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『未来のミライ』原作小説のネタバレ解説!あらすじから結末、考察まで!

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小さな庭に小さな木の生えた小さな家。ある日、甘えん坊のくんちゃんのもとに生まれたばかりの妹がやってきます。両親の愛情を奪われ、戸惑うばかり。そんな時、くんちゃんは未来からきた妹・ミライちゃんと出会いました。彼女に導かれ、時をこえた冒険へ旅立ちます。むかし王子だったと名乗る謎の男、幼い頃の母、父の面影を持つ青年。様々な出会いを経て、くんちゃんが辿り着く場所とは?細田守監督が書き下ろす原作小説!

「BOOK」データベースより

『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』などで有名な細田守監督の最新作です。

この記事では、映画ではなく書き下ろし小説の解説をしますのでご注意ください。

本作では『家族』がテーマとして掲げられていますが、子どもが両親や兄妹の大切さに気が付くまでを描いたもので、これまでの作品とは視点がやや異なっています。

細田監督には現在、五歳の息子さんと二歳の娘さんがいて、そこから今回の物語は着想を得たといいます。

以下、細田監督へのインタビューからの抜粋です。(ダ・ヴィンチニュースより)

『自分自身は一人っ子で、子どもを育てたことで兄妹が“母の愛”を奪い合う攻防があると知りました』

『彼らの目線から“人生”をという大きなテーマを見るとどうなるのか。そこから見つめ直せば、世界の新たな面白さが発見できるのではないかと思いました』

これまで何度も家族をテーマとして取り上げてきましたが、それでも描き切れていないというのだからすごいですよね。

その思いは強く、それがしっかりと反映された家族の物語となっています。

この記事では、そんな本作の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

家族

磯子の街に小さな庭があり、小さな木が生えた小さな家があり、そこに太田という若い夫婦が住み始めます。

しばらくすると『ゆっこ』と名付けたミニチュアダックスフントを飼い始め、やがて二人の間に子どもが生まれ、『訓(くん)』と名付けられました。

ミライちゃんの誕生

子どもが大きくなることを見越して、建築家のお父さんは家を建て替えます。

くんちゃんは四歳になり、家には新しい家族が増えます。

生まれた赤ちゃんは女の子で、くんちゃんの妹です。

しかし、くんちゃんは『妹』という存在がピンとこず、不思議だと繰り返します。

こうして新たな家族を迎えた太田家ですが、ここからが大変です。

お母さんは仕事復帰するため、お父さんはフリーの仕事をこなしながら主夫として家のこともしないといけません。

赤ちゃん中心の生活。

次第に両親がくんちゃんに構ってくれる時間は減り、くんちゃんはそれが不満で仕方ありません。

これも妹のせいだとくんちゃんは妹にちょっかいを出し、泣かせては余計にお母さんから怒られ、不満は募っていきます。

赤ちゃん好きくない、とくんちゃんは泣いてしまいます。

愛を奪われたくんちゃん

中庭で泣いていると、知らない笑い声が聞こえます。

振り返ると、そこは中庭のはずなのに古い教会の跡地に変わっていて、そこにあるベンチに没落した貴族のような風貌の男が足を組んで座っていました。

その男は今のくんちゃんの気持ちを『嫉妬』だとズバリ言い当て、自分のことはくんちゃんが生まれる前のこの家の王子様だと名乗ります。

