『夏目友人帳 23巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
三隅高校の氷室先輩に「テンジョウさん」と呼ばれる絵の言い伝えを聞いた夏目達。その絵に興味津々な西村・北本・田沼と共に、捜索隊を結成し手分けして探す事に。だが氷室先輩に「絵を見つけてしまっても、見ない方がいい」と言われ…?
Amazon内容紹介より
2018年9月刊。
劇場版も控え、まだまだ話題の本書。
今回は妖怪の出ない話があり、友達との探検のような気分を味わうことが出来ます。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
あらすじ
第九十話
三隅高校にて、教師から資料室の鍵を受けるメガネをかけた男子生徒。
彼は郷土研究で、この学校に伝わる七不思議や言い伝えについて調べているようです。
場面は変わり、甘夏茶屋で団子の味をあずきかみたらしで悩む西村。
そこにニャンコ先生が現れ、西村はデブと言いかけ、ダイナマイトボディと言い直し、団子を買うとニャンコ先生を肩に乗せて行こうとします。
すると、声を掛けられます。
さっきの郷土研究をしている三隅高校の男子生徒です。
彼は西村が世分高校の生徒だと分かった上で声を掛けてきたようです。
場面は変わり、病院。
西村が病室に入ると、そこには入院中の北本とお見舞いに来た夏目、田沼がいて、北本は大声を出すなと西村を注意します。
謝り、北本に手土産の団子を渡す西村。
北本は階段から足を滑らせて軽い脳震盪なだけで顔色は良いですが、念のために一日入院することになりました。
心配する夏目の方が顔色が悪く、それでもホッと一安心です。
西村の持ってきた団子を食べていると、西村はさっき会った男子生徒について話します。
彼は三隅高校の三年生で、郷土研究部の氷室と名乗りました。
この辺りは二葉、三隅、世分にそれぞれ高校があって、『三高校』と呼ばれていました。
しかし、だいぶ前に二葉高校は廃校になり、三隅高校もそのうちに廃校の予定で、氷室は卒業記念に三隅と二葉の歴史を調べていました。
そして調査を進めるうちに、共通の言い伝えがあることに気が付き、世分にもあるのではと西村に声を掛けたのです。
その言い伝えとは、『テンジョウさん』という絵がどちらの学校にも飾られていて、氷室は世分にもあるのではと考えています。
これに対して面白そうだと北本がいい、四人でテンジョウさん捜索隊を結成。
しかし、誰も聞いたことがなく、次回までに聞いてくるということで今日は解散。
帰り際、夏目は誰かの視線を感じますが、それが人なのか妖なのか判断がつきませんでした。
家に帰ってからニャンコ先生に聞くと、田沼が平気なら人か小物だろうといいます。
またテンジョウさんについて、ニャンコ先生は知りませんでした。
場面は変わり、夜の病院で自販機で飲み物を買う北本。
ふと何かの視線を感じます。
翌日、人に聞いてみましたが誰もテンジョウさんを知らず、また西村はテンジョウさんがどんな絵なのか聞きそびれていました。
しかし、その時の氷室は真剣で少しでも力になりたいと思っていて、三人もそれに同意。
北本と西村は先生や先輩に聞き、夏目と田沼は物置などをのぞいてみることに。
しかし、今は新校舎で、少し前までは妖が住むほど古い旧校舎でしたが、今は彼らも去り取り壊されてしまっています。
それでも念のために旧校舎跡を見ることに。
すると、ニャンコ先生も合流し、一緒に向かうと先に氷室がいました。
二人は西村の友人であることを説明し、話を聞きます。
氷室は顧問の先生も転勤し、今や一人で郷土研究部として活動しているのだといいます。
今日はもうバスの時間だから、次回は取材許可をとって改めて来るという氷室。
田沼は別れる前にテンジョウさんがどんな絵かたずねます。
それに対して氷室はいいます。
テンジョウさんらしい絵を見つけたら、あまりその絵を見ないほうがいいと。
一方、北本たちの収穫はなし。
しかし、天井から何か音が聞こえ、ここ最近ネズミでも入り込んだのか音がするのだといいます。
合流してお互いの報告をすると、突然北本が草むらに隠れ、病院で誰かに見られていたと告白。
その時に見たおじいさんが今もいたのだといいます。
四人は相談の末、おじいさんの後を追いかけることに。
着いたのは立派なお屋敷でした。
