『違国日記 6巻』あらすじとネタバレ感想!
叔母と姪。年の差ぐらし、1年。「朝、なりたいものになりなさい」と言いながらも、実里は娘を自由にさせない母だった。そんな母が亡くなり、世界が広がって1年。朝は、軽音部の冬公演に選ばれた同級生を羨んで、自分も歌詞なら、と書いてみた。非凡な何かを見つけてくれるかも、と。しかし、彼女が初めてのポエムを無邪気に見せたのは、小説家・高代槙生なのであった………。「なりたい自分」探りは子犬の突進のごとく。若木がさえずる第6巻!
Amazon商品ページより
5巻でだんだんと問題の本質が見えてきましたが、6巻ではさらに心の奥深いところまで描かれます。
前の話はこちら。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
あらすじ
page.26
10日ぶりに学校に登校した朝。
軽音部では、冬公演の準備をしていました。
朝たちのバンドが出演するには、オリジナル曲を作って優遇措置を受けるしかありません。
そこで各メンバーで詞を書いてくることになり、朝は書いた詞を慎生に見てもらいます。
高評価を得られることを期待するも、慎生はあまりの若々しさに顔を真っ赤にしてしまいます。
慎生はアドバイスをするも、それは朝にとって違う国の言葉のようで、全く通じません。
慎生だけでなく、学校の先生、えみり、生前の母親の言葉でさえも朝には分からない言葉なのでした。
page.26.5
まだ朝が幼い時の話。
慎生はいつもの友人と四人で集まり、新年会をしていました。
何気ない会話が飛び交い、たまにドキリとする話が差し込まれる、自由な会。
箸休めのような話ですが、自然体だからこそポロリと出てくる本音が読んでいて面白かったです。
page.27
年末頃。
別々の日で笠町、小説家仲間の樹乃イツキ、えみりが来客として現れ、その時のやりとりが入れ替わりながら描かれる、という不思議な構成をしています。
慎生はスランプに陥っていましたが、そんな日々を乗り越え、ついに小説を完成させるのでした。
page.28
朝はようやく周囲に怒ることに飽き、なりたい自分になるために少しずつ変わり始めます。
一方、朝の両親が亡くなり、朝と慎生が共同生活を始めてから一年が経ち、この機会に朝のしたいことをしようと慎生は提案します。
朝は考え、一周忌に何かをするのではなく、両親の誕生日が数日違いだったため、その間で祝いたいと提案。
慎生もその案に賛成し、朝も笑顔になるのでした。
page.29
えみりの視点から描かれる、彼女の日常。
普段は見えない彼女の内面が描かれ、思ってもみなかったことを考えていたりして、驚きました。
放課後、えみりは塾に行き、帰りに他校の女子生徒とマックに行きます。
ここで朝には言えない、本音が明かされます。
また、二人が単なる友人以上の関係にある、もしくはなりたいことが描かれ、今後も度々描かれます。
その後、朝の視点に移り、えみりのことを理解しきれているわけではないこと、慎生はえみりの奥深い部分に理解があることが分かります。
page.30
バレンタイン。
えみりはバレンタインデーに例の女の子とどこかに行く約束をして、にやけるのを必死で我慢しています。
一方、朝はすぐ影響されるせいか恋をしたいと口々に言いますが、恋を必要としない人もいると慎生はいいます。
もちろんその意味は朝には伝わりませんが、朝に考えさせるためにあえてそれ以上は言いません。
一年があっという間にすぎ、朝はもうすぐ高校二年生になろうとしていました。
感想
朝のためを思った言葉も、彼女にとってはどこか違う国の言葉である。
そのことが浮き彫りになった巻で、自分もいつの間にか大人側になってしまったことを痛感させられました。
やばい、うざい。
一見、語彙力が低いだけのように聞こえますが、この言葉には本当にたくさんの感情が隠されていて、若さゆえの無知で、真剣でまっすぐさを感じることが出来ました。
朝の抱える問題は一応進展したものの、彼女の周囲のことも色々と描かれ始め、どこまで風呂敷が広がるのか、とにかく目が離せませんでした。
これまでの巻は助走で、ようやくトップスピードで走り出した。
それくらい今までの巻よりも圧倒的に面白かったです。
おわりに
ここにきて面白さがさらに一段階上になって正直、驚きました。
だんだんと『違国日記』というタイトルの意味にふさわしい内容になってきましたので、本当に面白いのはここからだと思っています。
時間のあるうちに一度読み返し、次の巻を待ちたいと思います。
次の話はこちら。