彼はくんちゃんが生まれるまではどれだけ愛されていたのかということを語り、それはくんちゃんにも覚えがある、というよりも今がその状態でした。

くんちゃんはこの男は誰なんだろうと不思議に思いますが、ふと見るとたまご型のゴムボールがあり、それを投げてみます。

すると男はそれを素早くキャッチし、くんちゃんに戻します。

その動作を何回も繰り返すうちに気が付きます。

その男は、ミニチュアダックスの『ゆっこ』だったのです。

くんちゃんはゆっこのお尻から生えたしっぽを引き抜くと、それを自分のお尻に突き刺します。

すると今度はくんちゃんが犬になり、家の中を駆け回ります。

両親はくんちゃんのことをゆっこと呼び、くんちゃんはそれが面白くて仕方ありませんでした。

その後、気が付けばくんちゃんは人間に戻り、中庭も元の状態に戻っていました。

そしてその夜、ついに妹の名前が決まります。

女の子は『未来』と名付けられました。

未来のミライちゃん

三月三日。

ミライちゃんは三ヶ月を迎え、太田家では女の子のお祝いとしてお雛様を飾っていました。

ミライちゃんの右手には赤い染みのようなあざがありますが、それ以外は何もなく健康に育っていました。

翌日。

お母さんは職場に復帰し、お父さんが家事や子育てをする生活に変わりましたが、お父さんはこれまであまりやってこなかったせいで要領が悪く、それに加えて在宅での仕事もこなさないといけないのでとてもくんちゃんの相手などしていられません。

くんちゃんはミライちゃんと遊ぼうとしますが、まだ三ヶ月なので言葉など分かるはずもありません。

またしてもくんちゃんは不満を募らせ、中庭に出ます。

すると、中庭はいつの間にか熱帯の植物で埋め尽くされていました。

ゆっこが人間になった時と同様、おかしな世界に迷い込んでしまったようです。

くんちゃんが至る所を観察していると、見知らぬ女の子が立っていました。

紺のセーラー服に赤いスカーフ。

大きな瞳で、肩まで伸びた黒髪。

そして、その中学生くらいの女の子はくんちゃんのことを『おにいちゃん』と呼び、くんちゃんは不思議に思います。

彼女はこれまで叩かれたり泣かされたりしたことに腹を立て、今はお雛様が出しっぱなしになっていることに腹を立てているようです。

くんちゃんの視線の先。

少女の右手は赤いあざがあり、くんちゃんは彼女が未来のミライちゃんであることに気が付きました。

なんでここに未来のミライちゃんがいるのか分かりませんが、彼女はくんちゃんに構わず続けます。

お雛様は三月三日を過ぎても出しておくと、一日につき一年婚期が延びると言われ、ミライちゃんはそれを気にしていたのです。

不毛なやりとりの末、くんちゃんがお父さんの注意をそらせている間に、ミライちゃんがお雛様をしまう段取りを考えますが、途中でお父さんはミライちゃんがいないことに気が付いて慌てます。

中学生のミライちゃんも慌てて姿を消すと、お父さんの目線の先に赤ん坊のミライちゃんが現れます。

お父さんは安堵して仕事に戻りますが、そこにまたしても人間の姿になったゆっこが現れ、くんちゃんに教えてくれます。

どうやら未来のミライちゃんと赤ん坊のミライちゃんは同時に存在できないようです。

お父さんがいなくなると、またしても未来のミライちゃんが登場し、今度はゆっこも手伝ってお雛様を仕舞うことに。

危ない場面もありましたが、何とかお雛様を仕舞うことに成功し、ミライちゃんも満足気です。

一緒のことをして仲間意識が芽生え、少しは自分のことが好きになった?と聞くミライちゃんですが、くんちゃんはそれでも首を激しく横に振り、ミライちゃんは怒っていなくなってしまいます。

