の旅は、若い頃の気持ちを思い出すためのものだった。

バイクで北海道を回っていく中で、娘と年齢の近い綾子と知り合い、相談していく中で『空の彼方』を譲り受ける。

木水は絵美と美湖を重ね、自分が娘の理解者であると考え、「今ある問題は、今、向き合うべきだ」という結末を考えた。

それは自分と美湖のことでもあり、しっかりと話した上で納得できるだけのことを美湖が言えば、アメリカへ行くのを許そうと考え、妻にその旨を書いたメールを送った。

・美湖(20)

木水の一人娘。

東京の専門学校に行きたいと伝えたところ、父に反対され、妥協点として、京都の短大に進学することになった。

しかし、それが美湖にとっては遅れと感じられ、志望した企業は全て不合格。

勉強し直したいとアメリカに行きたいことを伝えるも、父から再度反対され、母と一緒に京都に帰ってしまった。

湖上の花火

原稿(木水あかね

夢を追う恋人と別れ、仕事一筋で生きてきたあかねと木水の出会いを描いた話。

・あかね(42)

証券会社の営業で、現在の肩書は課長。脚本家を目指していた修と十年付き合っていたが、彼の夢に付き合いきれず破局。その後は誰とも結婚したいとは思わなかった。

恩師を囲む会に出席するために一人、北海道に来ていた。

そこで木水と出会い、彼が娘の夢のことで悩んでいることを知り、自分の感じていた疑問をぶつけていく。

そんな中で、木水から『空の彼方』を譲り受けた。

あかねは「二人は分かりあえず、絵美は東京に行き、公一郎は残ってこれまでのように働く」という結末を考えた。

それは公一郎と自分を重ねていて、今の自分を肯定する言葉だった。

・椚田修

あかねの元恋人。脚本家になることを目指していたが、次第にあかねと価値観がずれてしまい、破局。

後に絵美の書いた「すずらん特急」(後述)を原作としたドラマを手掛け、その中であかねとの思い出のシーンを入れていた。

街の灯り

原稿(あかね佐伯公一郎ハムさん))

友人である清原征四郎を囲む会に出席していた佐伯公一郎に、あかねから原稿が渡されるまでを描いた話。

ここで『空の彼方』が単なる創作ではなく、実話を元にしていたことが判明する。

・佐伯公一郎(65)

妻も同席するはずだったが、孫の萌のことが原因でボイコットされてしまった。

定年後も、高校の教員を嘱託で続けている。

ここの描写で、佐伯がハムさんであることが判明する。

萌が不登校になったことで説教するも、妻は萌をかばい、二人でどこかに旅行に行ってしまった。

『空の彼方』には現実の続きがあり、清原の伯父で東京の出版社で働いている人を代わりに紹介したというものだった。

この会にはあかねも参加していて、佐伯がハムさんだと気が付いた彼女は、清原経由で『空の彼方』の原稿を渡した。

ホテルに戻って読んでみると、それが妻の書いたものだと理解する佐伯。

そして、妻からメールが届いた。

・清原征四郎(65)

北海道大学経済学部教授。佐伯に依頼で、絵美に伯父を紹介した。

・松本敏郎(65)

佐伯の大学時代の同級生。

・千川守(65)

佐伯の大学時代の同級生。

・佐伯美和子

佐伯の長女。

・佐伯秀樹

佐伯の長男。

・佐伯亜紀

秀樹の妻。

・佐伯萌

秀樹と亜紀の娘。中学二年生。

旅路の果て

原稿(智子

萌が智子に『空の彼方』を渡す冒頭のシーンまでを描いた話。

・佐伯萌

絵美と同様、物語を書くのが好きで、同じ志を持つ麻奈と友達になった。

しかし、彼女の才能に嫉妬し、同級生たちに彼女が自分の小説を小説投稿サイトにアップしていることを教えてしまう。結果、麻奈はいじめにあい、作品を削除。不登校になってしまった。

それがきっかけで自分も不登校になってしまい、そのことで祖父から説教を受け、祖母と二人で北海道旅行に行くことになった。

旅先で智子と知り合い、祖母が書いた小説『空の彼方』を渡す。

また『空の彼方』の結末を知り、麻奈に謝ることを決意する。

・江藤麻奈

萌の同級生。小説投稿サイトに更科エマというペンネームで「ガラスちゃん」という作品を投稿していた。

しかし、これがきっかけでいじめにあい、不登校になってしまった。

・佐伯絵美

『空の彼方』に出てくる絵美。

彼女はハムさんに東京の出版社で働く清原義彦を紹介してもらい、二人で彼のもとを訪れ、最初で最後の小説「すずらん特急」が刊行された。売れなかった。

おわりに

未完の物語の結末をそれぞれが考え、でも読者に丸投げするわけではなく、きちんと結末も用意されていて、しっかりと消化された上で感動できる傑作でした。

また明るい未来が待っている話が意外と少なく、明るいとしてもその道は険しいものであることが印象的でした。

これこそ生きるということだなと考えさせられ、今の自分ならこの物語にどんな結末を考えるだろうと真剣に考えてしまいました。

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