そんな知り合いはいないと帰ろうとしますが、屋敷の中からおじいさんが現れ、中に入りませんかと聞いてきますが、西村が適当な理由をつけてその場を後にします。
第九十一話
逃げ出した後、何か話したそうだったと思う夏目。
しかし、みんなにも見えたということは妖怪ではありません。
せめてテンジョウさんの絵が妖怪に関係しているのか。
それが分かれば北本と西村を遠ざけるかどうか決められるのにと悩みます。
翌日、四人は話し、テンジョウさんとは『天井さん』なのではと予想しますが、その理由は分かりません。
一方、夏目はみんなと一緒にこうして調べられるのが楽しいと思う一方で、本当に楽しんでいいのかと自問自答しています。
放課後、四人で甘夏茶屋で団子を食べていると、昨日のおじいさんがまたいました。
彼は病院で夏目たちがテンジョウさんの話をしているのを聞いて懐かしくて声を掛けたのだといい、詳しく話を聞くことに。
彼は世分出身で、彼もまた友人と探検隊を結成してテンジョウさんの絵を探しました。
そして、それは来客用の階段に飾ってありました。
その後、どこかの古寺におさめられたようで、おじいさんはどんな絵が覚えていないが、楽しかったといいます。
最後に、世分の絵には『ハラ』が、三隅には『アシ』、二葉には『アタマ』が描かれているという噂を口にしておじいさんは行ってしまいます。
その声は夏目と田沼しか聞いておらず、解散後、テンジョウさんを三等分したのではないかという話になり、一気に妖怪の気配がします。
もしかしたら田沼の家にあるかもしれないと、翌日の朝、二人だけで集まります。
田沼の父親が廃寺の収品目録を探してくれ、テンジョウさんの『ハラ』が西側の廃寺の倉にあるといいます。
二人が鍵を開けて探すと、木箱に巻物状に収められたテンジョウさんを見つけます。
どうしようかと考えると、偶然西村に会って事情を聞いた氷室が現れ、見つけたことを報告。
二人に目をつむらせて一人で中を確認します。
するとそこに団子を買ってきた北本と西村が現れ、夏目は二人が絵を見ないようかばいます。
しかしそれは杞憂に終わり、氷室が見せてくれた絵には何も描かれていませんでした。
正確には、白紙になったのです。
氷室が話してくれたテンジョウさんのいわれはこうです。
テンジョウさんとは、大昔に旅の高僧が紙に封じた悪い妖怪で、頭・腹、足に分けてもまだ力が強く、破ることも燃やすこともできませんでした。
バラバラに遠くの寺におさめても気が付けば一つの場所に集まっていて、気味の悪いものとしてこの土地に伝わっていました。
それがいつしか三高校に飾られるようになりますが、それは古くから伝わるお祓いの方法でした。
ギリギリの距離に離し、若い気や学びの心に長年さらされることで少しずつ浄化され、消えていったのだといいます。
氷室は転勤する顧問の先生に、三隅高校には真っ白なテンジョウさんの絵があることを教えてもらい、残りの二枚も探してほしいと依頼されていました。
彼は迷信だと思いつつも、もし浄化が途中で途切れて大きな災いになることを懸念し、周囲に笑われてもいいからと調べていたのです。
二葉はとっくに廃校になっているので現物は見つけられませんでしたが、卒業生のおばあさんからテンジョウさんという真っ白な絵があったことを聞き、世分のものも見つけて、これで浄化が完了したことを見届けることができました。
氷室との別れ際、テンジョウさんの名前の由来について。
テンジョウさんはその名前の通り、天井裏に住む大妖怪でした。
だから今でも子分が時々、天井裏でテンジョウさんを探しているのだといいます。
西村は学校で天井から聞こえた音がそうかと興奮しますが、氷室は大体はもぐりこんだ小動物を怖がったのだろうとそれを否定。
夏目もこれを否定せず、こうしてテンジョウさん探しは終わるのでした。
第九十二話
夏目が帰宅すると、塔子は電話中で、夏目の友人だと言って代わります。
相手は名取でした。
後日、ニャンコ先生を連れて待ち合わせの公園に向かうと、相変わらず名取は目立っているのですぐに見つかります。
二人は列車を乗り継ぎ、枇杷の大木のある旧依島邸に向かいます。
依島はかつて祓い屋をしていましたが今はやめ、さらに山奥に閉じこもっています。
交流のある名取は数冊の本をとってきてほしいと依頼を受け、代わりに好きなだけ枇杷をとっていいと言い、本当は夏目を連れてくる予定ではありませんでした。