ゆっこもいつの間にか犬に戻っていました。

昔のお母さん

言うことをなかなか聞いてくれないくんちゃんに手を焼くお母さん。

しまいには片付けの出来ないくんちゃんを怒鳴り、自己嫌悪します。

一方、くんちゃんの怒りの矛先はミライちゃんに向かい、おもちゃの電車で叩こうとします。

それをお母さんが間一髪のところでミライちゃんを抱き上げ、来客のためいなくなってしまいます。

怒りを抑えられないくんちゃんは雨上がりの中庭に出ます。

すると、今度は中庭が青々と広がる草原に変わります。

そして、またしても未来のミライちゃんが現れ、ミライちゃんのことを叩こうとしたことを責めます。

しかし、くんちゃんは、お母さんにとって自分だけがかわいくないのだと泣き出してしまい、さすがのミライちゃんもフォローを入れます。

それでもくんちゃんは泣き止まず、走り出します。

すると風景がまたしても変わり、気が付けば見知らぬ街の雨上がりの裏通りにいました。

ここはどこだろうと辺りを見渡すと、一人泣いている女の子を見つけます。

くんちゃんがなにが悲しいの?と声を掛けると、少女は顔を上げます。

その顔はお母さんの幼い姿そのものでした。

実は彼女は泣いておらず、手紙を書くために感情を込めた方が良いと嘘泣きしていたのです。

くんちゃんは少女について歩くと、大きな屋敷に着き、そこには『池田醫院』の表札がかかっています。

少女は猫が飼いたいというおばあちゃん宛の手紙を取り出すと、醫院の玄関にあった婦人靴の中に入れてその場を後にします。

少女の説明によると、動物が好きなのにおばあちゃんが動物アレルギーのため室内で飼うことを許可してくれず、許しを得ようと何度も手紙を出しているとのこと。

そして、少女にはすぐに泣く弟がいて、自分の方が母親に愛されていると自信を持っていました。

彼女の案内で、彼女の家に着きます。

家の中にあげてもらうと、弟のおもちゃで遊んでよいと少女はおもちゃ箱を次から次へとひっくり返します。

くんちゃんは驚きますが、少女はちらかってるほうが面白いと得意げです。

さらにお菓子もテーブル一杯にちらかし、くんちゃんにもすすめます。

くんちゃんは言われた通りに食べてみると、確かにいつも行儀よく食べるお菓子よりもおいしく、くんちゃんは少女のことが気にいりました。

二人はその後も無茶な遊びを次から次へと行い、バカ騒ぎします。

ところが、そこに突然母親が帰宅し、くんちゃんは有無も言わさずに帰らされます。

締められた扉の奥では少女が母親に強烈に怒られていて、くんちゃんは怖くなって逃げ出します。

雨が強く降り始め、まるで世界中が水浸しになるかのような勢いでした。

そして、気が付くとくんちゃんはベッドで寝ていて、お母さんとおばあちゃんがその様子を見ています。

くんちゃんはわたしの宝。

お母さんの言ったその言葉は、かつてのおばあちゃんの言葉でした。

お母さんは自分に子供が出来て、初めて手のかかるこの方が親に愛されることに気が付きます。

男の子は呆れながらあんたも手がかかったといい、いくつも例を挙げます。

それは今のくんちゃんそっくりで、そうやって誰もが成長してきたのだと考えさせられます。

お母さんは我が子の幸せを願う一方で、怒ってばかりで、こんな母親でいいのだろうかと悩みます。

それに対しておばあちゃんは、それが分かっていればいい、子育てに『願い』は大事だと話します。

その夜中、くんちゃんが目を覚ますと、眠るお母さんの目には涙がたまっていて、その姿が幼い日のお母さんと重なります。

だからくんちゃんは、あの時の少女にそうしたように、お母さんの頭を優しく撫でるのでした。

ひいじいじ

ミライちゃんの月齢が七ヶ月を越えた梅雨のある日。

くんちゃんはミライちゃんを抱っこしたお父さんに連れられて根岸森林公園に来ます。

自転車の練習をするためです。

ところが、くんちゃんは自分は補助輪つきの自転車に乗っているのに、同い年くらいの他の子達は補助輪なしで生き生きと自転車に乗っていることに気がつき、お父さんに補助輪を外すようお願いします。

