『逢魔が時に会いましょう』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
大学4年生の高橋真矢は、映画研究会在籍の実力を買われ、アルバイトで民俗学者・布目准教授の助手となった。布目の現地調査に同行して遠野へ。“座敷わらし”を撮影するため、子どもが8人いる家庭を訪問。スイカを食べる子どもを数えると、ひとり多い!?座敷わらし、河童、天狗と日本人の心に棲むあやしいものの正体を求めての珍道中。笑いと涙のなかに郷愁を誘うもののけ物語。オリジナル文庫。
「BOOK」データベースより
本作は2000年に発表された短編二作をリメイクし、さらに短編を一作書きおろして生まれた作品です。
分かりやすいキャラ設定にお決まりの流れ、そして明かされる妖怪の歴史や真実。
素朴で親しみやすく、とてもリラックスして読むことが出来ました。
荻原さんの作品は本作が初めてで、他の作品も評価の高いものが多かったので、今後チャレンジしたいと思っています。
この記事では、そんな本作の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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座敷わらしの右手
大学四年生の高橋真矢は映画作品を撮ってプロデビューしたいという夢があり、もう少し夢を見続けるために大学院への進学を決めます。
そんな時、ゼミの安永教授から民俗学の布目准教授がフィールドワークのスタッフを探しているから力になってほしいと頼まれ、嫌とは言えずに布目の元に向かう真矢。
そこで出会ったのは、見た目は若いけれど、身なりに無頓着な男で、布目は『タカハシシンヤ』という男が来るものと勘違いしていました。
真矢はすかさず訂正しますが、それでもいいやと布目は彼女を『シンヤ』と呼び、彼女にフィールドワークの行き場所を告げます。
それは、遠野でした。
目的も告げられず、しかも『好きなんだよね、女の子のほうが』という布目の発言に真矢は警戒していましたが、女の子のことを好きなのは座敷わらしで、その座敷わらしを調査するために遠野に来たことを教えられます。
遠野と言えば、柳田國男の執筆した『遠野物語』で有名な土地。
最近遠野では座敷わらしの目撃証言が増えているという話ですが、真矢は布目がどこまで本気なのか分からず、ただついて行きます。
しかし、久保という夫妻と八人の子供が住む家に向かった時、事態は急変。
八切れのスイカを子供たちに与えた時、なぜか一人分だけ足りなくなり、点呼をとると一人喋れない赤ちゃんがいるにも関わらず八人の声が聞こえます。
真矢がその現場を撮影してあとで確認すると、スイカ目指して伸びる手はなんと九本ありました。
その夜、宿で座敷わらしについて教えてくれる布目。
かつては食糧問題を解決するために、生まれた子供たちを間引いており、その亡くなった子供の魂が座敷わらしとして見えるのかもしれないということです。
真矢はこの時点でもまだ半信半疑でしたが、寝静まった頃、布目が離れた場所で寝ているにもかかわらず真矢の布団に近づいて息をかけてくる何かに気が付きます。
起きた時にはいなくなっていましたが、これでもう冗談とは笑い飛ばせなくなっていました。
翌日、今度は座敷わらしが出るという幼稚園に向かうと、早速一人分のイスが足りないことに気が付きます。
しかし、担任の先生も含めて誰もどれが座敷わらしか分かりません。
次に一人ずつ写真を撮っていきますが、やはり一人多い。
それでも座敷わらしが誰か分からずにいると、布目は自分の質問に対して早く手を挙げた子が勝ちだと遊びを提案します。
園児たちは我こそはと勢いよく手を挙げ、場が盛り上がっていきます。
いくつか質問をして、それから唐突に『座敷わらしのひと』と布目が質問します。
すると、一人だけ手を挙げて園児がいます。
その子はどこにでもいそうな園児で、他の園児たちもその存在は知っていたが、誰も名前を知りませんでした。
やがて失態に気が付いた座敷わらしはデジカメに魂をとられると怯えてしまいますが、真矢は撮影をやめ、中のSDカードを座敷わらしに渡します。
座敷わらしはそれを受け取って姿を消すと、園児たちは元の人数に戻っていて、データの消去されたSDカードも返ってきました。
帰り道、データが消えてしまったことを謝る真矢ですが、布目はこのことを発表するつもりはなく、その存在を確認できただけで十分だと言います。
真矢は布目の民俗学への姿勢、そしてその学問の面白さに気が付き始めていました。
河童沼の水底から
親からの仕送りを止められ、金欠に陥っていた真矢。
そんな時、布目が日当を出すからフィールドワークの助手としてついてきてほしいと言われ、真矢が断るはずありません。
こうして真矢はまたしても調査に向かいますが、今回の目的は河童でした。
二人は三ツ淵という河童伝承の残る土地に向かい、早速調査を開始します。
道中、布目から河童について説明があり、目撃情報の大抵は動物を見間違えたものだということ。
しかし、布目はそれ以外の可能性も考えていました。