ところが、夏目の近況を知ろうと思って電話したところ、塔子が出て、つい枇杷の話をしてしまい夏目も連れていってほしいとお願いされてしまったのです。
名取は屋敷の中に入り、夏目は枇杷を取りに向かいます。
すると枇杷の木から人影が現れ、それは柊でした。
彼女は上の方に甘そうなのがあると教えてくれ、ニャンコ先生と二人で取りに行き、夏目は入口の塀に昇って辺りを見渡します。
すると隣の家で旗のような真新しい布が風ではためくのが見せ、次の瞬間、突然手が現れてはさみで布と木を繋ぐ糸を切ってしまいます。
布は風で流れて夏目の顔を覆い、夏目は塀から落ちてしまいます。
しかし、名取がいち早く気が付き、彼の下についてなんとか事なきを得ます。
名取に事情を話し、隣の家に布を返しに行きますが、ニャンコ先生は嫌な気配がするが空っぽな感じもすると言います。
夏目は手が現れた場所に向かい、名取は玄関へ、さらに瓜姫と笹後を呼んで屋敷の周囲を調べさせます。
玄関には鍵がつけっぱなしで、ジャリの上にはたくさんの新しい足跡があります。
名取が玄関を開けると、出迎えたのはしゃべる紙で出来た人形でした。
一方、夏目が目的の場所に着くと、屋敷の窓が開き、中から的場が顔を出します。
そこに屋敷の中で呪術が行われていることに気が付いた名取も合流し、三人は中で話します。
ここは的場一門である祓い屋大家十一家の一つである三春家の屋敷で、ずいぶん前に血が絶え、滅んでいました。
ところが、この屋敷にはやっかいな三柱様(みはしらさま)というしきたりがあるのだといいます。
三春家には守り神のような妖が三体いて、数十年に一度、そのうちの一体がやってくるのでお迎えをしなければなりません。
三体それぞれ気性も違って、訪れる妖によっては良いこともあれば災いになることもあります。
面倒だけれど、やらずに的場一門に災いが降りかかるのは阻止したい。
だから一応形式的にお迎えの代行をしています。
三体の妖が交代で合計九回来ることになっていて、今回が八回目。
もしかしたら、彼らは三春家の血が途絶えたことに気が付いていないのかもしれません。
先ほど名取が玄関を開けてしまったことで準備はやり直しになってしまい、お詫びも兼ねて二人は協力することに。
二人は柱置きの間に連れていかれます。
前回のお迎えは四十年前で、一番穏やかな白爪君(しろつめのきみ)がきて、代行は無事に成功。
そして四十年の役目を終えて昨日出ていき、今日、残りの二体のどちらかがやって来ます。
二番目に穏やかだと言われる三十年護りの棒々頭巾であれば、まず迎え入れることが出来ます。
しかし、一番気性の荒い八年護り、赤贄が来るとお迎えも難しく、失敗すると災いを受ける可能性が高いと言われています。
祓えないこともないが、それなりの損害も出てしまうため、そうならないよう滞りなくお迎えをしたいと的場は思っています。
そこで名取は玄関の紙人形へ向かい、夏目は的場についていきます。
名取は夏目を心配しますが、夏目には柊がついていきます。
名取は友人帳のことを的場に知られないよう注意し、別れます。
しかし、夏目に手伝ってもらいたいことは特になく、ただ見ていてもらいたいのだといいます。
一方、夏目は先ほどの布のことを言うと、あれも儀式の準備の一つであり、妨害者の存在を明かします。
その正体を考えていると、夏目は何かの気配を感じて振り返ります。
そこにあったのは、いくつも並んで壁にかけられたお面でした。
気のせいかと覗き込む夏目ですが、突然一つのお面に本物の目が浮かび、的場が夏目を隠します。
お面はのぞき穴になっていて、どうやら隣の部屋からこちらを覗いていたようです。
的場は式を追わせ、気配が気になった柊も後に続きます。
そろそろお迎えの時間ということで、見張りを増やしますが、妨害者の目的は分かりません。
敵が多いという的場に、祓い屋をやめたいと思ったことはないのかと夏目はたずねますが、ただの一度もないと的場は答え、夏目はホッとし、名取はどうなのだろうと考えます。
人間の息を吹きかけることは不敬ということで迎え用の面を渡されます。
お迎えについて、誰が来るのかは柱置きの間に入るまで分かりません。
一方、紙人形を仕掛け直した名取は的場と合流し、夏目を便利に使うのはやめろと言いますが、引っ張りまわしているのはそっちだと的場は反論し、それに決めるのは夏目自身だといいます。