お父さんは不安そうですが、くんちゃんは何度も頷き、補助輪なしで練習を始めます。

しかし案の定、乗ったもののどうして良いのか分からず、お父さんのアドバイスも虚しく、くんちゃんはあっさり倒れてしまいます。

その後も挑戦しますが、なかなか上達せず、ついに自転車が怖いと泣き出してしまいます。

その時、年上の男の子たちが現れ、くんちゃんに自転車の乗り方を教えてくれようとします。

くんちゃんは知らない子で不安だし、本当はお父さんに教えてほしい。

ところがミライちゃんが泣いてしまい、お父さんはくんちゃんを男の子たちに任せてミライちゃんの相手ばかり。

くんちゃんは届かない声で呼び、ずっとお父さんをみつめますが、一向に気がついてくれません。

ついにくんちゃんは泣き出してしまい、そのまま家に帰ることになります。

帰ってからもくんちゃんは泣き止まず、おとうさん好きくないの、と言って中庭に逃げ込みます。

被っていたヘルメットを外し放り投げると、ヘルメットは白樫の木の根本でバウンドし、まるで魔法にかかったように古めかしい革の飛行帽に変身します。

すると突然凄まじい風が巻き起こり、眩しい光が差し込み、耳をつんざくエンジン音が響き渡ります。

気が付くと、くんちゃんは薄暗い工場の一角にいました。

見渡すと組み立て途中のオートバイがあり、青年が作業していました。

青年はくんちゃんに気が付き、話し掛けてきます。

彼の言葉はどこかで聞いた覚えがありますが、思い出せません。

くんちゃんはとりあえず青年の後についていくことにします。

歩いている途中、くんちゃんには気になることがありました。

青年は右足だけつま先が外側を向き、引きずるように歩いているのです。

くんちゃんが足、痛くないと聞くと、青年は戦争の時に乗っていた船がひっくり返ってこうなったと話し、今はもう痛まないといいます。

しばらく歩くと二階建ての建物に着き、そこでは何頭もの馬が飼育されていました。

初めて馬を見るくんちゃんを見て、青年は馬装された馬に股がってみせ、くんちゃんにも乗るよう手を伸ばします。

くんちゃんは怖くて何度も首を横に降りますが、青年はくんちゃんの襟ぐりを掴み、強引に馬に乗せます。

思わずお父さんと呼び、青年は苦笑しながら怖がると馬も怖がると言います。

馬が歩き出す中、くんちゃんは思い出します。

先ほどの青年の言葉、あれはお父さんが言った言葉でした。

だから、くんちゃんはこの青年が若い頃のお父さんなのだと思いました。

馬に少し慣れると、青年は下を見ず、何があってもずっと先を見るのだとアドバイスします。

くんちゃんは言われた通りにすると、見えていた風景ががらりと変わり、いつの間にか怖くなくなっていました。

馬が走り出すと、いつの間にか馬がオートバイに変わり、くんちゃんは青年に憧れに似た気持ちを抱くようになっていました。

そして翌朝から、くんちゃんはお父さんに対して敬語を使うようになり、お父さんは不思議そうです。

そして自転車に乗りたいと言い、根岸森林公園に再び連れていってもらいます。

初めはうまくいきませんが、昨日の青年の言葉を思い出し、くんちゃんはひたすら遠くを見ます。

すると、いとも簡単に乗れるようになり、くんちゃんもお父さんも大喜び。

家に戻ると、お母さんにもそのことを伝え、たくさん褒めてもらうくんちゃん。

くんちゃんがアルバムをめくっていると、そこに昨日の青年を見つけてお父さんと口にします。

お母さんもその写真を見て、それは去年亡くなったひいじいじだと教えてくれます。

ようやく真実を知り、ありがとう、ひいじいじとくんちゃんは微笑みます。

写真の青年も微笑み返したようにくんちゃんには見えました。

家出と迷子

みんなで楽しいキャンプに行くことになった大田家。

ところが、くんちゃんは大好きな黄色いズボンが履きたいのに、洗濯中で今日も不満を口にします。

しかし、お母さんは昨日から頭痛が続き、ミライちゃんはハイハイを始めたので、とてもくんちゃんに構っている余裕などありません。

