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ネタバレ解説!『ヴァチカン図書館の裏蔵書』あらすじから結末まで!

harutoautumn
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今回ご紹介する本は、篠原美季さんの「ヴァチカン図書館の裏蔵書」です。

名前の通り、ヴァチカンが舞台の話で、宗教がストーリーと密接な関係にあるので、「ダ・ヴィンチコード」が好きな方であれば、好きな設定だと思います。

本の紹介に入る前に、この作品は新潮社のレーベルの一つである新潮文庫nexより刊行されています。

買って読み始めるまで全く気にしていなかったのですが、聞いたことのないレーベルだったので調べてみました。

https://www.shinchobunko-nex.jp/

新潮文庫nexは、新潮文庫100周年を記念して刊行されたレーベルで、コンセプトは「キャラクターと物語の融合を目指し面白い作品を刊行する」。

nexには二つの「次」という意味が込めれていて、今までの新潮文庫がカバーできていなかった「次」の領域へ、漫画やライトノベルの「次」に手に取れる小説へ、という意味だそうです。

新潮文庫は、「新潮文庫nexはライトノベルではない」と言い切り、ライトノベル側から文芸側への橋渡し的な存在と位置づけています。メディアワークス文庫なんかがいい例ですね。

要は魅力的なキャラクターがメインの話だけど、正統派な文章と物語も売りだということです。

「とらドラ」の竹宮ゆゆこや「サクラダリセット」の河野裕、「心霊探偵 八雲」シリーズの神永学、相沢沙呼などライトノベルも書くけど実力も確かな作家さんが勢ぞろいし、これからが楽しみなレーベルです。

そんな期待のレーベルから刊行された本作ですが、まずはあらすじを。

ローマ大学に留学中の玄須聖人は、教授の依頼でヴァチカン秘密記録保管所を訪れ、企画展に向けて幻の資料を探すことに。その頃、ドイツとオーストリアで魔女狩りを彷彿とさせる猟奇殺人が起こる。悪魔信仰者の存在がちらつくなか、疑惑の目は教皇庁にも向けられる。図書館の膨大な蔵書に謎を解く鍵があると調べ始める聖人と神父のマリク。だが、事件の真相は意外なところに……。

「BOOK」データベースより

以下ネタバレになります。未読の方はご注意を!

先に気になったことを。

序盤で事故を装って早々にラーメ教授がステージ脇に退場しますが、その人を犯人にするというのは些か卑怯な気がしました。

しかも教授が犯人と分かってから、彼が犯行に及んだ理由が判明していくという単なる答え合わせのような推理は、かなり拍子抜けでした。

残り数十ページまで話が広がりっぱなしだったので急いでまとめにかかったのだと思いますが、もう少しうまくまとめていれば序盤の良い雰囲気を壊さずに作品としての完成度も上がってたのではないかと思います。

ともあれ、序盤から魔女狩りを彷彿とさせる凄惨なシーンが繰り広げられ、また宗教に関係する名称が数多く登場し、知的好奇心が非常にくすぐられました。

またレーベルのコンセプト通り、キャラクター一人一人に魅力がつまっていて、かつキャラ全体のバランスもくど過ぎずちょうと良かったので、ライトノベルから参入する読者にも受け入れやすい作風ではないかと思います。

読了後も作中に登場した数々の歴史に対して興味が止まなかったので、簡単にではありますが調べてみました。

作中でも説明されていますが、皆さんの参考になると幸いです。

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ヴァチカン市国

国土面積が世界最小の国家かつ世界で唯一の宗教国家。ローマ教皇庁によって統治されるカトリック教会と東方典礼カトリックの中心地、いわば「総本山」です。3000人以上の人間が勤務しているが、そのほとんどがヴァチカン市国外に住んでいて、市民として認められているのは800人ほど。

ヴァチカン秘密記録保管所

17世紀にパウルス5世によってヴァチカン図書館から分離され、外部からの閲覧が固く禁じられ内部のごく一部の学者のみに閲覧が許されていたが、1881年にレオ13世によって年に100人程度の外部研究者にも公開されるようになった。

また秘密(Secret)というと怪しい雰囲気がするが、どちらかというと私的(Private)という意味が近く、歴代の教皇の私的が文書が数多く保管されている。

日本の宗教事情

日本には宗教の自由があり、これを信仰しなければいけないという縛りはない。そのため無宗教人口が多い日本だが、そのおかげで宗教間の争いがなく、平和だとも言えます。とはいうものの、実は日本は仏教大国の一つとして数えられ、古来から今に至るまで様々な宗派があります。

しかし、それは歴史的な話であって、実際は仏教がどういうものか知らない人がほとんどで、結局は無宗教ということなのでしょう。こうなった原因の一つとしてオウム真理教が挙げられます。あの事件以前では、日本人は今よりもずっと仏教に対する知識があり、信仰心もありました。しかしオウムの事件以来、宗教=怖いものというイメージが定着してしまい、仏教離れが急速に進んだようです。

しかし、新興宗教と古来からある宗教は歴史そのものが違うので、一括りにしてよいものではありません。僕も今回初めてこの件について考えましたが、こういう考えが正しく広まれば、また違った結果になるかもしれませんね。

また作中で聖人も言っていましたが、無宗教だから神の存在を信じていないかというと、そんなことはありません。目に見えない何かにお祈りをした経験がある方がほとんどだと思います。

世界から見れば、日本の宗教事情ははかなり特異的だといえます。

魔女狩り

魔女、または妖術を使った疑われた人たちが受けた裁判、刑罰、私刑などの迫害を指す。意外なことにこの迫害は民衆が中心となって行ったとされていて、15~18世紀で全ヨーロッパで4~6万人が処刑されたと言われている。

また魔女という言葉から誤解されがちだが、決して女性に限ったことではなく、犠牲者には男性も多分に含まれていた。

妖術に対する怖れはいつの時代でも共通で、世界の各地で同じようなことが行われていた。

その中でヨーロッパにおける魔女狩りが最も有名とされている。

ベナンダンディ

一般に、16世紀から17世紀にかけて、ヴェネチア周辺に現れた悪魔信仰者の集団のことを指す。ベナンダンディは同じ夢を見ることができ、夢の中で魔術を行うとされているが、400年前の記録を最後に歴史上から消えている。

悪魔信仰とあるが、彼らが相手にしていたのは精霊など自然現象が具現化した神々で、主に疫病神や干ばつや洪水を引き起こす天候神のことを指す。それらを相手どって、夢の王国で戦い、ベナンダンディが勝利するとその年の豊作が約束されたと言われている。

マランダンティ

元々はベナンダンディだったが、夢で人を呪うなど本来のベナンダンディの役目を忘れた悪を為す亜種のベナンダンディのことをマランダンティと呼び、区別している。

正規のベナンダンディは、ある時期からマランダンティがかけた呪いを解くことを使命としていた。

かもめのジョナサン

聖人がかもめといったらジョナサンと言っていたが、元ネタはリチャード・バックによる小説「かもめのジョナサン」。1970年にアメリカで出版され、全世界で4000万部が売れているベストセラー。

日本でも270万部を超える大ヒットを記録した。

タイトルの通り、かもめが主人公の話だが、絵本的な内容というより宗教的解釈もできる深い内容になっている。

気になる方は読んでみてください。

おわりに

物語もそうですが、題材となった歴史も調べてみると意外と面白いですよ。

この機会に新しい世界に触れてみるのはいかがでしょうか?

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