『マレ・サカチのたったひとつの贈物』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
誰か、私を留めて。どこかへ跳び去ろうとする私を―世にも奇妙な「量子病」を発症して以来、自らの意志と関係なく世界中をワープし続ける稀。一瞬後の居場所さえ予測できず、目の前の人と再び会える保証もない。日々の出会いは儚く、未来はゆらぐ。人生を積み重ねられない彼女が、世界に爪痕を残すためにとった行動とは?『天盆』『青の数学』の著者が放つ、感動の青春長篇!
「BOOK」データベースより
『量子病』という耳慣れない単語に興味がわき、概要もよく見ずに購入しましたが、これがとても心の残る作品でした。
これが二作目?と疑ってしまうほどの完成度で、そこに実際に存在するかのような世界の描写、巻末の金原瑞人さんの解説から引用するなら『ウィットに富んだ言葉』が特に印象的でした。
時に感心し、時に笑い、時に感動し。
主人公であり、『量子病』に冒された女性・坂知稀と一緒に世界中を旅して、読者はタイトルの意味にたどり着きます。
正直、解説すればするほどこの小説の魅力を削いでしまうのではないかと懸念もしているのですが、それ以上にこの小説の存在を一人でも多くの人に紹介したいと思う自分がいます。
そこでこの記事では、本作を読んで僕が感じた魅力を率直に書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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量子病とは
本作のキーボードである『量子病』。
これは便宜的につけられた病名で、発病者はこの名称がつけられてからようやく十名に達したというような非常に稀な病気です。
この量子病に冒された人は自分の意志と関係なく世界中をワープします。
そのタイミングは本人にも分からず、瞬きをした次の瞬間、違う場所に立っていることだってあり得ます。
主人公の坂知稀は量子病によるワープを繰り返す中で、いくつかの法則を見出していきます。
① 誰でもいいが、人の前にワープする。
② 身に着けた青いものだけをワープ先に持っていくことが出来る(青い服、青い下着など)
冷静に考えると、とんでもない病気ですよね。
一度のワープによって、さっきまで目の前にいた人と今生の別れになることだってあるわけですから。
しかも②の条件に気づくまでに、稀は裸で見知らぬ人の前に跳んでしまったこともあります。
幸い、稀は物理学を学んでいたこともあって症状から法則性をすぐに見出し、順応していきます。
また様々な語学を学ぶことによって、世界中の人たちとコミュニケーションをとっていく。
そんなバイタリティー溢れる彼女に、読者は引き込まれていきます。
現代社会の行き着く先を暗示
本作の世界観は近未来で、今以上に情報が重視される世界。
顔も知らない人とでも繋がれ、誰でも平等に情報にアクセスすることが出来る社会。
一方で世界経済は下降していき、それを維持することに必死な富裕層。
低所得者はさらに貧しくなり、テロが頻発して世界は混沌に包まれています。
そして、人々は永遠を求めて、ネットに意識を乗せることを考えつきます。
稀は世界中を見て、この世界の流れに対して彼女はどんな答えを出すのか。
世界のこれからを暗示したような内容に、読者は他人事ではいられません。
それが本作のリアリティに繋がっているのかもしれませんね。
会話で遊ぶ
序盤の文章でも触れたウィットに富んだ言葉、巧みな言葉遊び。
僕としては、この部分が本作を気に入った最大の要因だと思っています。
例えば、よく耳にするシュレーディンガーの猫の話。
あくまで思考実験ですが、内容は以下の通り。
『箱を開けない状態では、猫は、生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせの状態である。蓋を開けて観測した瞬間、生か死かどちらかの状態に収束する』。
これに対し、稀は「猫をそんなことに巻き込むな」と言います。
それから食品会社の工場員がどうやって官僚を暗殺できるんだ?との問いに「満腹殺?」なんて平気で答える。
もちろん彼女もジョークのつもりで言っていますが、こんな言葉遊びが至るところにちりばめられています。
あと、世界中で出会う人たちの持つ歴史の美しさは、目を細めて微笑んでしまうほどでした。
たったひとつの贈り物
物語の終盤、量子病の意味を知る稀。
そして、世界中を跳んでいるため何も持たない自分が唯一あげられるものとして、あるものを提示します。
これまでの旅の答えがタイトルに収束した時、そこに真実を見たような気がしました。
特別なことではない、けれど大切なこと。
ここで書いてしまうのが非常にもったいないと感じてしまったので、答えはぜひ本書を読んで確かめてください。
僕は、結末を知らずに本書を読めるあなたを心底うらやましく思います。
おわりに
本作は時間軸、場所が頻繁に入れ替わるので、あらすじ立てて説明するのが難しいため、このような抽象的な記事になってしまいました。申し訳ありません。
しかし、その構成のおかげで前に見た何の変哲もない話が終盤の伏線になっていたりと、驚きと感動が至るところにちりばめられています。
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