ついにくんちゃんは家出すると言って空の浴槽に隠れますが、もちろん家出なんて嘘で、本当は探しに来て欲しいのです。

ところが誰も探しに来ないので、いなくなったと大声でアピールし、再び待ちます。

しかし、それでも誰も来ないので、リビングに探しにいくくんちゃん。

すると、家の中は誰もいないかのように静まりかえり、くんちゃんは置いていかれたのだと思い、本当に家出することを決意。

リュックに紙パックのオレンジジュースとバナナを詰めると、スニーカーを履いて中庭への階段をおります。

すると、良くないなーと聞き慣れない声がして、くんちゃんがそちらを向くと、立っている場所がいつの間にか無人駅のホームに変わっていました。

声はホームの待ち合い室からして、ベンチに男子高校生が座っていました。

彼はズボンよりもいい思い出だろ、分かったらごめんなさいしてこいと諭しますが、くんちゃんは絶対に曲げないとその言葉を受け入れません。

それは男子高校生も同じで、二人は意地を張り合い、話し合おうは平行線を辿ります。

すると、ホームに電車がやって来て、ドアが開きますが行き先は見えません。

男子高校生は乗るな!と鋭い声を上げますが、くんちゃんは反発心でつい電車に乗り込みます。

電車はそのままどこかに向けて走り出します。

誰も乗っていない電車はくんちゃんを乗せて走り、やがて東京駅に到着します。

そこでくんちゃんは降りますが、そこはくんちゃんの知る東京駅とはまるで異なっていました。

無数の人が行き交う中、くんちゃんは帰りたいと思いますが、そもそも帰り方が分からず途方に暮れてしまいます。

構内には迷子を知らせるアナウンスが鳴り響き、子供を両親が迎えに来ますが、どれもくんちゃんのお父さんとお母さんではありません。

今頃、心配しているだろうか?

途方に暮れる中、ふと見上げて電子掲示板を見ると、そこに“Lost&Found”の文字を見つけます。

ミライちゃんのおにいちゃん

くんちゃんは電子掲示板に従い、遺失物預り所を訪れます。

そこにはたくさんの子どもが並んでいて、くんちゃんも並んでいると声を掛けられます。

そこで迷子になったことを伝えると、呼び出しに必要な質問をいくつかされます。

しかし、くんちゃんはなぜかお父さんの名前もお母さんの名前も思い出せず、それでは呼び出しができないといいます。

そして、もしも誰も迎えに来なかった場合、その子たちは特別な新幹線に乗ってひとりぼっちの国に行かないといけません。

そこに見たこともない黒い新幹線がやって来ます。

新幹線は生体部品とも呼ぶべきパーツに覆われ、不気味で乗りたいとも思いません。

くんちゃんは乗車を拒否しますが、磁石のような見えない力で引っ張られ、ついには負けて車内に引っ張られてしまいます。

座席にはガイコツが座っていて、くんちゃんは悲鳴を上げて外に出ますが、またしても見えない力に引っ張られます。

くんちゃんは何とか踏ん張ると、車外に転がり出て、嫌だと地団駄を踏みます。

すると、天井から遺失物係の声が響き、自分を自分で証明する必要があるといいます。

くんちゃんが何かを口にする度に、錆びた電車たちがお母さんって誰?お父さんって誰?と問い掛けます。

そして、ミライちゃんのことを聞かれますが、くんちゃんはうまく答えることができません。

すると、あうーと声が聞こえ、見ると黒い新幹線のずっと先にミライちゃんがいて、何かを探すようにキョロキョロしています。

目の前には、黒い新幹線のドアがある。

くんちゃんは止めに走りますが、転んで擦りむいてしまいます。

それでも立ち上がって走りますが、ミライちゃんは気がついてくれません。

乗車、デキマスとアナウンスが鳴り響く中、ミライちゃんが乗車してしまいますが、くんちゃんも後を追ってミライちゃんを捕まえると、二人でホームに転がります。

その時、くんちゃんはミライちゃんと初めて逢った時、お母さんに頼まれたことを思い出します。

“何かあったら、守ってあげてね”