そろそろ時間になりますが、ふと洋間から音が聞こえ、二人は様子を見に行きます。
中を見ると、風車が音をたてていて、次の瞬間、二人は何者かによって部屋の中に押され、ドアを閉められて閉じ込められてしまいます。
一方、的場不在の状態で妖怪がやって来てしまいます。
第九十三話
部下が的場を捜し回る一方、夏目とニャンコ先生は部屋の隙間からのぞくまりを持った手を見つけます。
その先には、一つ目の妖の姿があります。
場面は変わり、閉じ込められた名取と的場。
実力行使で出ようとしますが、的場が椅子を窓に投げつけても割れません。
何か仕掛けがあるのかと周囲を調べると、壁に掛けられたお面を見つけます。
的場はのぞき込みますが、突然左目から刃物が飛び出し、名取で間一髪で的場を助けます。
刃は古く、妖用の符が貼ってあることから、三春家の元々の仕掛けだと思われます。
この部屋に関しても、妨害者が二人を閉じ込めたことで侵入者用の術罠が発動してしまったようで、外の式たちを呼ぶことも出来ません。
しかし、術なら解いてしまえばいいと的場は余裕を崩しません。
また的場は名取に言及し、もっと使える妖と契約すればいい、今のままではいつまでも上に行けないと指摘します。
名取もそれを認めますが、それでも自分なりに探している姿があり、それを目指しているのだといいます。
ここで、的場は三春家について話します。
独自の主義を持ち、高潔で信望厚き名家でした。
ところが甘い行動が衰退を招き、後期ではえげつない罠を張ったり容赦のない術に手を出すようになります。
そして正体の分からない化物を三柱様として祀り、その強大な力を使いこなせずに、悪名高い的場一門にまで入ったにもかかわらず一族は絶えたのです。
一方で、的場は一門だった三春を守れなかった当時の的場のことも良く思っていませんでした。
この話を聞いて名取は何かを聞こうとしますが、気が遠くなり咳き込みます。
息苦しくないかと聞き、的場もようやく事態の深刻さに気が付きます。
場面は変わり、的場は見つからず、彼なしで迎えの言葉を読み始めます。
さらに場面は変わり、夏目がたずねると、目の前の妖が妨害者だといいます。
相手は夏目が祓い屋ではないと分かると逃げ出し、夏目は後を追いかけますが、途中で廊下の底が抜け、夏目とニャンコ先生は下に落ちてしまいます。
場面は変わり、空気が薄くなる仕掛けがされていることに気が付いた名取と的場。
焦る名取ですが、的場は術自体は大したものではないと分析。呪いの元を突き止めようと取り出した何かを燃やし、煙を部屋に放ちます。
煙が漂う中、出られることを残念がる的場。
夏目が全てうまく始末してくれたかもしれないのにと。
そして、夏目はいつまで普通のふりをしていくのでしょうと的場は涼しい顔でいい、名取は何も言えません。
さらに的場は、祓い屋をやめたいと思ったことはないですかと、さっき夏目にされた質問をして、これにも名取は答えません。
やがて煙が術部屋の根を見つけ、的場は名取に『紙落としの解術』はできるかと聞き、それで解くことができるといいます。
名取にだけかかっている妙な術も。
よく見ると壁には侵入者への呪詛が書かれていて、古典的で単純な呪いばかりですが、隙のある者はかかってしまうようで、名取もそれにかかっているようです。
無理なら自分が解くと的場は言いますが、名取は……
場面は変わり、目を覚ます夏目。
そこは物置部屋のようなところで、夏目の下には妨害者である妖がいました。彼も一緒に落ちたようです。
妖は妨害するために戻ろうとしますが、夏目はなんとか引き留めます。
理由を聞くと、妖は理由を話してくれるといいます。
場面は変わり、紙落としの解術を名取が唱えると、壁の至る所に紙が貼りつき、やがて本物の出口が出現。
的場はお見事といい、二人は部屋を脱出。
迎えの言葉に間に合い、途中で代わり、妖怪が玄関から入ってきます。
名取は夏目を捜しますがおらず、屋敷の中を捜します。
第九十四話
妖は夏目に、マサキヨを知っているかとたずねます。
政清とは三春の祓い屋のことです。
この妖はかつて古く大きな屋敷にある庭の小さな小屋に隠れ住んでいましたが、ある日、屋敷の蔵に大きな妖が住み着いてしまいます。
屋敷の人間は色々な祓い屋を呼びますが、誰も妖を祓えません。
そんなある日、政清が現れ、他の妖も含めて一掃してしまいます。