彼が運営するブログに三ツ淵で撮影した河童と思われる画像が送られてきましたが、その場で間違いを指摘することができず、それを確認しようと考えていました。
現地に着くと、そこは『カッパの里』として数年前に村起こしした場所でした。
二人は宿泊予定の民宿で取材予定でしたが、そこで真矢は河童を見つけて驚愕します。
しかし、店主の長兵衛からあれはヤマちゃんという人間だと教えられ、真矢は安心しますが、なぜ彼がそんな姿をしているのか、またなぜ旅館に顔を出してはいけないのかは謎です。
二人は長兵衛の自慢話を辛抱強く聞き、ついに目的のものを見せてもらいます。
幾重にも封をされた箱の中に入っていたもの、それは河童の手でした。
得意げな長兵衛でしたが、あとで布目があれはカワウソの前足だと教えてくれ、河童の存在自体が急に怪しくなってきます。
しかし、それでも調査は続きます。
布目から、動物の見間違い以外で子供の水死体なども考えられると言われ、ここでも座敷わらしの時と同様、暗い歴史が垣間見えます。
翌日、二人は河童沼に向かい、なぜか釣りを始める布目。
訳が分からないまま真矢も手伝いますが、餌の種類を変えても何もかからず、真矢はだんだん馬鹿らしくなってきます。
やがてトイレに行きたくなった真矢は、布目の目から隠れるように岩の陰で用を済ますと、沼で何かが泳いでいることに気が付きます。
布目もそれに気が付き、用意したウェットスーツで沼に飛び込みます。
その時、釣竿に大きな反応があり、真矢は引き上げようとしますが、足を滑らせて沼に落ちてしまいます。
カナヅチな真矢が水の中でもがく中、目の前に見たこともない生物の顔が現れて驚きます。
何とか布目に引き上げてもらうと、彼は真矢の目にした生物を手に上がってきます。
その生物の正体は、カミツキガメでした。
あとから、写真を見た段階で布目はカメだと当たりをつけていたのだといいます。
その後、布目は人間を河童と見間違える理由を説明し、旅は終わるはずでした。
しかし、帰りのバスの車内から真矢の見たもの。
それは岸部で魚をくわえているように見えるヤマちゃんで、その背中は甲羅のように真っ黒でした。
彼が人間なのか、本物の河童なのか、真矢には分かりませんでした。
天狗の来た道
本作のための書きおろし作品。
真矢は布目の調査に同行し、実家のある広島に近い、霧北に向かいます。
今回、布目が調査したのは『天狗』でした。
まず二人は天狗祭りに参加し、調査を開始します。
さらに翌日、二人は山に登って調査をします。
布目が探しているもの、それは昔の製鉄所『たたら場』の跡地でした。
彼は、天狗はたたら場で働いていた外国人技術者ではないかと仮定し、その証明のためにここにたたら場があったことを確認しに来たのです。
二人は次から次へとたたら場があったことを示す証拠を見つけ、少しずつ真実に近づいていきます。
それに気をよくした真矢はさらに証拠を探そうと別行動をとり、やがて赤い錆のついた十字架を見つけます。
それを手に布目を驚かせようと考えますが、気が付けば山で迷子になっていました。
助けを呼んでも誰も来ず、真矢は夜になるまで山を歩き回ります。
やがて笑い声が聞こえてきて、真矢は声のする方に向かいます。
すると、そこにはお面をかぶった六、七人の男たちが酒盛りをしていて、真矢は助けを求めますが、言葉が通じないのか彼らは不気味に笑ってばかり。
本当に人間なのかと不安になる真矢ですが、彼らは真矢の持つ十字架に気が付いた途端に叫びだし、いなくなってしまいます。
それと同時に真矢も意識を失い、翌朝目覚めると、布目の声が聞こえてきます。
真矢も大声を上げると、ようやく気が付いてくれて無事に救出されます。
真矢は見つけた十字架を渡そうとしますが見つからず、代わりに彼らから渡されたコインを見つけます。
さらに布目が誰かに殴られたことを知り、それが自分の父親の仕業だと知り、驚くのでした。
念のために入院することになった真矢。
病室に布目がお見舞いに現れ、父親が二人が交際していると勘違いしていることを教えてくれ、気が付けば布目に好意のような感情を抱いていました。
しかし、布目は真矢の持つコインに興味を持ち、それがフローリン硬貨であることを教えてくれます。
それは中世のヨーロッパで流通していた硬貨で、なぜか新品でした。
そこで真矢の会った男たちのことを聞くと、どうやら彼らはトロールやゴブリンといった西洋の妖精であることが分かり、製鉄の指導に来たヨーロッパ人についてきたことが推察されました。
そして、それを目撃した人たちが天狗だと思ったのかもしれません。
布目はさらに詳しく調べるためにヨーロッパに行くことを決意し、真矢も同行を申し出ます。
二人はお互いに好意を感じながらもそれを隠し、それでも距離を近づけ、新たな妖怪調査に向かうのでした。
おわりに
布目と真矢のやり取りに惹かれる一方で、妖怪が知られるようになった背景、歴史も詳しく解説されていて、そういった学問への興味を湧き立たせてくれる作品となりました。
怖い、けれど不思議と惹かれてしまう。
そんな妖怪に出会いたい人には、ぜひ本書をおすすめします。
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