その意味がようやく分かりました。

その途端、胸の中に今まで感じたことのない気持ちが込み上げ、くんちゃんは叫びます。

『くんちゃんは、ミライちゃんのおにいちゃんっ!!』

その時、ピンポーンと正解を示すような音が鳴り、ミライちゃんのことをくんちゃんが呼んでいるというアナウンスが流れ、いつの間にかミライちゃんはいなくなっていました。

代わりに見つけたと声がして、くんちゃんの見覚えのある赤いあざのある手が捕まえます。

未来のミライちゃんでした。

彼女はくんちゃんのことを探していたようで、いくよっというと空中を滑るように進み、東京の昊に向かって上昇していきます。

『今』が繋がる

上昇したかと思いきや、今度は落下し始める二人。

向かう先には、中庭にある白樫の木があります。

ミライちゃんは、それを我が家の歴史の索引だといいます。

そこには家の現在と過去と未来の全てがあり、その中からくんちゃんのいる時間を見つけないといけません。

二人は白樫の木に突っ込みます。

通り抜けると、そこは巨大な球体の内側で、円環状の系統樹が幾何学的に張り巡らされています。

分岐を繰り返す枝の先には記号が刻まれた葉がたくさんあり、二人はその中の一つに飛び込みます。

そこには夕陽を浴びた小学校の木造校舎があって、一人で自転車にまたがる男の子がいました。

ミライちゃんは、その男の子がお父さんだといいます。

お父さんは体が弱くて、小学生になっても自転車に乗れず、泣きながら練習しているのです。

二人は大声でお父さんを応援すると、今度は別の葉に移動します。

そこには王子のような身なりの少年と愛しそうに少年の肩を抱く女性がいます。

なんと少年はゆっこで、もうすぐお母さん犬と別れ、うちに来るのだといいます。

気が付くとゆっこは犬の姿に戻っていて、くんちゃんはゆっこの名前を叫びます。

するとまたしても別の葉に飛び込みます。

そこには血を流したツバメの雛を手のひらに乗せ、泣く幼いお母さんがいました。

手に持っているのは、野良猫にいたずらされたツバメの雛。

お母さんはこれがきっかけで好きだった猫が苦手になり、結果としてゆっこを飼うことにしたのです。

またしても別の葉に飛び込み、今度は青年のひいじいじが海に浮かんでいました。

乗っていた戦艦は破壊され、ひいじいじの下半身は負傷して血が流れています。

瀕死の状態でしたが、それでも青年は諦めず、腕の力だけで残骸と死体だらけの海を渡ります。

またしても別の葉に飛び込みます。

そこには、幼いお母さんに連れられて来た池田醫院がありました。

門の前には男性と女性が立っていて、男性はさっきの青年、つまりひいじいじです。

二人は何か話し、道の先にある白樫の木をゴールにかけっこをするようでした。

合図と共に二人は走り出しますが、あの爆撃で足を痛めたひいじいじは大きく遅れをとります。

すると女性は途中で立ち止まり、ひいじいじが追い抜くのを待って走り出します。

実はひいじいじが結婚を申し込み、女性はかけっこに勝ったらいいと言っていたのです。

ひいじいじが必死に泳いで生き残ったから、ひいばあばがわざとゆっくり走ったからくんちゃんやミライちゃんに繋がったのです。

ほんの些細なことが積み重なって『今』があるのです。

そして景色は変わり、そこはくんちゃんの家でした。

しかし、周りの風景は変わり、中庭の木が少し大きくなっていました。

木の前には、無人駅で話し掛けてきた男子高校生がいて、その背中にミライちゃんが話しかけます。

男子高校生の反応は無愛想ですが、決して仲が悪いという風ではありません。

男の子が出掛けると、ミライちゃんはくんちゃんを見ます。

彼女にとってここが今であり、あの男子高校生は未来のくんちゃんなのです。

ミライちゃんはひとりで帰れるよねと別れを告げ、くんちゃんは悲しくなりますが、ミライちゃんは笑います。

だって、これからうんざりするほど一緒にいるのですから。

その瞬間、くんちゃんは一気に飛翔し、手を振るミライちゃんが見えなくなります。

気が付くと全ての枝が集まる場所に戻っていて、くんちゃんは『今』に向かって飛び込みます。

目の前が光で見えなくなり、ようやく見えるようになっていました。なるとそこは洗濯機の前で、乾いた黄色いズボンが足下に落ちます。