そしてこの妖も見つかってしまいますが、弱いものには興味がないと政清は見逃してくれ、妖はそのことに恩を感じ、返そうとしていました。
その日から妖は政清について回りますが、彼は一向に返事すらしません。
そんな政清ですが、一度だけ泣いていることがあり、なくなってしまえばいいのにと口にします。
妖は、それを彼の願いだと受け取ります。
この屋敷を壊そうと。
三柱様のせいでなかなかうまくいきませんでしたが、妖は気が付きます。
お迎えを邪魔すれば、三柱様が怒って屋敷を壊してくれると。
事情を聞いてなおも止める夏目に襲い掛かる妖ですが、柊が現れて妖を押さえつけます。
妖は柊を押しのけると落ちた穴から地上に向かい、夏目も柊に連れられて上に戻ります。
上では的場たちが三柱様の誰かを連れて柱置きの間に向かって歩いています。
その途中であの妖が現れますが、これを名取が防ぎ、妖は逃げ出します。
追い払ったがまた襲ってくるかもしれないと、二人は儀式が終わるまで柱置きの間の前で待機することに。
その間に的場たちは妖怪を柱置きの間に通します。
ここからの儀式について、中で鎮座した三柱様は周りが呪い(まじない)を読み上げると本来の姿に変化し、部屋に招いた者がその名を呼んで酌をする。
名を呼ばれた三柱様が酒を飲めば儀式は終了するということです。
呪いが読み上げられる間、さっきの妖は現れますが、名取が描いた陣によって前に進むことができません。
名取は政清や三春の人たちはもういないことを伝え、儀式が失敗しても恩返しにはならないことを説明します。
しかし、妖は話を聞かずに飛び込み、夏目がそれを受け止めます。
説得を続けると次第に理解し、妖は何もできないと涙を流し、夏目は強く彼を抱きしめます。
一方、柱置きの間では呪いが読み終わり、三柱様の一体である棒々頭巾が現れ、一同は胸を撫で下ろします。
棒々頭巾はどこだと暴れますが、的場が声を発すると静まり、無事に儀式は完了します。
ホッと一安心の夏目と名取。
夏目は殺気だった妖に抱き着いたことで体力を消耗し、気を失ってしまいます。
気を失っている間、夏目は妖の記憶を読み取り、目を覚ますと政清がかつて彼に言った言葉を掛けます。
お前は自由なのだ、どこへなりとも行くがいい、好きに生きるがいい、と。
そうして妖は消えます。
儀式は無事に終わり、今回はお互い様だとする名取と的場。
名取は何かを継ぎ背負っていくことについて、その真の重みは計り知れないが、今は重いものも一人でなければと考えるようになっていました。
的場の口元に驚きが浮かびます。
的場のもとに行く夏目。
的場は家人が滅んだにもかかわらず約束を守る三柱様を滑稽だといいますが、夏目は彼がどこか羨望していることに気が付きます。
的場が約束を破り続け、誰とも約束できないからかもしれません。
そして次回の儀式のことを心配しますが、しかしその頃には頭首も代わっているから自分が心配することでもないかと思い直します。
夏目は話を聞き終えると、ポケットに入っていて枇杷を手渡します。
的場は元気がないように見えますか?と笑い、それでも嬉しそうに枇杷をもらいます。
ここで的場の昔話。
学生の頃、名取と的場が気になって枇杷の木を眺めていると、依島がひとつずつくれます。
的場のはとても甘くておいしかったですが、名取のはハズレでした。
なんとなくだが、依島は名取のついでに自分にくれたのだと的場はいいます。
それなのに、自分が当たりを引いて、名取がハズレを引いてしまう。
ちっぽけなこともうまくまわりはしないのだと、彼は実感します。
撤収準備が完了し、夏目に別れを言う的場。
場面は変わり、枇杷をとる夏目、名取とその妖たち。
三春家が絶えたことについて、むしろ三柱様を招いたことで傾いたのではと名取は考えています。
大抵は、人は自分を正しく制御することができず、ニャンコ先生や友人帳を持つ夏目のような存在は稀だといいます。
ニャンコ先生は馬車馬のように使われていると怒りますが、夏目は的場の言っていたことを考えてしまいます。
すると心配になった名取はおみやげの枇杷を追加で渡し、夏目は元気がないように見えますか?と的場と同じ言葉を口にするのでした。
おわりに
夏目と名取、的場の微妙な関係、でも同じ言葉を使って保つ絶妙なバランスが嬉しくも寂しくもありました。
次の単行本が出るまで少し時間がかかりますが、それまでこの優しい世界に浸っていたいと思います。
次の話はこちら。