あれだけ履きたかったズボンですが、今はそうではありません。

くんちゃんは一度ずり下げた紺色のズボンを履き直し、辺りを満足げに見渡します。

やっと日常に戻ってきたのです。

家族は予定通り、キャンプに向かうために準備をします。

くんちゃんが階段を下りると、子供部屋にいたミライちゃんがハイハイで近づいてきます。

くんちゃんはリュックに入れてあったバナナを取り出すと、皮を剥いて半分にすると、片方をミライちゃんにあげます。

おいしそうにバナナを食べるミライちゃんの傍ら、くんちゃんは中庭の白樫の木を見ます。

さっきまで見た過去や未来を思い出し、そしてさらに先の未来を想像します。

そこにお父さんとお母さんの声が聞こえ、くんちゃんが返事をしようとすると、先にミライちゃんが元気よく返事をし、二人はじっと見つめ合います。

くんちゃんがとびきりの笑顔を見せると、ミライちゃんも負けじとすごい笑顔を見せます。

よく見ると下の歯が二本だけ生えていて、それだけでくんちゃんは清々しい気持ちになり、お父さんとお母さんに向かっては~い!と元気に返事をするのでした。

考察~未来のミライはどうして来たの?

現実ではないファンタジーな展開の中に、しっかりと大切なメッセージが込められた良いストーリーだったのですが、ここで疑問が一つ。

どうして中学生の未来のミライちゃんは、くんちゃんの元に現れたのでしょうか?

それについて原作では言及されていないので正解は誰にも分からないかもしれませんが、自分なりに考察したいと思います。

と、その前に。

まずは赤ん坊のミライちゃんはなぜ遺失物預り所に現れ、黒い新幹線の乗車資格を得たのか。

そのことについて考えてみたいと思います。

作中で、ミライちゃんはしきりに何かを見つめている描写がありますが、それはおそらく遺失物預り所、もしくは黒い新幹線を見ていたのだと思います。

それらしきことは、黒い新幹線のところに赤ん坊のミライちゃんが現れた際、くんちゃんが言及しています。

そもそもあそこは両親や家族の愛情を忘れ、自分という存在を見失った子どもたちが集まる場所ですが、描写の限りでは幼いなりに自我が芽生え子どもばかりで、自我が芽生えたかすら怪しいミライちゃんが自分を見失う、というのはちょっと考えづらいです。

すると、原因はミライちゃんではなく、くんちゃんにあるのではないかと思いました。

くんちゃんは両親の愛情をミライちゃんに奪われ、頑なに自分がお兄ちゃんだと認めませんでした。

一方、ミライちゃんに自分がくんちゃんの妹だという認識など持てるはずがないので、くんちゃんの認識があって初めて妹として存在することができます。

だからくんちゃんが自分の存在を見失うと同時に、ミライちゃんも自分の存在を見失ってしまったのですね。

そして、ここからが本題の未来のミライちゃんが現れた理由。

確定が出来ないので、可能性をいくつか挙げたいと思います。

まずは中学生になり、好きな人が出来たとします。

そこでお雛様を出しっぱなしにすると婚期が遅れることを知り、それは嫌だと白樫の木の前で思ったのではないでしょうか。

結果、片付けるのを遅れてしまった年、つまりミライちゃんが生まれた年に現れ、目的を果たしたのではないでしょうか。

それ以後も、両親からあの年は大変だったと聞かされ、節目ごとに現れ、くんちゃんに赤ん坊の自分と仲良くするよう働きかけたのかもしれません。

もしくは高校生になったくんちゃんと会話する中で、未来からやって来た自分たちと会ったことを思い出し、今の自分たちが存在できるよう、幼いくんちゃんに働きかけたのかもしれません。

これなら高校生のくんちゃんが幼いくんちゃんの前に現れたことにも一応納得いきます。

僕が考える限りでは、こんな感じでしょうか。

映画を見ると新たな見解が出てくるかもしれないので、また何か分かれば追記したいと思います。

おわりに

子ども目線から考えることで、新たな家族の大切さが分かる、誰にでもおすすめできる作品だと思います。

細田監督の作品には大切なメッセージと、それを抵抗なく受け入れさせる物語の力があると思うので、この機会に本書以外にも挑戦してみてはいかがでしょうか?

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